比留間明夫41
戦争の片付けはひとまず終わった……はずだが、のんびりする余裕はまるでない。
日本人的な貧乏性というか、休めない体質ってやつだろうか。
山積みの課題を前に、さぼるわけにもいかないので内政改革に本格着手することにした。
人手が圧倒的に足りないのが悩みどころ。
新産業を起こすのも大事だけど、そもそも運営する人がいなきゃ始まらない。
軍はマルス将軍とダオウルフ将軍がスター力で募集してくれているからだいぶ安心だけど、文官は俺の担当。
スパイが紛れ込んでも困るし、最終面接は俺がやることになった。
いや、俺に人を見る目があるわけじゃないんだけどね。
救世主はコヨミ、別名キャットGPT。抱っこしたまま面接、って向こうの人は引くかもしれないけど、コヨミは腹心だから仕方ない。
面接は意外と合理的に進んだ。コヨミが能力鑑定をしてくれるので、書類審査で「いい顔」に見えただけの人をはじいてくれる。
向こうの世界で人事をちょっとだけ手伝った経験があるけど、選ぶのって苦手なんだよね。
みんな良く見えちゃう。
そこをコヨミが容赦なくジャッジしてくれるから、助かる。採用候補の顔ぶれを見て、「国をよくしたい」と真剣に思ってる人をちゃんと選べるのが最高。
採用枠はあっという間に埋まり、官僚体制も徐々に出来上がっていく。
将来的には優秀な人たちに任せて、俺はぬくぬく引きこもり生活を満喫したい。
向こうの世界での「ハッピーリタイア」みたいなのを、こっちでもやってやるんだ。
釣り場作って、ゴルフ場作って、猫と一緒に日向で昼寝──想像するだけで幸せ。
体は軽いし、多分ティーショットもめっちゃ飛ぶ(はず)。
もしかして、ゴルフの腕も10倍になっているかもしれない。
シングルも狙えるかな。
印刷技術とか水道インフラとか、リアル仕事もやりたい。
王を子どもに移譲して楽隠居──って、考えただけでニヤニヤする。
猫抱いてお茶すすって、本でも読んでいたい人生だったのだ。
ところが平和は長く続かない。コヨミがぽんと知らせてくる。
「ガルバン帝国が動いてるにゃん」と。
えー、また戦争? 本当に戦争って、やることリストに入れたくないんだけど。
今度は魔族と手を結んでくるらしい。
いままでなかったファンタジー要素登場。
エルフにドワーフ、獣人って、それと魔王。
なんかやばくね。
戦うならこっちにも秘策がある。
倉庫に向かう。王宮近くの体育館みたいな建物、あそこで新兵器を作ってるんだ。
新兵器といっても趣味の品に近い。
コヨミはもっと他のものを作るほうがいいっていうけど、これだけは譲れなかった。
それでなんとか完成したんだけど、簡単に扱えるものじゃないから、帝国が来る前にみんなで練習してマスターしないと。
倉庫の扉を開けると、愛すべき混沌が広がっていた。
工具と試作品と、コヨミの毛が舞う。
俺はヘルメットと防護メガネをかけて、新兵器に向き合う。
とりあえず今日は練習開始。帝国が攻めてくる日までに、俺もこの新兵器を習得してやる。
絶対に相手は驚くはずだ。
たぶん、ファンタジー世界にも通用する。
ぼくは、操縦席に乗り込み、コヨミの指示通りにスイッチを入れていく。
あ、シートベルトも忘れてはならない。
目の前のレバーを握る。
そしてゆっくりとアクセルを踏む。
そのとたん、新兵器はゆっくりと前に進んでいくのだった。




