尻込みの木
和尚さんの隠し芋を巡る子供たちの騒動を描いた、笑いと温もりにあふれる現代語訳の物語をお届けします。
昔話のような少し風変わりでどこか懐かしい「尻込みの木」を舞台に、欲望に負けた子供たちと災難に見舞われる和尚さんのコミカルなドタバタ劇をお楽しみください
昔々あるところに、尻込みの木という巨木が生えていたそうな。
尻込みの木は、村道の曲がり角に、ぽつんと一本だけ立っていたそうな。
その木はセコイアらしく、成長すれば100メートルを超える樹高になるので、みな昇るのを尻込みしてしまうという逸話で有名ということでした。
既にそのセコイアは樹高が高く、100メートルに近そうでした。
ある日、寺子屋の生徒たちがその木の天辺まで登ってみようと提案しました。男の子たちばかりが集まってそんなお話をしていたのに御座います。てらの和尚さんはそれは危険だからならん!と制しようとしたのですが……。
すると、その時、一番弱気だった太吉が「いや、和尚さん! 学問も大事だけど、度胸試しも男の修行だよ!」と急に声を張り上げました。
男の子たちは一瞬「おお……!」と太吉の勇気に感服しましたが、太吉の視線は木の天辺ではなく、幹のすぐ下に伸びた太い枝に釘付けになっていました。なんとそこには、和尚さんが密かに隠しておいた、特大の焼き芋が吊るされていたのです。
「さては和尚さん、俺たちを追っ払って一人で芋を食う気だったな!」「な、何をバカなことを! あれは……修行の一環じゃ!」と狼狽する和尚さんを余所に、欲望に目がくらんだ男の子たちは、先ほどまでの尻込みが嘘のように我先にと木へ群がり始めました。
「俺が芋を獲る!」「いや俺だ!」と押し合いへし合い、下から芋を目指して押し寄せた結果、男の子たちの人間タワーが完成。そして一番上に押し上げられたのは、高所恐怖症で泣き叫ぶ太吉でした。
「高すぎるー! やっぱり無理ー!」と太吉が暴れた瞬間、タワーはガタガタと崩壊。崩れ落ちた男の子たちの束は、逃げ遅れた和尚さんを丸呑みするように押し潰しました。
「ぐふっ……! これ、お前たち、解散せい……!」
下敷きになった和尚さんの唸り声が響くなか、奇跡的に木にしがみついて助かった太吉の手には、しっかり焼き芋が握られていました。村道の曲がり角では、今日も見上げるほど大きな木の下で、和尚さんと子供たちがわあわあと言い争う賑やかな声が響いているので御座います。
【了】
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
焼き芋へのあくなき執着と、それによって引き起こされるコミカルな人間タワーの崩壊劇を楽しんでいただけたなら幸いです。和尚さんの隠し事と子供たちのたくましさは、時代が変わっても変わらない人間の愛らしさですね。
また次の物語でお会いできるのを楽しみにしています




