ビリジアンテ連邦国 アンドレアス大将04
自走する鉄の馬車――戦車だ。
名づける間もなく、その砲撃が次々と盾の列をえぐり取っていった。
回転する砲塔から吐き出される弾丸は、先ほどの携行筒とは次元が違う破壊力を持っている。
命中した箇所は瞬時に吹き飛び、補充が追いつかない。
兵は混乱し、列は崩れ、もはや「盾の壁」と呼べるものではなくなっていた。
胸の奥が冷たくなる。数で押しつぶす戦法――それが我が国の常套手段だった。
大量の兵で手を呑み込む。
ベルナール王と戦った時も、その方法で勝ちを得てきた。
だが今、目の前で過去の常識が音を立てて崩れていく。
数の優位が無力化されるその光景に、焦燥と怒りが渦巻く。
選択肢は一つしかない。
消耗を最小にして砦を落とすには、さらなる人海戦術以外に術がない。
農奴たちを前面に立て、肉の壁として突入させる。
彼らは我々と違って替えが利く。
命を賭す層を盾にして、城壁をこじ開ける――冷血な策だが、戦は容赦を知らぬ。
ギオルグ族が妙に張り切っているというなら、彼らを最前線に出すのも好機だ。
あの戦車も百人で囲めば無力化できるはずだ。
投入を命じる。農奴軍を前に進め、我が正面陣は一時的に退いて様子を見る。
二百メートル──後退した位置からでも、戦車の砲撃は届いている。
飛び散る土煙、折れる盾、遠くでうずくまる者たちの姿。戦況は予想より厳しい。
その時、報告が入り、顔を強張らせる。
「ギオルグ軍、ダオウルフ殿が到着いたしました」
予想より早い。指令テントを飛び出すと、眼前には筋肉質の巨漢。
昔の戦国時代の武将をほうふつとさせる立派な武者が馬にまたがっていた。
族長にだけいい武具やいい馬を集めたのだろう。
あとはすきや鍬で戦う農民。戦車に踏みつぶされるのが役目。
彼はゆっくりとこっちに向かってくる。
それにしても大きな馬だ。
よく、こんな立派な馬をそろえたものだ。
「ダオウルフ殿、ご苦労であった」
とりあえず礼を言う。が、なぜかいやな汗が頬を伝う。
もしかして、このダオウルフとかいう族長にびびっているのか。
確かに王の貫禄を持っているが、わたしのほうが上官だ。
「アンドレアス将軍、それで俺はどうすればいい?」
「では、あの鉄の戦車を壊せ」
無茶な命令だ。たぶん、こいつは無理だとか言い出すのだろう。
「御意」
ダオウルフは頷く。
あの戦車と戦おうというのか。こいつは怖くないのか。
「ではたのむ。この戦争はおまえたちにかかっている。
もし、活躍をすれば、おまえたちの待遇の改善も考えよう」
いうだけならタダだ。もしおまえらの活躍でこの戦局がひっくり返ったら、中央は今以上にギオルグ族を恐れるだろう。
そうなれば、今以上の迫害をすることになる。
わたしの考えを知らずに、ダオウルフはわたしに背を向け駆けていくのだった。




