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王様とおっさん~異世界はキャットGPTとともに~  作者: PYON
第四章 ミシディア共和国

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ミシディア共和国 ヴィルヘルム大統領06

 結局、海も陸も崩れ去った。

 ミシディア共和国は負けを認めざるを得ず、今日この場は"我が国の処遇"を決めるための会談だ。


 目の前にはニャール王国の重役ども――外務大臣、宰相、二人の将軍、そして相変わらず猫を抱いたキャルロッテ王。

 どうしてこの人はいつも猫を抱いているのか。

 今日も抱いている。しかもその猫、会議室の空気をまったく気にしてない顔である。罪深いほど無邪気だ。


 立ち上がった王は穏やかに礼をする。

 威厳はあるが、どこか商人のような気配も混じっている。

 こっちは今や、まな板の上の鯉である。いや、鯉よりもっと扱いが悪いかもしれない。


「この度は終戦をご決断いただき、ありがとうございます」

 キャルロッテ王の声は柔らかい。隣の将軍――ダオウルフの視線が鋭く光るが、王は微笑んだままだ。


 私は深く息を吸い、言葉をつないだ。負けを認め、まずは謝るしかない。


「いえ、こちらこそ……無意味な戦争を招いたことを深くお詫び申し上げます」


 言いながら、自分でもわかっている。謝罪くらいでは済まないだろうと。

 今回の戦争は私の軽率さが端緒だ。

 資源の確保、国威の誇示、そして"少しは面目を立てたい"という小さな私欲が混ざっていた。

 言い訳を並べても、事態は変わらない。


 キャルロッテの表情はわからない。

 穏やかな口調でわたしに対応する。

「まず、今回の戦争を始めたこと、謝罪していただきます」


「承知しております」

 私は即答した。口の中が乾く。

 謝る理由は国益の失敗だけではない。

 指導者としての私の信用が、国家の安定と直結している。

 賠償金や領土要求は当然来るだろう。想像するだけで胃がきりきりする。


 今回の戦争を始めたことに正義はない。

 国家として以上にわたしの軽率な行動に謝罪しなければならない。

 簡単に勝てると思って戦争を始めたのはわたしの責任だ。

 ただ、それは私欲によるものではない。

 ニャールを取り込むことによって、資源問題を解決し、ミシディアをより強い国にするためだった、

 そうしないと、ガルバン帝国が攻めてきたときに征服されてしまうおそれがあるのだ。

 我が国は経済力はあるが、軍隊は帝国ほど強くない。

 しかし、科学の力で対抗するしかないと思っていた。

 今回の戦争はその予行演習も兼ねていた。

 それなのに、その科学力で負けたのだ。

 ダオウルフ将軍の騎馬隊、ニャール水軍も強かったが、それ以上に戦車をはじめとする武器の力に叩きのめされたのだ。

 もし、戦争が続いて向こうが本気で攻めてきたら、我が国は徹底的に蹂躙される。

 終戦を受け入れてくれただけでも良しとしなければならない。

 あとは条件だ。

 王がどのような条件を持ち出すか。

 たぶん国家予算数年分の賠償金と領地だろう。

 報復という意味もあるが、相手を弱体化してもう二度と戦争を起こさないようにしなければならない。

 我が国が買っていたら、国ごといただくつみりだったんだからな。

 これをどこまで負けさせるかだ。

 わたしは次の条件を神妙な面持ちで待つのだった。


 私はポーカーフェイスを保とうとするけれど、手が微かに震えるのを感じる。

 側近が書類を差し出す。読むべき条項、検討すべき項目が山ほどある。

 頭の中で計算が始まる。資金繰り、国力回復の時間、各国(特にガルバン帝国)の動向、そして国民の不満をどう抑えるか。


 キャルロッテが続ける。彼の要求は簡明だが重い。

「早期に終戦となったことは幸いです。条件の提示に移りましょう」


 言葉は簡潔だが、内包する重みは鉛のようだ。私はおずおずと、しかし誠実に答えた。


「こちらもできる限り協力します。国際条約に基づく措置は速やかにとります――ただし、国家としての存続を保つための配慮もご理解ください」


 会議は淡々と進む。だが一度ひびが入った国家の体は、迅速に修復できるものではない。

 何年前かに失った信用を取り戻すには、時間と賢さがいる。


 会談の合間、ふと王の膝の猫がこちらをちらりと見る。視線が合う。

 ──その猫は、たぶん私の動揺など気にも留めていない。

 実に腹立たしいほど平和そうな顔をしている。


 私は胸中で小さく笑ってしまった。皮肉なことに、あの小さな毛玉の存在が、どうしようもなく救いにも感じられる。

「話を詰めましょう」

 私は肩を落としつつも心を引き締めて言った。

 勝者と敗者の対話はいつだって冷徹だ。

 だが、ここで全てを失ってはならない。

 ミシディアの未来を守るため、まだ私にできる仕事がある。

 ──それが、大統領という仕事なのだ。

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