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第94話

二話更新の一話目です。

龍前寺の言葉を借りれば、彼は『帝王』らしい。


が、その言葉を一笑に伏すことが出来ない圧倒的な存在感を持っている彼はまさしく、この場を支配する『帝王』で。


空港から急いで駆けつけて来たのであろう様相だったが、見苦しくないほどに伸びた無精ヒゲと少し乱れた髪は、ファション界の雄である彼が纏っている仕立ての良い黒のジャケットとの相性はまさに抜群だった。

計算し尽くされたファッション性は、まさに『桐生総一郎』という男、そのもの。


俺と目が合った彼はもの言いたげに口角を少しだけ上げたが、すぐさまソファーに腰掛け、長い足を組んで目の前の親子に向きあった。



「さて。一体どうなってるのか説明してもらおうか?」



低い声が口火を切ると、桐生総一郎の登場に動じない理事長が事のあらましを説明し出した。その途中、あれだけ口喧しく騒いでいた吉川母も、いきなりの想定外の人物の登場に度肝を抜かれたのか、ぽかんとして一言も発さなかった。


と、言うよりは…



「ふぅん、なるほどなぁ…」



理事長の説明に時折挟む桐生総一郎の相槌の声が、異様に良すぎる。


俺達教員は一応全員男だし、桐生総一郎が座っているソファーの後ろに立っている為あまり影響は無いが、この声と考え込む一つ一つの仕草。もしも二次元だったら、後ろに花でも咲き乱れているに違いない。

『帝王』は、一見無駄にも思えるほどのフェロモンを撒き散らしているように俺の目には見えた。


そして、これを真正面から見ている女の親子の目の色たるや…

完全に有名人を目の前にしたソレ。しかも、桐生総一郎のフェロモンの直撃を食らっている為に、娘の方は既に顔が上気しているようにも見える。

吉川母はなんとか顔を取り繕っているようだが、その目に浮かぶ『女』の媚。

それは隠し様が無かった。


俺にでもわかるのだから、目の前に座っている彼が気付かないはずはない。



「ああ、挨拶が遅れて申し訳ない。桐生総一郎です、以後お見知りおきを。」



にこりと微笑んで自己紹介がてら立ち上がって握手をしようと手を差し伸べた桐生総一郎を、座ったまま見上げていた吉川母であったが、ようやく我に戻った様で。一応は威厳ありげに立ち上がって手を差し伸べて、握手したもののやはり動揺は隠せ無かったようで、上ずった声で理事長に説明を求めた。



「りっ、理事長!!これは一体どう言う事ですか!」


「まあ、お二人ともお座りください。今説明を…」


「説明なんてすぐ終わるだろうが。俺は唯の父親で、保護者。それでいいじゃねえか。」



「な?十秒もかからねえ」と笑った彼に苦笑しながら同調したのは、理事長のみ。後の事情を知っている人を除いた、何人かはあまりの衝撃に目を見開いて驚いていた。

俺の隣に居る悠生も例に漏れず、驚いている一人だった。



「な…なんですって…!」


「で?うちの娘が何をしたって?」



にやりと笑った桐生総一郎の顔を見て俺は思った。



『帝王』って言うより、『魔王』の方が合ってるんじゃないか?

と。

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