比留間明夫05
光がすうっと薄れていく。
気がつくと、ぼくは豪華な部屋に立っていた。
赤い絨毯に金ぴかの装飾。
ゲームのチュートリアルでしか見たことない「いかにも王宮」な部屋だ。
いや、ひとりじゃない。
腕の中には、いつの間にか茶トラ猫――コヨミがいた。
「……やばいよな。ぼく、これから死ぬしかない運命なんだよな」
「大丈夫にゃん」
……ん?
誰、今しゃべったの?
いやいや、まさか。
「コヨミ、おまえ、今しゃべった?」
「そうにゃん」
出た。にゃん。
間違いない、この声はコヨミだ。
「え、君、人語しゃべれるの?」
「明夫だけに通じるにゃん。しゃべってるんじゃなくて"直で会話"にゃん」
「テレパシーってことか」
「簡単に言えばそうにゃん」
そういえば、女神がチートを猫に渡してたっけ。
アカシックレコード――なんでも知ってる世界記憶。
……あれ?ぼくにはゼロを十倍する能力しかくれなかったのに。
「じゃあ、君の能力って?」
「すべての質問に答えられるにゃん」
――完全にChatGPTじゃん。
いや、猫だからキャットGPTか。
「じゃあ、さっそく質問。ぼくはこのまま処刑される運命なんだけど、どうすればいい?」
「簡単にゃん。ぜんぶ無しにするにゃん。
言われるまま処刑されても国民は救われないにゃん。
だから悪あがきするしかないにゃん」
「悪あがき……なるほど。よし、全力でジタバタしてやるか。
手伝ってくれるよな?」
ぼくはコヨミの頭をなでる。
コヨミは目を細めて、まるで"もちろん"と言うようにのどを鳴らした。
「キャルロッテ王、会議の時間です」
――ノックと共に外から声がした。
記憶によれば、数日後には国の併合に関する会議。
側近たちとの条件をつめる会議が連日行われる。
つまり……いきなり人生のチュートリアルすっ飛ばしてラスボス会議からスタートってことか。
「入れ」
声が震えてないことを祈りながら、ぼくは返事をした。




