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王様とおっさん~異世界はキャットGPTとともに~  作者: PYON
第四章 ミシディア共和国

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ミシディア共和国 ヴィルヘルム大統領08

 ふう──やっぱり、この老いぼれ商人じみた王、クセ者だな。

 キャルロッテ王の言うことに、理屈抜きで「なるほど」と頷いている自分がいる。

 政治家の勘ってヤツか、それとも単に追い詰められた人間の最後のあがきか。

 どっちにしても、今はこれしか選べない。

 任期が終われば自分は裁かれる身かもしれない。

 だが、任期中にできるだけ国を立て直し、少しでも被害を和らげれば、生き延びる可能性は残る。

 がんばるなら今しかない。背中に冷たい汗がにじむが、腹は決まっていた。

 これもキャルロッテ王の計算か。

 本当に大した人物だ。


「あと、捕虜は全員解放させていただきます」


 キャルロッテが指を鳴らすと、横の扉がするりと開いた。

 そこに立っていたのは、例のフェルマン総司令官とヒルヴァ副司令官。

 二人とも意外にしれっとしている。

 血相変えて連れてこられたわけでも、傷だらけで呻いているわけでもない。

 国家間の問題を泥沼の手口で解決しても意味はないということか──彼らの顔つきは、どこか諦観を帯びているのだった。

「ありがとうございます」


 私の声は自然に出た。感謝の言葉を口にする自分が、少しばかり恥ずかしい。

 だが、事実だ。捕虜の身柄は引き渡され、国際法に沿った取り扱いがなされる。

 そこは評価できる。戦争という「商売」で齎される最低限の礼節、だ。


 キャルロッテの声が低くなった。空気が変わる。


「それと…今回はこれで済ませますが、次にこのようなことをしたら……全力でミシディアを叩き潰します。次は容赦しません」


 普段の猫かわいがり王からは想像できない迫力だ。

 正直、背筋が凍る。

 前に会ったときの、あのどこか頼りなさそうな紳士が、今は確実に「国家の舵取りをする人」になっている。

 威圧感というか、覚悟というか。言葉の一本一本に「後戻りはさせない」という重さがある。

 あの情けない中年王は演技だったのか。

 たいした役者だよ。


「承知しております。二度とニャール王国と戦争はしません」


 返答はわたしの口から即座に出た。なぜなら、腹の底ではもうわかっていたからだ。

 無駄に血を流すことを、私はもう望んでいない。

 国民も、兵士も、誰も得をしない。だが、この一言で済む問題でもない。ここから先が肝心だ。


「そのためには経済協力が必要です。両国は今まで以上に強く手を結ぶべきです」


 キャルロッテは手を差し伸べる。あの細い手。

 だが、その手を握った瞬間、妙に安堵感が胸に広がった。

 政治家としての私の本能が、これが正しい選択だと囁く。


「わかりました。わたしの力の及ぶ限り努力します」


 握手を交わす。儀式のようでいて、本当に必要な約束だ。

 会場の空気が少しだけ柔らかくなるのを感じる。

 これで外務大臣と宰相あたりに細則を丸投げできるのも、正直ほっとするポイントだ。

 細かい文言は専門家に任せる。大局を決めるのが首脳の仕事だ。


「それでは細かいことは外務大臣レベルで決めていきましょう」


「承知致しました」


 外務の人間に丸投げできるのは、本当に有難い。だがキャルロッテはさらに先を読んでいた。


「あと、経済的な協力体制ですが、ビリジアンテ帝国も加えてやりましょう。ガルバン帝国も参加してくれたらいいんですけど。少し難しいでしょうね」


 目先の勝ち負けだけでなく、周辺諸国を巻き込んだ枠組みを提案してくる。

 彼の視野のスケールは、我々のいつもの発想とは桁が違う。

 目の前の損得しか見えない政治家にとって、この発想は羨ましくもあり、怖くもある。

 だが、こういう人間が隣にいるのは、案外悪くない。


 私は、その瞬間、決めた。追い詰められた男が最後に選ぶ道は――誠実に、そして賢く国を守ることだと。


「わたしは、この王についていこう」


 心の中でそっと呟く。外向けには微笑を浮かべているつもりだが、内心は緊張と期待が入り混じる。

 猫を抱いた王、その背後にいるダオウルフや宰相たち。奇妙な連中だが、今は彼らと手を結ぶべき時だ。


 会議室の窓の外では、戦後処理に奔走する事務官や、帰還する兵士たちの姿が見える。

 世界はやっと、静かな方向へ動き始めた──そう、まだ始まったばかりだが、私はこの流れに賭けてみようと思った。

 少しでも国民の生活が良くなるなら、それが政治家としての最後の仕事になるだろうから。

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