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第六十三話

「違うぞ神崎!そこは日野富子だ!!」


「唯ちゃん、頑張ってね!!絶対あの子達見返してやろうね!!だから、ここは刀狩じゃないよ?太閤検地。似てるけど、全然似てないからね。」



…。


誰か…助けてくださーい!!


何が悲しくて、六時間目のSHRが私の勉強会になっちゃったんだよぅ!!しかも一対クラス全員って比率がおかしい!



あの波乱の昼休み。五時間目が始まるまでうちのクラスはおろか、隣のクラス、はたまた学年上がってまで大騒ぎになった。一応は授業が始まるっていうことで一旦は落ち着いたのだけれど、火はまだ燻っていたようで。六時間目のSHRの時間を担任に直談判したクラス委員長の一言で、私の再テスト対策と言う名のイジメ(善意の)が始まってかれこれ三十分…。

担任のおじいちゃん先生もニコニコと笑っているだけだし(点数が思わしくなかった私を救済するためなんだから、ま、仕方ないでしょう。頑張りなさい。と言われた)、たまに脱線して余計な話になるのだけれど、それでも内容はさっきの子達の事だった。


あの子達は熱狂的な会長ファンで、中学の頃から追いかけているらしい。かく言う龍前寺会長も持ち上がり組なのに、理事長特権なのかもしれないが、クラスそのものは中途組に入っている。

とは言え、ちゃんと入学試験は受けているようだし、それもほとんど満点だったというのだから筋金入りの秀才だ。

そんな会長を好きになる子達は必然的に多く、同学年で一番熱狂的なのが私のノートを破った子、吉田さん(仮)らしい。排除するのはお手の物で、学年が違ってもそれは構わないという情報が同じクラスの子達からもたらされた。


被害を受けたのは私一人だったはずなのに、それがこんなにもクラス全員の反感を買うとは正直思っていなかった。特に男子の勢いが思いのほか強すぎて、若干私は困惑している。救いを求めるように、隣に座っていた綾乃に助けを乞うた。



「綾乃…、私もう駄目…」


「頑張れ唯!!負けちゃ駄目だよ!!諦めたらそこで試合は終了なのよ!!」


「そうだ、林の言う通りだぞ!!安西先生の言葉を思い出せ、神崎!!」



熱い…熱すぎるよ、皆!!

私は全中に出るか出ないかの瀬戸際のミッチーなの!?



あの光景に遭遇しなかった綾乃と愛理ちゃんは、パンを買って帰って来たらクラスが騒然としているのに驚いて、さっそく皆から事のあらましを聞いた。

途端に怒ったのは綾乃だ。私のボロボロになったノートを見て憤慨した綾乃は、龍前寺会長の所に言いに行こうとした。それをなんとか押し留めて、ふと愛理ちゃんを見ると何とも言えないような顔で私を見ていた。



「唯ちゃん…再テスト大丈夫なの?ノートこんなになっちゃって…」


「うーん…テスト自体は無傷だったから問題自体はわかるんだけど、先生の事だし。問題は同じでも答えを変えてそうなんだよねー…」


「あー、うん。確かに。遠藤先生ってそういう感じの問題作成するよね。引っ掛けでは無いにしても、解答が選択じゃないのが多いもんね。」


「そうなのー。だから覚えられないぃぃ!!」


「…ねえ、じゃあさ…」



にっこりと笑った愛理ちゃんの顔が今までにないって位輝いた。その光景を私は忘れないと思う。

やけににやりと笑った皆。

背筋が凍った。


その結果。



「神崎ー!!負けるなー!!だからここは淀殿だぞ!!織田信長の姪っ子なんだぞ!」


「朝鮮出兵は二回だ。ちなみに、石田三成も行ってるんだぞ。」


「江戸の三大改革はね、大飢饉が起こったときに発布されてるのよ。」


「分化とかは大丈夫?遠藤先生、写真付きの問題出してるみたいだから覚えておこうか。」



ありがとう、皆…。あれ、前が滲んで見えないな。私ったら嬉しすぎて涙が出てきたよ。

口が大きく開くのは気のせいだよね。



「神崎ーー!!寝るなーー!!」


「はっ!ね…寝てない!!寝てないよ!!」






「じゃあこれから再テストを始める。机の上の物、出しているものは全部片付けろ。それと…」


「………」


「廊下にいるお前等!さっさと部活なり、帰るなりしろ!!」


「えーーーっ!」


「えーじゃない。これは再テストなんだから、お前等関係ないだろ。さっさと散れ!ほら、解散!!」



先生が蹴散らしたうちのクラスのみんな。応援してくれるのは嬉しいけど、さすがにやりすぎだよ。

あれから一時間。皆の猛しごきによってなんとか問題の内容を理解した私は、緊張しながら指定された教室にいた。しかもクラス全員に見守られるようにして…。

いい加減大丈夫だよと言っても、なかなか皆も承諾してくれなかったのだけれど、さすがに先生の一言で渋々ながらも部活に行ったり帰宅の途に着いたりしてくれた。まさに鶴の一声。感謝します、先生。


再テストを行うのは、赤点取った私と風邪で休んだ隣のクラスの女の子。それと、忌中だというので休んだ子の三人。とは言え、他の二人は余裕で点数を取っている子達なので、真に点数が末期なのは私だけ。これは真面目にやらなければ、今日SHRの時間まで使って教えてくれた皆に申し訳がたたない!!やけに気合を入れた私を、先生が不審そうな目で見ていたのに気付くことは無かった。


ごめんなさい、スラムダ○ク好きなんです。ミッチーが好きなんです。山王戦でボロボロ泣いたんです。


ちなみに。歴史の解答ですが、間違っていたら教えてください。手元に資料がないまま覚えていた記憶だけで書いてしまったので。

三成は朝鮮出兵に参加していた記憶があります。

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