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転生薬局は今日も営業中!〜異世界ドラッグストアで世界を救います〜  作者: もしものべりすと


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第十八章 人材育成——登録販売者を増やせ

養成学校は、順調に運営されていた。


 第一期生の活躍を見て、志願者は増えた。第二期は十人、第三期は十五人。入学希望者は、さらに増えている。


 しかし、問題もあった。


「教える人が、足りない」


 リーネが、疲れた声で言った。


「私とエルフィナさんの二人だけでは、限界です」


 確かに、カリキュラムは充実している。しかし、実習の指導には多くの人手が必要だ。


「卒業生の中から、教官を選抜しよう」


 健太は提案した。


「成績優秀で、教える才能がある人間を」


「でも、そうすると店舗の人員が——」


「分かってる。バランスが難しい」


 健太は考え込んだ。


 店舗運営と人材育成。どちらも重要だが、リソースは有限だ。


「優先順位を決めよう」


 健太は言った。


「今、最も必要なのは何だ?」


「封印の修復です」


 エルフィナが答えた。


「希望の結晶を生み出すには、もっと多くの人を救う必要がある」


「そのためには、店舗を増やす必要がある」


「店舗を増やすには、人材が必要」


「だから、養成学校を優先する」


 結論は明確だった。


「短期的には、店舗の拡大ペースを落とす。その分のリソースを、人材育成に回す」


 教官候補として、三人が選ばれた。


 ラウル・ロッソ。第一期卒業生のトップ。


 アンナ。第一期生で、元商人の娘。接客術に優れている。


 そして——リーネ・フォン・ハイルブルク。


「私が、教官ですか?」


 リーネは驚いた。


「もちろん。君は最初の登録販売者だ。経験も知識も、誰より豊富だ」


「でも、私はまだ——」


「謙遜するな」


 健太は、リーネの肩に手を置いた。


「君は、俺が最初に認めた登録販売者だ。後輩たちの手本になれ」


 リーネは、しばらく黙っていた。


 やがて、小さく頷いた。


「……分かりました。やってみます」


 教官三人体制で、養成学校は強化された。


 カリキュラムも改良された。


 特に力を入れたのは、「倫理教育」だった。


「薬を売る技術だけでは、不十分だ」


 健太は、入学式で毎回同じ話をした。


「技術は、使い方次第で毒にもなる。大切なのは、何のために薬を売るのか、という心構えだ」


「お客様の健康が第一。それが、俺たちのモットーだ」


「金儲けのために薬を売るな。人を助けるために売れ。その順番を間違えると、すべてが狂う」


 倫理教育の一環として、「ケーススタディ」が導入された。


 実際に起こりうる難しい状況を想定し、どう判断すべきかを議論する。


「ケース一。お客様が、大量の睡眠薬を求めてきた。表情は暗く、様子がおかしい。あなたは、どうしますか?」


 生徒たちが、考え込む。


「売らない……ですか?」


「売らないだけでいいか? 他にすべきことは?」


「話を聞く……とか?」


「そう。なぜ大量に必要なのか、理由を聞く。様子がおかしければ、警告のサインかもしれない。必要なら、専門家に相談することを勧める」


 健太は、生徒たちの目を見つめた。


「俺たちは、薬を売るだけの存在じゃない。お客様の健康と命を預かる立場だ。その責任を、忘れるな」


 「ケース二。ライバル店が、うちより安い価格で同じ薬を売り始めた。売上が落ちている。あなたは、どうしますか?」


「価格を下げる?」


「価格で競争したら、どうなる?」


「利益が減る。もっと下げられたら、赤字になる……」


「そう。価格競争は、体力勝負だ。資本力のある相手には、勝てない」


「じゃあ、どうすれば……」


「差別化だ。価格以外の価値を提供する。サービスの質、相談対応、健康教室。お客様が、価格以外の理由でうちを選ぶようにする」


 健太は、自分たちがロッソのギルドと戦った経験を話した。


「価格で負けても、価値で勝てる。それが、俺たちのやり方だ」


 養成学校から、次々と卒業生が輩出された。


 第二期生十人。第三期生十五人。第四期生二十人。


 卒業生たちは、各地に散っていった。新しい店を開く者、既存の店で働く者、故郷に戻って活動する者。


 半年後。


 転生薬局チェーンは、計十五店舗に拡大していた。


 そして——瘴気病の発症率は、全国で五割減少していた。


「効果が出てきたな」


 エルフィナが、満足げに言った。


「このペースなら、一年以内に——」


「いや」


 健太は、首を横に振った。


「まだ足りない」


「足りない?」


「封印の状態を確認してきた。綻びは、まだ広がっている。瘴気病を減らしても、封印の修復には至っていない」


 エルフィナの表情が、曇った。


「つまり……」


「希望が、まだ足りない。もっと多くの人を救って、もっと大きな希望を生み出さないと——封印は修復できない」


 状況は、緊迫していた。


 瘴気病の発症率は下がっている。しかし、封印の綻びは広がり続けている。


 いずれ——臨界点を超える。


 その時、瘴気の王が復活する。


「時間がない」


 健太は、夜の店で一人呟いた。


「このペースじゃ、間に合わない」


 どうすれば、もっと速く希望を広げられる?


 店を増やす? それには人材が必要だ。人材を育てる? それには時間がかかる。


 堂々巡りだった。


 ——いや、待て。


 健太は、あることを思いついた。


 今まで、自分たちだけで戦おうとしていた。


 でも——味方は、もっといるのではないか?


 翌日、健太はセラフィーナ姫に手紙を書いた。


 そして、ギルドの穏健派にも、連絡を取った。


 さらに——かつての敵にさえ、手を伸ばした。


「私を、呼んだのですか」


 ギルドマスター、ギルバート・ロッソが、健太の前に立っていた。


 場所は、王都の中立地帯。第三者の立会いのもとでの面会だった。


「ええ」


 健太は、ロッソに向き合った。


「話があります」


「何の話だ。敵同士が、話すことなどない」


「敵同士だからこそ、話すんです」


 健太は、静かに言った。


「世界が滅びそうなんです。ロッソ卿。このまま行けば、一年以内に——」


「世界が滅びる? 大げさな脅しだな」


「脅しじゃありません。事実です」


 健太は、遺跡で見つけた情報を説明した。瘴気の王。封印の綻び。復活までのタイムリミット。


 ロッソは、黙って聞いていた。


「……信じろと?」


「信じてください。俺たちは、ライバルです。でも、世界が滅びたら、商売もへったくれもない」


「それで、私に何をしろと?」


「協力してください」


 健太は、まっすぐにロッソを見つめた。


「ギルドの力を、貸してください。一緒に、人々を救いましょう」

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