比留間明夫22
「ギオルグ族、族長ダオウルフ三世!
敵の大将アンドレアスを捕らえた!」
ダオウルフさんが血のついた槍を掲げて叫ぶ。
その声が戦場に響くと、周囲の喧騒が一瞬止んだように感じられた。
大将って、一番偉い人のことだったよな。
これで、ようやく戦争を終わらせられるかもしれない──。
ぼくは胸の奥でつぶやき、進軍を止めるように命じる。
敵軍はもはや戦意を失い、ただ逃げ惑っているだけだ。
ここで追い討ちをかける必要はない。
トランシーバー越しに、ぼくはダオウルフさんにも伝える。
「敵軍は撤退させてやってほしい。深追いはしないでくれ」
これは防衛戦争だ。
領土を奪うためでも、奴隷や巨額の賠償金を求めるためでもない。
ぼくたちはただ、自分たちの国を守りたかっただけなのだ。
だが、戦車を降りて見渡す戦場は、予想以上に酷かった。
こちらの死傷者は少ないが、ビリジアンテの兵士たちは無惨に散らばっている。
砲で吹き飛ばした兵、戦車で踏みつぶした兵……。
そのすべてに、ぼく自身の命令が関わっている。
この光景を前にしても、不思議とぼくは取り乱さなかった。
これはぼくの人間性なのか、それとも「ビジネス」と割り切ることで力を発揮しているだけなのか、自分でもわからない。
ただ一つ確かなのは、この戦場の責任は自分が負わなければならないということだ。
断頭台に登ることではなく、犠牲を最小限にしてこの戦争を最短で終わらせること。
それが、ぼくに課せられた責任だ。
遠くから伝令が駆けてくる。
ガルバン帝国とミシディア共和国から早くも抗議が届いているという。
戦争を仕掛けたのはニャールじゃないのに……そんな理屈は通用しない。
彼らにとって重要なのは利だけだ。
ビリジアンテがどうなろうと知ったことではない。
ただ、介入の機会に群がっているだけだ。
「さて、どうするか……」
腕の中のキャットGPTに、思わずつぶやく。
「質問が抽象的にゃん。もっと具体的に言うにゃん」
コヨミが小さく鳴き、ぼくを見上げる。
そうだな……向こうの世界のAIも、質問の仕方次第で力を発揮するんだった。
キャットGPTも同じだ。
「ああ、頼りにしているよ」
ぼくはコヨミの頭をやさしく撫でる。
コヨミは目を細め、ゴロゴロと心地よい音を立てた。




