表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王様とおっさん~異世界はキャットGPTとともに~  作者: PYON
第四章 ミシディア共和国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/105

ニャール水軍大将ハチノス05

 俺たちはニャルロッテ王に乗ることにした。

 短絡的に金と地位を選ぶこともできた。

 王を差し出してミシディアに寝返る──それだって一時の保身にはなるだろう。

 しかし、あの時の俺は賭けよりも「生き残るための最善」を選んだ。

 見切りの眼は利くつもりだ。あの貧相な初老の男の目に嘘はない。隣りの大男――ダオウルフというやつもただ者じゃない。

 奴が王に忠誠を誓っているのを見て、裏切ればまず自分の命がないことも理解した。

 後で聞いたが、ダオウルフは騎馬民族の族長で、ビリジアンテの迫害を受けた一族を王が救ったらしい。

 暴れっぷりと忠誠心を兼ね備えた奴だ。なかなかに頼もしい。


 王は祝宴でもてなしてくれた。出てきた酒肴は見たこともない保存術で次々と出てくる。

 あれはストレージと呼ぶらしい。

 部下たちも皆、腹を満たし笑みを取り戻す。

 王のもてなしは豪奢というより、懐の深さと余裕を感じさせた。

 酒の席で話された計画は明快だった。要点はこうだ――港を死守するな、港を捨てろ。

 大艦隊を正面から迎え撃つな。小さな港町に誘い込み、入り口を塞いで動きを封じる。

 さらに、与える十隻の鋼鉄の船には秘密兵器「魚雷」が積まれている。

 それで船の舷側を破って沈ませ、港を通行不能にする。戦法はシンプルで残酷だが、理にかなっている。


 実際にやってみると、面白いほど計画どおりに進んだ。

 俺たちは港の出口近くで待ち構え、狙いをつけて魚雷を放った。

 魚雷は水中から潜り込み、船底に穴を開ける。

 木造の船は浸水して沈み、沈んだ船体が障害物となって船列を詰まらせる。

 千隻を一斉に沈める必要はない。要所要所を潰せば港は機能喪失する。

 中小の船が邪魔になり、大型の艦も身動きが取れなくなる。

 海は次第にゴーストタウンのように沈黙していった。


 通信が入る。王からの報告だ。

 今どき珍しい電波の器具であっという間にやり取りができる。

 トランシーバーというらしい。

 俺は波止場の暗がりで無線機に耳を当て、王の声を聞いた。

 短い言葉だが、くっきりと伝わってくる。

「そこまでよし。次行け」

 指示は的確で、無駄がない。

 俺は部下に向かって拳を突き上げると、皆がそれに応じて動き出した。


 やってみて分かったことがある。俺たち海賊は「海の戦い方」には長けているが、現代兵器と魔導の組合せの前では無力だった。

 しかし、王はその欠点を逆手に取った。

 小回りの効く我々の船に「見えない」攻撃手段を与え、形勢をひっくり返したのだ。

 俺は妙な誇らしさを覚えた。海賊として、仲間のために一役買えたという感触だ。

 家族を守るために選んだ賭けは、まだ間違いではないらしい。


 宴の席で見せたあの男の笑みは、ただの愛想笑いではない。

 あれは人を巻き込み、信頼を引き出す力だ。俺は自分の目を信じた。

 ダオウルフは酒に酔って大声で吠え、部下たちは笑いながら杯を重ねた。

 だが心の奥では皆、緊張している。これから来るであろう大きな波を知っているからだ。

 俺たちは板一枚の上で踊っているのだと、誰もが分かっている。


「次の命令は?」

 俺は無線を握りしめて言った。王の返事は短く、だが確信に満ちていた。

「港を封鎖したら、あとは俺の陸軍が仕事をする。君たちは逃げる敵を海から押さえてください」

 静かな合図だった。俺は深呼吸して海風を吸い込み、仲間たちに動けと合図した。

 それは俺たちの得意な海賊の仕事だ。

 神経を研ぎ澄ませ、潮目を読み、次の一手を打つ。これが海賊のやり方だ。

 鼠一匹にがさないぜ。

 俺は舵を握り直し、黒い海面へと船を進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ