#2
「もともとお前にそのような戦い方をさせるつもりはない。お前の本当の価値はパイロキネシスによる大火力攻撃だからな。ここまでは戦争の基礎を教えただけのこと」
楓も肉体の訓練がないときには、イメージトレーニングをしていた。
「心の奥に炎のイメージを思い浮かべるんだ。火炎魔法を使うこともできる魔術師も存在するが数は少ない。さらにそれは聖霊との契約によって行われるもので、長い学習と訓練を要する。楓のパイロキネシスの威力はそれらと比べても段違いだ」
「わたしの力、そんなすごい威力なの」
「慣れない身でとっさに繰り出した炎があれだけの屋敷を吹き飛ばすほどなんだ、訓練すれば能力に限界はないんじゃないだろうか」
「自由に使えるようになるかな」
「俺たちがさずかった力は、魔法とは異なる体系の力のようだ。楓の炎も、誰かからもらったというよりもとよりお前の中にある力を引き出されているような気がする」
「あなたのもそうなの?」
「俺の能力か」
「教えてよ」
「教えない」
「なんで?」
「どんな能力を持っているかは切り札だ。敵に知られてはまずい。今こうして人目をしのんで訓練しているのも秘密を守るためだ。特異な能力と言うものは研究されれば弱点を見つけられる可能性もある。これは超能力だけの話では無い。格闘技だって初対面の相手と、戦ったことのある相手、戦わずとも戦っているのを見たことがある場合では同じ実力者相手でも勝率が変わってくるのだ」
「でも、ワイルドエルフや城の騎士の皆さんには、もう私の能力が知られているわよ」
「ギリギリまで知られない方がいいのは間違いない。だけど、そのうちお前の能力は衆目にさらされることになるだろう。敵の手が迫れば、お前の力を披露することで民衆や兵士たちの士気は格段に上がる。それにお前の能力は間合いの長い大パワー型だからな。進行してくる敵軍の真っ只中にお見舞いしてやれば効果抜群だ。お前の力は攻城破壊兵器にも適する」
「工場破壊兵器?」
「ちがう。扉の閉ざされた堅牢な城に穴を開ける大型の兵器だよ。よく知られたものでは大きな石をテコの原理で飛ばす機械とか映画で見たことがあるだろう、巨大なボウガンってわかるか? 戦車のような弓で据え置き式の大型弩砲、これをバリスタという」
「バリスタって喫茶店にいる人じゃ」
バリスタ(伊: barista)は、バールのカウンターに立ち、客からの注文を受けてエスプレッソをはじめとするコーヒーを淹れる職業、およびその職業についている人物をいう。(wikipediaより抜粋)
「そうだ、これからはお前のことを楓バリスタと呼ぼう」
「なんだかコーヒー淹れながら推理しそうな呼び名ね」