表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

比留間明夫03

「あの~、入れ替わるのはいいんですけど。

 チートなんかはいただけるんでしょうか?」

 ぼくは勇気を振り絞って質問する。

 だって、これから行くのは剣と魔法の中世ファンタジーだ。

 運動部経験なし、武道も嗜みなし。

 履歴書に書ける資格といえば英検3級。

 そんなモブ性能で放り出されたら、死亡フラグしか見えない。


「ああ、まあ、今持ってる能力は転移先で十倍くらいになるわ。

 それと、お互いの記憶を交換してあげる。

 言葉とか困らないようにね。それで我慢しなさい」

 女神はめんどくさそうに答える。

 猫を愛でることは止まらない。


 いやいやいや、俺は最初からゼロなんだって。

 ゼロを十倍してもゼロのまま。

 「十倍の無能」が誕生するだけなんですけど!?


「でも、猫ちゃんにはチートをあげる。

 絶対に死なないようにね。

 すべてを知る力――アカシックレコードでいいかな」

 女神はそう言って、猫の頭にキラキラした手をかざす。


 対応の差、歴然。

 猫にはレジェンド級チート。

 ぼくには、十倍の無能。

 ……うん、まあ、猫かわいいからしょうがないよね。

 ぼく、おっさんだし。


「それじゃあ、キャルロッテ王はこっちの扉。比留間はこっちの扉」

 目の前にドアが現れる。まるでどこでもドアだ。


「本当に、わが国民は救われるのだろうな」

 キャルロッテ王が女神に問う。


「比留間ががんばったらね。

 猫ちゃんがついてるから、大丈夫だと思うけど」


「わかった。任せる。

 どうせ、わたしの力ではどうにもできないのだから。

 少しでも可能性があるのなら、それでいい」


 ――大丈夫なのかな、俺で。

 自信ゼロなんですけど。


「比留間、たのむ。

 わたしに代わって国を、国民を救ってくれ」

 キャルロッテ王は、ぼくに深々と頭を下げた。


 そんな真剣に頼まれても……。

 でも、やるしかないんだよな。


「できるだけ、やってみます」

 ぼくは会釈を返す。


 キャルロッテ王は静かにドアを開き、その中へ消えていった。

 向こうのコヨミも、ちょこんと王のあとを追って滑り込む。


 そして、ぼくの番だ。

 目の前のドアノブに手をかける。


 ――いよいよ異世界生活スタート。

 俺に用意されたのはチート能力じゃなくて、猫チート。

 ……これ、勝ちフラグなのか死亡フラグなのか。


 考える間もなく、扉の向こうへと足を踏み出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ