第二十八話
なんとか今年中に更新できました(短いですが)
良かったー!
パパの書類を持ってリビングに行くと、チャイムが鳴った。
「はい。」
『あ、唯ちゃん?零だけど、社長から聞いてるよね?』
「高橋さん!ちょうどいいタイミングでした。今開けますね~。」
『あ、俺エントランスで待ってるから、唯ちゃん出てこれる?』
そう言われて高橋さん部屋入らないのかな。と思ったけど、ついでにナイトの散歩も兼ねて下に降りよう。
少し待ってて下さいと言って、ナイトにハーネスを付けて書類を持ってエントランスに降りてみると、羽生さんと仲良く話をしていた高橋さんは、私を見ると破顔した。
「こんにちは、高橋さん。これですよね、書類。」
「あぁうん、ありがとう。唯ちゃんこれから散歩?途中まで一緒に行こうか?」
「いえ、いいですよ。高橋さん早く会社に帰らなきゃいけないでしょ?でも高橋さん、なんで部屋に上がらなかったんですか?私はナイトの散歩もあるからいいですけどね。」
そう言うと、高橋さんは苦笑してナイトを撫でていた手を止めた。
ん?一体なに?
「え?」
「いや、何でもないよ。唯ちゃん、簡単に男を部屋に上げちゃダメだぞ。危ないからな。」
「なんで?高橋さんは昔から知ってるじゃない。それに、私、こんな子供なのに襲う人なんていないよ。」
「うーん…唯ちゃん無自覚だから危ないなー。秀人もその辺しっかり教えてやりゃあいいのに…」
ぼそっと呟いたその声は私に聞こえることはなかったけど、高橋さんは私の頭をポンと軽く叩くと、じゃあ会社に戻るからと言ってマンションを後にした。
散歩に出かけて、近くにあり公園で少しナイトのリードを外して自由にさせた。その途端、近所の子だろう、2、3人の小さな人たちとナイトは仲良く遊んでいた。
それを笑顔で見ながら、私は珠緒さんに連絡を取ることにして、ベンチに腰掛け、手紙に書かれてあった番号に電話した。
『はい、もしもし?』
「もしもし、珠緒さん?唯です。急に電話してすみません、今大丈夫でしたか?」
『あら、唯さん!亨から渡してもらったみたいね。良かったわー。』
「はい、ちゃんと受け取りましたよ。先生からマフラーが大変な事になってるって聞きましたけど、どんな状況なんでしょう。」
そう、どうなってるのかかなり気になる。
私が日曜日に見た限り、かなりヤバい事になってそうだ…。先生もおかしなところから編み棒出てるって言ってたし…。
『まったく亨ったら、大げさなのよねぇ。また編み目がわからなくなったの。今から教えてもらいたいけれど、唯さん、テストがあるんでしょう?』
「あ、はい。来週からなんですけど、今週はテスト前なのでバイトにも行けないんですよね。どうしましょうか…。」
編み目がわからなくなった位で、そこまでひどくなるはずはないのだけれど、前回が前回なだけにかなり信憑性にかける…。でもどうしようかなぁ…。悩んでいると、珠緒さんから、そうだわ!と弾んだ声が電話口から聞こえた。
『テストが終わったら、一度うちに遊びにいらっしゃいな。そうね、来週の土曜日はどう?なんだったら、泊まっていってもいいのよ。』
「え…?さすがに泊まりは駄目ですけど、家にお邪魔するのもご迷惑になりませんか?私、テスト終わったらバイト行きますから、その時…」
『唯さん、家にいらっしゃい。亨は一人暮らしだからいないし、翼は休みの日でも仕事があるだろうから、日中はいないわ。ね?おいでなさい。あぁ、唯さん、家がわからないわね、渡瀬に迎えに行かせましょう。』
「いや、あの…」
『唯さん、どこ住んでいるの?』
「え、あの、」
『あぁ!!亨が知ってるわね。亨から聞きましょう。来週土曜日のお昼に迎えに行かせます。準備してらっしゃいね?』
「あ、はい。」
『嬉しいわ~。じゃあね、唯さん。楽しみにしてるわね。』
「はい、それじゃあ…。」
そのまま電話が切られた。
…あれ?私、行かなきゃいけなくなったのかな…?
あまりの展開の早さに半ば呆然としながら携帯を見つめた。
強引な珠緒に太刀打ちできない唯の図。