比留間明夫32
『我がミシディア共和国はニャール王国に対して宣戦を布告する――
国際法にのっとり契約を破棄し、盟友ビリジアンテ連邦との戦争を引き起こし、国際秩序に混乱をもたらした独裁者。
ニャルロッテを成敗するため、戦力をもってニャール王国に進軍する。
これは国際法に基づく正義の執行である』
……っていう宣戦布告文を、ぼくは読み上げながら心の中でため息をついた。
勝手なことを言ってくれる。
国際法なんて、結局は大国が自分たちの都合に合わせて作ったものじゃないか。
ビリジアンテとの戦争だって、うちが防衛しただけなのに。
戦争なんて、ほんとはやりたくない。
でも、正式に宣戦布告された以上、迎え撃つしかない。
幹部たちを集め、宣戦布告の内容を伝える。
同時に、敵の動きについての情報が次々と入ってくる。
もちろん、キャットGPTさんのおかげだ。
こっちが何もしてなくても、世界の動きを一瞬で把握してくれる。頼もしい限りだ。
敵はまず西の港に軍艦を集結させているらしい。
あそこにはうちの海軍基地がある。
大型兵器を運ぶのに陸路は現実的じゃないから、船に積み込んできたらしい。
主砲の射程は200メートルほど。
港を押さえ、そこから王都まで攻め込む作戦だろう。
しかも船には飛空船まで積んでいる。簡易空母ってやつだ。
ただ、飛空船といっても元の世界の航空技術とは違う。
「飛空石」という空に浮く石を使った、要するに気球みたいなものだ。
そこに砲や爆弾を積んで、空から重要施設を破壊するつもりらしい。
国境付近も陸軍で固めている。万全の布陣、ってやつだ。
でも、相手の手が分かっていれば潰すのは簡単だ。
港にはマルス将軍率いる新兵器部隊、国境にはダオウルフ将軍の騎馬軍団と戦車を配置した。
もちろん、ぼく自身も新兵器軍に同行するつもりだ。
この戦争の肝は海戦にある。
宰相たちは「王が前線に出るなんて」と反対するけど、キャットGPTさんで戦況を読みながら柔軟に作戦を組むには、ぼくが現場にいるしかない。
最初の作戦で勝てる可能性は高いけど、絶対はない。
特に新兵器は実戦経験がないから、不測の事態もありうる。
そのときにキャットGPTさんが必要だし、それを使えるのはぼくだけだからね。
それとダオウルフさんには、「あくまで防衛が目的」だと何度も念押しした。
あの人、放っておくと攻め込みたがるから、少し押さえるくらいがちょうどいい。
ぼくはコヨミを抱きかかえ、海軍基地へ向かうのだった。




