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転生薬局は今日も営業中!〜異世界ドラッグストアで世界を救います〜  作者: もしものべりすと


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第十六章 瘴気の真実——世界の病

調査隊の編成は、すぐに始まった。


 メンバーは、健太、エルフィナ、そしてマルコの三人。


 リーネは店を任され、ゴルドは万が一に備えて王都に残った。


「気をつけてください、店長さん」


 出発の朝、リーネが心配そうに言った。


「必ず、帰ってきてください」


「ああ、約束する」


 健太は微笑んだ。


「店を頼むぞ」


 王都を出て、北へ。


 雪に覆われた街道を、三人は進んだ。


 一日目は、順調だった。宿場町で一泊し、翌朝また出発。


 二日目の午後から、様子が変わった。


「空気が、変わってきたな」


 マルコが言った。


 確かに、空気に重苦しさが増している。肺に入る酸素が、わずかに濁っているような感覚。


「瘴気が濃くなっている」


 エルフィナが言った。


「近づいている証拠だ」


 三日目。


 目的地——古代遺跡の入り口に到着した。


 遺跡は、想像以上に巨大だった。


 山肌に刻まれた、巨大な門。かつては壮麗だったであろう彫刻が、風化して崩れかけている。


 門の向こうには、暗い通路が続いていた。


「中に入るのか?」


 マルコが、緊張した声で言った。


「入らなければ、何も分からない」


 健太は、携帯用のランタンを取り出した。


「行こう」


 遺跡の内部は、迷宮のようだった。


 複雑に入り組んだ通路。崩れた壁。積もった埃。


 しかし、奥に進むにつれて、瘴気はどんどん濃くなっていった。


「マスクをしよう」


 健太は、用意していた布製のマスクを配った。


「瘴気を直接吸い込むのは危険だ」


 通路を進むこと、約一時間。


 やがて、広い空間に出た。


 そこは——かつての神殿のようだった。


 高い天井。崩れた柱。そして、中央には——


「あれは……」


 マルコが、息を呑んだ。


 中央に、巨大な祭壇があった。


 その上には、複雑な魔法陣が刻まれている。円と三角形と、見たこともない紋様の組み合わせ。


 そして、魔法陣の中心には——


「封印だ」


 エルフィナが呟いた。


「古代の封印魔法。何かを、封じ込めている」


 しかし、その封印は——綻びかけていた。


 魔法陣の一部が、ひび割れている。そこから、紫色の靄が漏れ出している。


 瘴気。


「これが、発生源か」


 健太は近づき、祭壇を観察した。


「封印が壊れかけて、中身が漏れ出している——」


 その時、エルフィナが何かを見つけた。


「待て。あれは——」


 祭壇の横に、石板があった。


 表面には、古代語の文字が刻まれている。


 エルフィナは、それを読み始めた。


「……これは、警告文だ」


 エルフィナの声が、震えていた。


「何て書いてある?」


「『ここに、瘴気の王を封じる。その復活を許すな。復活の時、世界は絶望に沈む』」


「瘴気の王……」


 健太は、封印を見つめた。


「これの中に、いるのか?」


「おそらく」


 エルフィナは、石板を読み続けた。


「『瘴気の王は、人々の絶望と病から力を得る。封印を維持するには、人々の健康と希望が必要だ』」


 健太の頭の中で、パズルのピースが繋がった。


「だから、瘴気病が広がっている……」


「封印が弱まったことで、瘴気が漏れ出し、人々を病気にする。病気になった人々は絶望し、その絶望が瘴気の王を強くする。そして、封印がさらに弱まる——」


「悪循環か」


「そうだ。このまま放置すれば、いずれ封印は完全に破れる。そうなれば——」


 エルフィナの顔が、青ざめた。


「——瘴気の王が復活する」


 三人は、祭壇の周囲をさらに調査した。


 石板には、封印の詳細が記されていた。


 封印を維持するための儀式。必要な触媒。そして——封印を修復する方法。


「修復には、特殊な素材が必要だ」


 エルフィナが説明した。


「『静寂の石』、『月光草』、そして——『希望の結晶』」


「静寂の石と月光草は、もう持っている。希望の結晶は?」


「知らない。聞いたこともない素材だ」


 マルコが首を傾げた。


「希望の結晶って、何だ? どこにあるんだ?」


「分からない。古文書を調べる必要がある」


 健太は考え込んだ。


 封印を修復できれば、瘴気病を根本から解決できる。


 しかし、材料が揃わなければ、何も始まらない。


「とりあえず、戻ろう」


 健太は言った。


「ここで得た情報を持ち帰って、対策を考える」


 帰路は、来た時よりも早かった。


 緊迫感が、足を速めさせた。


 王都に戻ったのは、出発から五日後のことだった。


 店に戻ると、リーネが待っていた。


「お帰りなさい、店長さん。何か分かりましたか?」


「ああ。色々と」


 健太は、仲間を集めて報告会を開いた。


 遺跡で見つけたこと。瘴気の王の存在。封印の修復に必要なもの。


「希望の結晶……」


 リーネが呟いた。


「聞いたことがありません」


「俺も知らない」


 ゴルドが言った。


「エルフィナ、心当たりはあるか?」


「一つだけ、可能性がある」


 エルフィナは、本棚から古い本を取り出した。


「古代の魔法文明には、『感情を結晶化する』技術があったという伝説がある」


「感情を結晶化?」


「喜び、悲しみ、怒り、そして希望。強い感情は、特定の条件下で物質化することがある」


 健太の目が、輝いた。


「つまり、希望の結晶を作れる可能性がある?」


「理論上は。しかし、方法は失われている」


「探せばいい。古文書でも、言い伝えでも。何かヒントがあるはずだ」


 健太は、仲間たちを見回した。


「時間は限られている。封印は日々弱まっている。でも——」


 彼の声に、力がこもった。


「——諦めるわけにはいかない。俺たちにできることを、全力でやる」


 仲間たちが、頷いた。


「よし」


 健太は立ち上がった。


「まず、情報収集だ。希望の結晶について、何でもいい。手がかりを探す」


「私は、エルフの古文書を調べる」


 エルフィナが言った。


「俺は、街道沿いで噂を集める」


 マルコが言った。


「私は、宮廷の図書館にアクセスできるか、姫様に相談してみます」


 リーネが言った。


「俺は……まあ、鍛冶場で待機だな。何か作るものがあれば言ってくれ」


 ゴルドが言った。


「ありがとう、みんな」


 健太は頷いた。


「必ず、方法を見つける」


 調査が始まった。


 数日間、仲間たちはそれぞれの方法で情報を集めた。


 しかし、なかなか手がかりは見つからなかった。


「希望の結晶」は、あまりにも曖昧な概念だった。古い伝説や言い伝えはいくつか見つかったが、具体的な作成方法を示すものはなかった。


「どうする、店長」


 マルコが、疲れた声で言った。


「もう一週間経つぜ。何も見つからない」


「諦めるな」


 健太は言った。


「まだ、調べていない場所がある」


「どこだ?」


「聖教会の禁書庫」


 全員が、目を見開いた。


「禁書庫って——あの、立入禁止の——」


「ああ。聖教会が危険と判断した書物が保管されている場所だ」


「でも、どうやって入るんだ? 警備は厳重だろうし——」


「一つだけ、方法がある」


 健太は言った。


「異端審問で、俺は聖教会の監督下に置かれることになった。つまり、教会と交渉できる立場にある」


「交渉?」


「瘴気病の真実を伝える。封印のことを教える。教会だって、世界が滅ぶのは困るはずだ」


 リスクはある。しかし、他に方法がなかった。


「やってみる価値はある」


 健太は、決意を固めた。


「明日、教会に行く」

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