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転生薬局は今日も営業中!〜異世界ドラッグストアで世界を救います〜  作者: もしものべりすと


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第十九章 ドラッグストア同盟——かつての敵との和解

ロッソは、長い間黙っていた。


 彼の太った顔に、複雑な表情が浮かんでいる。怒り、困惑、そして——何か別の感情。


「……息子から、聞いてはいた」


 ようやく、ロッソが口を開いた。


「ラウルが、お前の店で働いていること。私は、裏切り者だと思っていた」


「ラウルは、立派な登録販売者です。あなたの息子として恥ずかしくない」


「おべっかは要らん」


 ロッソの声が、鋭くなった。


「私が聞きたいのは——なぜ、敵の私に協力を求める? 私を潰そうとは思わないのか?」


「思いません」


 健太は、はっきりと答えた。


「俺の目的は、あなたを潰すことじゃない。人々を救うことです。そのためなら、誰とでも手を組みます」


「甘いな」


「甘くても、それが俺のやり方です」


 二人の視線が、交錯した。


 しばらくの沈黙の後、ロッソが深いため息をついた。


「……世界が滅びる、か」


「はい」


「証拠は」


「遺跡に行けば、分かります。封印の綻びを、自分の目で確認してください」


 ロッソは、考え込んだ。


「……三日、待て」


「三日?」


「確認する。お前の言っていることが本当かどうか。本当なら——」


 彼の目が、鋭くなった。


「——考えないこともない」


 三日後。


 ロッソから、連絡が来た。


「話を聞こう」


 それだけの短いメッセージだった。


 健太は、再びロッソと面会した。今度は、ギルド本部で。


「確認した」


 ロッソの声は、以前より静かだった。


「遺跡に、部下を送った。封印の状態を見させた」


「それで?」


「お前の言う通りだった。綻びは広がっている。このままでは——」


 ロッソは、苦々しげに言った。


「——本当に、世界が滅ぶかもしれん」


「では——」


「待て。協力すると決めたわけではない」


 ロッソは、健太を睨んだ。


「私には、私の立場がある。ギルドマスターとして、メンバーの利益を守る責任がある。お前に協力することで、ギルドが損害を被るなら——」


「損害は出しません」


 健太は、きっぱりと言った。


「俺が求めているのは、競争をやめることじゃない。協力することです」


「どういう意味だ」


「ギルドには、ギルドの強みがある。魔法薬の製造技術、全国規模の流通網、資金力。俺たちには、俺たちの強みがある。非魔法薬の知識、予防医学のノウハウ、庶民との信頼関係」


 健太は、地図を広げた。


「今、瘴気病が蔓延しているのは、主に地方の農村です。ギルドの店は、王都や大都市に集中している。地方には届いていない」


「それは——採算が合わないからだ」


「分かっています。でも、俺たちの店は地方にもある。フランチャイズで、少しずつ広げてきた」


 健太は、地図上のポイントを指した。


「ギルドは、都市部を担当する。俺たちは、地方を担当する。住み分けをすれば、競合しない」


「しかし——」


「さらに、情報を共有します。瘴気病の発生状況、効果的な治療法、在庫の過不足。お互いに情報を交換すれば、効率が上がる」


 ロッソは、地図を見つめた。


「……悪くない提案だ」


「最終的には、共同で封印の修復に当たります。ギルドの魔法使い、俺たちの薬草学者、聖教会の儀式師。全員が協力すれば——」


「成功の可能性が上がる、と」


「はい」


 ロッソは、長い沈黙の後、立ち上がった。


「……分かった」


 健太の目が、見開かれた。


「協力する。ただし——」


 ロッソの目が、鋭く光った。


「——これは、対等な同盟だ。お前が命令する立場ではない」


「もちろんです」


「それから、もう一つ」


 ロッソは、窓の外を見た。


「ラウルのことは……認めよう」


 その声には、複雑な感情が込められていた。


「あいつは、私の息子だ。私のやり方を否定して、お前についた。それは——」


 彼は振り返り、健太を見つめた。


「——私が間違っていたということかもしれん」


 「ドラッグストア同盟」が結成された。


 製薬ギルドと転生薬局チェーンの、歴史的な提携。


 かつての敵同士が、世界を救うために手を組んだ。


 この知らせは、瞬く間に王国中に広まった。


「ギルドと薬屋が、協力するなんて——」


「信じられない。あんなに争っていたのに」


「でも、これで瘴気病が収まるなら——」


 人々の反応は、概ね好意的だった。


 そして——希望が広がり始めた。


 同盟結成から一週間後。


 健太は、エルフィナから報告を受けた。


「封印の状態を確認した」


「どうだった?」


「綻びの拡大が、止まっている」


 健太の心臓が、大きく跳ねた。


「止まっている?」


「ああ。まだ修復には至っていないが、悪化は停止した」


「それは——」


「希望が、集まり始めているのだ」


 エルフィナの目に、珍しく感情が浮かんでいた。


「ギルドとの同盟。王国全体での協力体制。人々は、希望を持ち始めている」


「でも、まだ足りないんだな」


「そうだ。封印を修復するには、もっと多くの希望が必要だ」


 健太は頷いた。


「分かった。もっと広げよう」


 同盟を基盤に、さらなる協力体制が築かれた。


 まず、聖教会との和解。


 健太は、穏健派の審問官たちと交渉し、公式な協力関係を結んだ。


「瘴気の王は、神に背く存在だ」


 議長の老審問官が言った。


「その復活を防ぐことは、神の御心に適う」


 聖教会は、全国の教会を通じて、「希望を持つこと」の重要性を説き始めた。


 次に、王室との連携。


 セラフィーナ姫の尽力により、王室からの公式な支援が得られた。


「父上も、ようやく動いてくださいました」


 セラフィーナは、健太に報告した。


「王国の資金を、瘴気病対策に投入します。また、各地の領主に協力を命じました」


「ありがとうございます、姫様」


「これは、私の弟を救っていただいた恩返しです。そして——」


 彼女の目が、輝いた。


「——私自身が、やりたかったことでもあります」


 王国全体が、動き始めた。


 ギルドの薬が、都市部に行き渡る。


 転生薬局の店が、地方の隅々に広がる。


 聖教会の教会が、希望を説く。


 王室が、資金と権威で支える。


 そして——人々が、希望を持ち始めた。


「瘴気病は、治る」


「みんなで協力すれば、大丈夫だ」


「あの薬屋さんたちが、頑張ってくれている」


 希望の声が、王国中に広がっていった。


 三ヶ月後。


 健太は、再び古代遺跡を訪れた。


 今度は、大勢の仲間と共に。


 エルフィナ。リーネ。マルコ。ゴルド。


 ラウル・ロッソ。


 セラフィーナ姫。


 そして——ギルバート・ロッソ。


 かつての敵が、同じ目的のために、同じ場所に立っている。


「封印の状態を確認する」


 エルフィナが、祭壇に近づいた。


 魔法陣を調べ、空気中の瘴気濃度を測定し——


「……綻びが、小さくなっている」


 全員の顔に、安堵が広がった。


「効いているのか」


「ああ。希望の力が、封印を修復し始めている」


「でも、まだ完全じゃないんだな」


「そうだ。完全な修復には、もう一押し必要だ」


 健太は、祭壇を見つめた。


「もう一押し……」


 その時、異変が起きた。


 地面が、揺れた。


 祭壇の魔法陣が、赤く光り始めた。


「何だ——!?」


 瘴気が、噴き出した。


 紫色の靄が、部屋中に広がる。


「まずい! 封印が——」


 エルフィナの声が、叫んだ。


「——破れかけている!」


 魔法陣の中央から、巨大な影が浮かび上がった。


 人型の、しかし人ではないもの。


 紫と黒が混じり合った、禍々しい存在。


「我は……瘴気の王……」


 地の底から響くような声。


「長き眠りから……目覚めよう……」


 健太の全身が、凍りついた。


 ——間に合わなかったのか。


 瘴気の王が、復活しようとしている。


 最終決戦が、始まった。

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