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王様とおっさん~異世界はキャットGPTとともに~  作者: PYON
第四章 ミシディア共和国

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ミシディア共和国海軍副司令官ヒルヴァ02

 なんだこれは――息が詰まるような違和感が甲板を覆う。

 砲撃がないのに、目の前で船が沈んでいく。

 まさかの事態だ。俺は冷静を装うが、胸の奥で何かがざわつくのを抑えられなかった。


「副司令官、左舷三番、船底に大穴が開いています! 浸水が止まりません!」

 若い士官が叫ぶ。声が震えている。

 甲板上の兵士たちの顔も一瞬でこわばった。

 砲弾を受けて沈むのならまだ筋は通る。だが今回の穴は――下から来ている。

 水柱はその証拠だ。水面の震え方、泡の立ち方、砲撃とは明らかに違う。

 潜航している何かが、我々の船底を狙っている。


「何だと……水中からの攻撃だと? 潜航艇か?」

 頭の中で選択肢が並ぶ。だがニャールにそんな技術が? 

 海賊寄せ集めの小国に。理屈が合わない。

 だが現実は目の前で起きている。船体が傾き、甲板に振動が伝わる。甲板下から鋭い金属音が聞こえた気がした。


「全艦、緊急操舵! 船体の被害状況を報告しろ! 損傷修理班、すぐに応急処置を!」

 わたしは指示を出す。命令は吐き出すように短く。

 だが命令が出ても、時間が味方をしてくれるとは限らない。

 浸水は進み、甲板の一部が油と海水で滑り始めた。

 兵は慌てふためくことしかできない。

 原因が特定できないのだ。


「副司令官、左舷側の艦が急速に沈んでいます! 乗員が海へ落ちています!」

 報告が続く。向こうに見える偵察船は、いつの間にかこちらの艦を脅かす"何か"を放っていた。

 小さな船が動き回っている。

 あきらかになにかをしているのだ。


 とにかくあの小さな船をなんとかしないとならない。

 こちらも大砲を詰んでいる。それであの小型船団を狙う。

 しかし、動きが速すぎて、命中することはない。

 あのスピード、船としてありえない。

 動力のある戦艦もあるが、船というものは基本的に風を使って推進するものだ。

 それが、風は関係なしに自由に動いている。

 わたしたちの船は、やつらの攻撃をさけることはできない。

 まるで鯱に囲まれたクジラだ。

 図体が大きいだけでなにもできない。


「艦隊、退避! 主力は後退して間合いを取り、対潜手段を整えよ! 残存艦は救助に回れ!」

 なんとかしないとならない。

 口から出た命令は、素直な撤退の合図だった。

 だが撤退は敗北の言葉ではない。死体の山を作るより、再編成して反撃する方が賢い。

 

 甲板上を駆け抜ける将兵の足音、海に落ちて叫ぶ男の声。油と塗料の匂いが鼻をつく。

 視界の端で、敵の小型線がまた水柱を上げた。

 そのとたん、海面に白い筋が生まれ、こちらにむかってくる。

 まるで、巨大魚がこちらにつっこんでくるような感じだ。

 もしかして、水中を進む砲なのか。

 次はどの艦の腹に穴を開けるつもりか。

 わかっていてもなにもできない。


「ニャール王国め……」

 小さく呟いた。艦隊の統制を取り戻せ。沈んだ船の乗員を救え。

 そう思うが、やれることは少ない。

 

 私は艦橋で旗信号と口令を組み合わせ、逆転のための小さな施策を次々と下した。

 伝令を飛ばし、機動力のある小舟を集めさせる。

 しかし、もう遅きに失した。

 沈みゆく大型船にじゃまされて、思うように動けない。


 背後で、遠くの波間がまた爆ぜる。

 こっちに向かってくる水中の砲。

 そして、大きな爆発音、水柱があがり、そこにある船が震え傾くのだった。

 

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