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第六十四話

ちょっと後半いやな感じになります。

カリカリカリカリ…



机の上をシャープペンが立てる音と、時計の針の音、そしてグラウンドで部活をしているサッカー部や野球部の練習している声が聞こえる。

教室の中はそんな感じで、ただひたすら目の前の問題を解いている三人の生徒に、それを監督している担当教官。今は本を読んでいるみたいだけど、随分と分厚そうなものだ。何を読んでいるのかまではわからないけれど、先生って今流行っている本とかは読まなそうだ。何と無く…イメージとしては。だけど。


テストとは全く関係の無いそんな事を頭の片隅で考えながら、問題を解いていく。予想通り、本試験の時とは解答が違う。というか、ほとんどが記述になっている…。おー!?

とは言え、先生にわざわざ教えてもらったのもあるし、みんなに直前詰め込みみたいな感じでSHRを利用して教えて貰った事は無駄にはなっていなかったようで、結構解答欄を埋める事が出来ている。しかも、あれだけ口をすっぱくして教え込まれた『享保、寛政、天保の改革』も書けてるよ!!私、凄い!!



一人むっふっふとニヤニヤしながら問題を解いていると、隣のクラスの子が終わったらしく、席を立って先生の所に答案用紙を持って行った。そのまま帰れるのかなと思ったら、なんとその場で採点するらしく、五分後ぐらいに「よし、合格」と言われたその子は笑顔で教室を後にして帰って行った。その後しばらくしてもう一人の子も出来たらしく、やはりその子も「合格。帰っていいぞ」と言われて私に「頑張れよ、神崎」と言って何故かガッツポーズをされたので、へらっと笑って小さく返しておいた。


残ったのは勿論私だけで…。気まずいよね、気まずいよ。しかももう一時間近く経ってるし。あと三問。でも三問。それも説明記述の問題が残った。一番嫌いなのに、これ。

うんうんと頭を捻らせていると、放送がかかった。



『遠藤先生、遠藤先生、お電話が入っておりますので至急職員室まで。繰り返します。遠藤先生、お電話が入っております。至急職員室まで。』



放送が終わると、先生は本から顔を上げて私の方を見た。



「神崎、お前まだかかりそうか?」


「あ、あと三問なんですけど…。」


「三問か…終わったらそれ持って資料室まで来い。多分俺の電話も終わってるだろうから。いいか?」


「あ、はい。わかりました。」


「よし、じゃあ頑張れよ。」



そう言って先生は教室を出て行ったので、結局残ったのは私一人っていう事に。先生がいなくなったから、かえって緊張しないで気が楽になったな。そう思うと自然にシャーペンは動くもので、残り一問と言うところでガラッと教室の戸が開けられた。



「あれ、神崎一人か?」


「あ、はい。遠藤先生は電話がかかってきたらしくて、終わったら資料室まで持って来いって言われてます。」


「ふぅ~ん。生徒一人を残してカンニングするとか思わないのかなぁ、遠藤先生は。」



いきなり入って来たのは、持ち上がり組の日本史担当の谷野先生だった。正直私はこの先生が苦手だ。

と言うのも、怖いと言う潜在的なものもあるのだが、それ以上に言葉がキツイ。現に、今も。カンニングなんてしないのに、わざわざこういう風に生徒を貶すような事を言うばかりか、同じ教師だと言うのにも関わらず教師の悪口を平気で言う。その事を微塵も悪いと思っていないのは明らかで、逆に自分の悪口が聞こえるとすぐさま注意しに飛んでくる。クラスメイトはおろか、多分学年中、いや全校生徒に好かれてないと思う。

このカンニング発言にムカッとしたけど、何も聞いて無いようにそのまま問題を解くために視線を下ろした。この教室に何しに来たのかわからないけど、早く出て行ってくれないかな。谷野先生のつけてる整髪料なのかなんなのかわからないけど、すっごい匂いがキツイ。絶対つけすぎだと思う。パパやお兄ちゃん、高橋さんはこんなに匂いさせないから、もう鼻についてしょうがない。しかも締め切った教室だから充満するのも早い…!


うんざりしながら問題を解いていると、やけに匂いの根源が近くにあるように感じて顔を挙げてみると、すぐ目の前に先生が立っていた。そして覗きこむように私の答案用紙を見てきたので、思わず後ろに仰け反ってしまった。



「あ…あの…?」


「気にしないで続けて。神崎は記述問題が苦手なのかな?やけに鉛筆の進みが遅いようだけど。」


「え、いや、あの…」


「駄目だなー。ここは問題をちゃんと読むんだ。ほら、ここ。生類憐れみの令はー、」


「や、あの…っ!もう終わりました!私、これ持って資料室に行きますからっ!」



前にいたはずがいつの間にか隣に移動していた先生が、私の肩ごしに答案用紙に手を伸ばす。その弾みで、と言った感じに顔を手の平でなぞられた。


ざわっと鳥肌が立った。


ヤバイ。何だかわからないけど、私の中の危険信号が真っ赤かにサイレン鳴らして光ってる。何だろう、この嫌な感じ、この雰囲気。睨まれたカエル…ではないけれど、それぐらい背中に冷や汗ダラダラにかいている気がする。

私の焦った顔を見た谷野先生がニヤーッと笑って舌なめずりをしたのを見た瞬間、全身が総毛だったのがわかった。



普段鈍いとか、鈍感だとか、天然だとか言われているけど、パパ達にいつもいつも言われている事がある。



『お前みたいなぽやっとしたのが好みな変態もいるんだから、気を付けることには越した事ないぞ』



ヤバイ。

どうしよう、パパ。変態がここにいる…っ!!

ごめんなさいね、変態だしちゃって…。

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