比留間明夫27
ぼくはアバドン議長と握手をした。
……うん、なんとか交渉はうまくいったらしい。
やっぱりキャットGPTさまさまだ。
正直ぼくは横でうんうん頷いてただけだし、貢献度で言えば観客と同じレベル。
議長も大変だよなあ。
これから国に帰って「すみません、戦争に負けました」って説明するんだから。
国会答弁でどうやって言い訳するんだろう。でもたぶん大丈夫じゃないかな。
今のアバドン議長は国民のことを第一に考えているみたいだし。
まあでも、そんなに無茶な条件は出してないし、ビリジアンテ連邦に戦争を続ける余力は残ってない。
キャットGPTも「勝率100%にゃ」ってドヤ顔で言ってたし、大丈夫だろう。
とりあえず、ひと息つけるかな。こっちに来てから働きっぱなしだったからね。
腕の中のコヨミが「ニャー」と鳴く。はいはい、君も休みたいよね。ぼくもだよ。
……ただ、のんびりしてるわけにもいかない。
他の二国が「戦後処理ビジネス」に首を突っ込んでくるのは目に見えてる
。そこでマルス将軍とギランジル宰相を召集して、今後の方針をざっくり指示することにした。
まず軍の再整備。ギオルグ族も加えて、ダオウルフさんを副将軍に据える。これで戦力アップは確定。
次に経済。ギランジル宰相にはとにかく「食料をなんとかせよ」とお願いした。
腹が減っては戦はできないし、腹が減っては猫でもゆっくりできないだろう。
キャットGPTが品種改良したスーパートマト(やたら甘いけど皮が固い)とか、ギオルグ族の放牧を軌道に乗せる。
仕事が一段落して、ぼくは宮殿へ。ニャルロッテ王が暮らしていたところだ。
表の豪華絢爛さと違って、奥へ行くほど質素になるのは面白い。
要するに「お客様用の舞台セット」だったんだろう。
裏側は意外と普通。いやまあ、部屋数とか広さは「普通の家」基準からするとぜんぜん普通じゃないけど。
王妃はひとり。びっくりするくらい綺麗な人で、しかも上品。
子どもは三人。男の子二人に女の子がひとり。みんな揃って玄関まで迎えに来てくれた。
「父上、この度はお疲れさまでした!」
「ビリジアンテを退けるなんて、やっぱり父上はすごいです!」
――え、なにこれ。めっちゃ尊敬されてる。
キラキラした目で見られてる。
向こうの世界じゃ、家族にすら「空気以下の存在」扱いされてたのに。
ぼく、感動で泣いていい?
「みんなを断頭台に送らなくて本当によかった……」
思わず口から出てしまった。
本来なら妻も子どももまとめて処刑コースだったんだ。
「父上!」
三人同時に飛びついてきた。王妃も微笑んでいる。
ぼくは大きく両腕を広げて、家族全員をぎゅっと抱きしめた。
……あれ? なんか今、人生でいちばん「父親してる」気がする。
こんなの向こうの世界でなかったよな。




