表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/128

第29.5話…悠生

早乙女先生視点。

長い黒髪をサラサラと背中に流しながら去っていく、俺が好きな子を見送って、隣にいる男を見る。

ニヤニヤと人の悪そうな笑みを浮かべているその人は、俺の先輩に当たる先生で、恐ろしく顔が調っている。今はその顔に浮かぶソレに腹が立つが。



「愉しそうですね、遠藤先生。」


「いや?そんな事ないけど?」


「良いですよ、笑ってくれた方が楽なんですけど!」



そう俺が言うと、遠藤先生は「プリントよこせ」と俺が抱えていたプリントを半分自分の手へ移動させ、さっさと行ってしまおうとしていたので慌てて追いかけた。



「はぁー、やっぱ彼氏いるんですかねー、神崎ちゃん。あんな可愛いのにいないのはおかしいかぁ…。」


「いや、多分いないと思うぞ。」


「うっそ、マジですか!?その情報どこから!?遠藤先生教えて!」


「うるさいな。ここ学校なんだぞ、おおっぴらにそんなデカい声で話すなよ。目つけられたら教師辞めなきゃいけなくなってもいいのか、お前。」



全くその通りの言葉にぐうの音も出ず、再びため息を付いた。

プリントを職員室まで運び終えた俺は、ダメ元で遠藤先生を飲みに誘ってみようと思い、声をかけようとした。


だけどその時、あいにく、遠藤先生に家庭科の有紗先生が先に声をかけていた。何かを話しているようだが、遠くにいるので聞こえない。

しかし、あの二人は画になるなぁー。


有紗先生はこの学校のマドンナ的存在で、生徒からの人気は勿論、教師内でもかなり評判がいい。

モデルのようなスタイルと美人と言って間違いない顔をしているのも相まって、憧れている先生方もかなりいるらしい。

学生時代はミスキャンパスにもなったと他の先生が教えてくれた。


だけど、俺興味ないんだよねぇ。

なんて言うか、彼女から感じる違和感っていうのが妙に気になる。それに、俺は神崎ちゃん好きだし。

話が終わったらしい二人は、遠藤先生が職員室に残り、有紗先生は帰ったようなので、改めて遠藤先生に声をかけた。



「遠藤先生、今日暇ですか?飯でも食いに行きません?」


「別にいいけど。じゃあお前の奢りな。」


「ぐっ…。わかりました。居酒屋でいいですよね。」


「あぁ。」



そして、居酒屋に着くと早速ビールと簡単なツマミを頼んで、二人でささやかに乾杯した。



「じゃあ、お疲れ様でした。」


「あぁ、お疲れ。」



カチンとグラスを合わせ、ビールを半分くらいまで飲み干す。

枝豆を摘みながら、知りたかったことを単刀直入に聞いてみることにした。



「遠藤先生、何で神崎ちゃんに彼氏いないって断言したんですか?」



既にビールを飲み干した先生は、既に二杯目に入っている。



「お前、まだ言ってんのか?本当に好きなんだな、神崎の事。」


「勿論ですよ!!俺、はっきり言って一目惚れなんですよね、神崎ちゃん。でも、英語担当するようになって、いろいろ話すじゃないですかー。したら、超可愛いんですもん!!あぁ、マジ付き合いたい!!だけど、神崎ちゃん、天然なんですよね。」


「天然?」


「あれ?遠藤先生知りません?彼女、入学してから同学年から二、三年年に致るまで結構告白されてるみたいなんですけど、それ全部断ってるらしいですよ。しかも、告白を告白って取ってもらえなかったみたいで…。『またまた。何からかってるんですかー』って言われて、全員玉砕みたいですよ。まぁ、それが効をそうしたのか最近は告白されるのが少なくなったらしいですけどね。」


「へぇ…。それで誰とも付き合ってないわけか。でも、よくそれで皆引き下がったな。根性無くないか?」


「あぁ、まぁ確かに。でも生徒内で、生徒会が圧力かけてるっていう噂もありますけど。」


「生徒会?なんであいつらが?」


「生徒会長の龍前寺、狙ってるらしいです。」



龍前寺翔(りゅうぜんじかける)。うちの学校の生徒会長にして、現理事長の息子。

顔も勉強もスポーツもなんでも出来る、スーパー高校生。今は二年だが、聞くところによると入学した頃から生徒会長を務めているらしい。



「ねぇ遠藤先生、龍前寺って一年の時から会長してるんですよね?」


「そう。入学して、一ヶ月も経たないうちに生徒会長になったんだよ。最初の内は、理事長の孫だからだろと思ったけど、案外予想は外れたみたいだな。あいつはよくやってる。」


「カリスマ性ありますもんねぇ。」



そう言って、目の前にある焼酎を呑んだ。大分酔いが回っているが、まだまだ大丈夫だろう。

遠藤先生は、酒が強いらしく、全く顔が変わらない。それが少し羨ましい。



「だけど、龍前寺かー。高校生には勝てないかもなぁ。神崎ちゃんも年近い方がいいだろうし。」


「お前、いくつだっけ。二十四?」


「惜しい!二十三です。七歳差って結構デカい。」


「ふーん、いいんじゃないか。別に。お前、本気で神崎好きなんだろ?年の差って関係ないんじゃないのか?」



妙に背中を押してくれる遠藤先生が神のように見えてきた。

そうだよな、愛があれば七歳差なんて乗り越えられる!!



「そうですよね、遠藤先生!!ありがとうございます!!俺、頑張ります!!ついでに、これから先生の事、亨さんって呼びます!!あ、亨さん、俺の事は悠生でいいですから。」


「なんでいきなり名前…別にいいけど…。まぁ、頑張れ、悠生。」


「はい!頑張ります!!」



鼻息を荒くして意気込む俺を見ていた亨さんが「ま、あの家族に太刀打ち出来ればな」と呟いたのは、俺には都合よく聞こえなかった。

あけましておめでとうございます。今年一年、なるべく週2~3更新を目指していきますんで、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ