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第百十五話

シカゴ観光に関する記載は実際私が行った、というわけではありません。観光された人の感想とかを参考に使わせて貰いました。

間違っていたらお知らせくださいませ。

「あたし、シカゴ美術館に行きたいなー。あとジョンハンコックビルからのシカゴの夜景も観たい。」


「美術館か。あそこ何時からだったっけなあ…私もなんだかんだで行った事ないんだよね。そうだ、ジョンハンコックビル、昼は良いけど夜景は無理かも。あんまり遅い時間だと保護者がいないとうるさいじゃない?」


「ああ、そっか…」



そう、ここは未成年であろうとなかろうと夜でも繁華街を大手を振って歩ける日本ではない(日本でも補導員とかいるから一概には言えないけどね)。

十八で成人認定されるアメリカだからと言ったところで、私はまだ十六歳。つまりは保護者が必要なわけだ。そして、その保護者のパパは現在日本にいるわけで…。本当は一人でフラフラしているのって駄目なんだろうけど、今まで佐江子さんが入院してた病院と家との往復ばっかりだったし、ここに来て一人でシカゴ観光地巡りなんてするわけがない。

ほとんどお母さんと観たしね。

でもまあ、お姉ちゃんと一緒にいればなんとかなるかな。なるべくお姉ちゃんから離れないようにして、警備とか警官に不審がられないようにしてれば大丈夫だろう。



お兄ちゃんとのスカイプでの会話の後、低血圧のお姉ちゃんが自力で起きてくるのを見計らってパンケーキを焼いておいた。本当は近所のコーヒーショップでベーグルとコーヒーを買ってこようかなと思ったんだけど、今朝は放射冷却現状のせいか寒すぎて外に出たく無かったのだ。

仕方なく、というわけでもないけど、小麦粉と牛乳があったので日本に帰る前に消費してしまおうとパンケーキにしたわけ。メイプルシロップもなんだかんだと使っても元が大きい分半分ぐらい残ってしまっているし、卵もスクランブルエッグにして消費。

昨日食べきれなかったサラダを小分けにして二人分用意して、オレンジジュースを注ごうとしているところにようやくお姉ちゃんが起きて来た。

瞼が腫れて痛々しいけど、すぐに冷やしたタオルを当てるように言うと寝起きのためか素直に患部に当ててくれたのでホッとした。


そんなこんなで朝食を食べていると、今日は観光しようかと言うことになって冒頭に至る。



「ビルに展望台があるのよね?」


「うん、そこからだとミシガン湖も見えるよ。夜景も小さい時に一度だけ観たことがあるはずなんだけど、覚えてないんだよねえ…。ただビル自体は商業ビルだからレストランとかバーも併設されてるから、そこからもシカゴの街並みが観れるんだって。なんでもレストランで食事しながら夜景を楽しむっていうのが、一押しのデートプランらしいよ。私は展望台しか行った事ないからアルに聞いた話なんだけどね。」


「んー…そうかあ。あれ、確かもう一箇所にも人気の展望スポットがあるんじゃなかったっけ?」


「ウィリスタワー?ああ、確かにあそこも人気だねえ。」



とまあ、どこに観光に行こうかとか朝食を食べながら決め、いざお姉ちゃんと二人で出かけたものの。



「唯、こっちの服も着てみて!」


「え!?また!?もういいよー!」


「う~ん、さっきのだとちょーっと子供っぽいかしら。せっかく唯は胸大っきいのに隠さない手はないわよね!さ、唯。早いとこ次々試着しておいで。」



とりあえずシカゴ美術館に行く前にジョンハンコックビル!となったのだけど、そこのショッピングエリアでお姉ちゃんは延々と買い物をしまっくっている。かれこれ三時間以上ここにいるんだけれど、もう手に持ちきれないほどの服や靴やバッグの数々…。値札を見ずに買っているようだけど、そのペースが異様過ぎる。まるで何年か前にTVで観た超有名アーティストの買い物風景みたいだ。

しかも悪い事にお姉ちゃんは自分のものだけではなく、私にも同じようなペースでどんどん買っている。いつ履くんだろうと思う高いハイヒールや、明らかに私が持ってても不釣合いな高級バッグ。これ、全部日本に持って帰るんだよね…。税関通るかな…。

そんな私の底知れぬ不安を物ともせずお姉ちゃんは笑顔で買い物を続け、結局気が付けばランチの時間を少々オーバーしていた始末。私のお腹は既にグーグー鳴りっ放しだったし、流石のお姉ちゃんもお腹が空いたようで、ようやくショッピングエリアから出れるようになった時には安堵の溜め息が出そうだったのは内緒だ。



ようやく入ったお店で私はシカゴ名物のスペアリブを、お姉ちゃんは昨日のピザの影響かダブルサイズのグリーンサラダを頼んで、ようやく私達は一息ついた。

テラス席に通されたので、上天気の日差しが気持ちいい。



「あー、楽しかった!やっぱり買い物はストレスに効くわぁ。」


「……買いすぎだけどね…」


「え?何か言った?」



ニコニコと上機嫌のお姉ちゃんを見ているのは、泣いているお姉ちゃんを見るよりもずっといいけど。だけど、なんか空元気のような気がしてならないのは気のせい?



「ねえ、お姉ちゃん。」


「うん?あ、そうだ。ビールも頼めばよかったなー。せっかくお昼から飲める機会なのに。」


「パパと喧嘩してるんだって?お兄ちゃんが今朝、」


「んー、でも昼からだったらスプリッツァの方が好きなんだよねえ。この店スプリッツァ置いてないかな。」


「お兄ちゃんにも道代さんにも行き先言わないでこっちに来たんだんって?マチさんは知ってるんだよね?」


「唯のお肉も美味しそうね。来たら少し頂戴ね!」


「お姉ちゃん!逃げないで話を、」


「逃げて何が悪いの?唯だってこっちに逃げてきたんでしょ?あたしが逃げて何が悪いの。」



私を容赦無く射抜いた声は、今までに聞いた事も見た事も無い、冷たく無機質なお姉ちゃんの声と視線だった。

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