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王様とおっさん~異世界はキャットGPTとともに~  作者: PYON
第三章 ビリジアンテ連邦国

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ビリジアンテ連邦国 アバドン議長10

 キャルロッテは終戦の条件を述べる。

 それは完全にビリジアンテの敗北を認めるものだった。


「待ってくれ!」

 わたしは我ながら情けない声を上げてしまった。

 声帯を震わせて押し返そうとするが、内心は焦燥に満ちている。

 目の前の男――キャルロッテは静かにこちらを見つめ、膝の上の猫は知らん顔で毛づくろいを続けている。

 あの無邪気さが、いっそう腹立たしい。

 この会談にはビリジアンテの将来がかかっているのだ。

 いや、舐めていたのはわたしの方か。

 本当であれば、この程度の条件は想定しておくべきだったのだ。

 それなのに、まだ相手が自分たちより下の存在として扱っていたのだ。


「何かありますか。この程度の条件普通だと思いますが」

 ゆっくりとわたしを見て言葉を紡ぐキャルロッテ。


「お前が要求する領土の割譲と民族の独立――我が国の北部と南部を切り分けるなど、議会も国民も承服しない。

 財政も軍備も耐えられないだろう。

 少なくとも段階的措置でなければ、私の首が飛ぶだけでは済まない」

 言葉が詰まり、唇が震える。だが、その震えは虚勢の産物だ。心の底では既に崩れ始めている。


 キャルロッテは淡々と返す。

「そちらの内情は分かります。議会も群衆もあなたの首を求めるでしょう。

 しかし、そこはなんとか手助けしましょう」


 その一言が胸に刺さる。個人の安全保障――つまり、私の地位や命を保証する何らかの約束だ。

 ここまで読み切られているのか。あの穏やかな物腰の奥に、政治家として特別な手腕がある。私は咄嗟に頭を振る。


「しかし、それはやはり受け入れられない。

 国家の主権を傷つけられるような保障など、簡単に承認できない。

 だが、こちらも死活問題だ。妥協案を出す。

 まずは戦闘停止の即時実施、続いて国際監視下での段階的撤兵。

 そして、あなたが要求するような民族的処遇は、国際会議で協議のうえ、段階的に実施する。

 ――これなら議会にも説明がつく」


 私の言葉は、震えながらも論理的だ。目の前の男は一拍だけ考え、口元に薄い笑みを浮かべる。


「段階的にもなるでしょう。しかしこれは急いだほうがいい。

 今申し上げたことは、領土の割譲ではない返還です。

 あなた方が理不尽に支配してきた民の解放です。

 早ければ早いほど効果があるのです。

 そうすれば、サタールもウラールも内政を整えるために戦争は行わないでしょう。

 もちろんギオルグは我々の国の一部となりますが」


 私は息をつく。ここで引けば、私の支配力は瓦解するだろう。

 議会や党内の敵対勢力は即座に動くだろう。目の前の時間が、私を追い詰める。


 テント内の空気が張り詰める。遠くで馬の嘶きが一度、はっきり聞こえたように思える。

 キャルロッテは猫の頭をそっと撫で、静かに言う。


「あなたが誠実に、速やかに行動するならば、我々も誠実に応じます。

 さもなければ、ここでの『和平』は紙切れに過ぎません。

 国民の命と尊厳は、あなたが抱える政治的コストより重いのではありませんか?」


 その言葉に、私は言い逃れの余地がなくなっていることを悟る。

 胸の中で何かが折れ、同時に冷たい覚悟が生まれる。

 外の喧騒は、もう遥か遠くのもののようだ。

 そういえば、わたしも政治的理想にまい進した時代があった。

 しかし、それは権力にしがみつく上層部の人間につぶされた。

 正義を実現するには偉くなるしかない。

 そう思ったわたしは権力闘争に明け暮れた。

 そうだ、国は国民のためにあるのだ。

 私の世界は、この小さなテントの中の会話だけで変化していく。


 深く息を吸い、私は答えた。声は低く、しかし確定的だった。

「分かった。条件を受け入れるように動こう。

 あとは賠償金のことだが、それはこちらに決めさせていただきたい」


 あの猫が一度だけ私を見上げ、ニャーと短く鳴いたように感じた。

 それにキャルロッテ王が耳を傾ける。

 戦場の運命は、ここでまた一つ動いたのだった。

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