表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王様とおっさん~異世界はキャットGPTとともに~  作者: PYON
第三章 ビリジアンテ連邦国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/103

ビリジアンテ連邦国 アンドレアス大将03

 次々と報告が入る。準備完了。

 各師団、配置につき、補給線は整備済み。

 すべてが順調。いまこそ開戦の時──そう思った。


 だが、奇妙な静けさもある。

 向こうに目立った前進はない。あの小国が、ほんの一年でここまで変わるとは思えぬ。

 1年前は三国への無条件降伏を口にした国だ。

 短期で再起できるとは考えにくい。いや、彼らは諦めているのか。

 いや、油断は禁物だ。用心深く、私はチェックを重ねる。


 盾の壁は隙間なく並んでいる。報告通りだ。

 農奴兵は概ね予定どおり配置されている。

 特にギオルグ族が気合を入れているという。馬を用意し、訓練も始めているらしい。

 愚かしい。こちらにとっては、奴らがどれほど張り切ろうと同じ。

 彼らを農奴から軍への昇格はない。だが夢をみているのだろう。


 開戦を命じる。前線は前進し、弓兵と魔術師が後方支援を開始する。

 矢の雨が上がり、魔法陣が空に渦巻く。

 届かぬ距離からの牽制で、盾の壁は前へ前へと詰める。

 いずれ届くところまで前線は進む。そうなれば、向こうに手はない。

 無言の歯車が噛み合う。これで砦を押し切れば、戦は終わる──そう確信した瞬間だった。


 城壁の上に、異様なものが現れた。

 十名ほどの兵が、長い筒を肩に載せている。

 共和国でも見たことがない装備だ。筒は火を吐き、次の瞬間、盾の列が黒煙とともに吹き飛んだ。

 最初は一箇所、だが二発、三発と続くごとに状況が変わる。

 あれが"銃"なのか。矢や魔法とは比べものにならぬ射程と速度と貫通力だ。盾をまとっていても防げぬ。


 即座に盾の壁の補充は行われる。しかし、盾が無くなる速度は補充の速度を上回る。

 後方で魔術師と弓兵が攻撃しても、盾の隙間を突かれている現実は変わらない。

 いままでの戦術が通じない。数の暴力で押し切れるはずの相手が、目の前で違うカタチの"破壊"を見せつけている。


 「全線、突撃だ。人数で押し切れ!」


 理性的な判断が一瞬欲望に飲まれる。ここで数で押し切ればいい──本能がそう囁く。

 これがビリジアンテ軍の戦い方だ。部下たちはうなずき、列は動き出す。

 足並みは揃っている。だがその時、城門が音を立てて開いた。

 降伏か、あるいは策か──視線を向けると、大きな筒を搭載した鉄の車両が走り出してきた。


 馬は曳かれていない。押されてもいない。鉄の戦車がこちらへ滑り出す――としか表現できない動きだ。

 車体が止まり、砲がこちらを向く。発射。

 着弾した瞬間、直径十メートルほどの地面が裂け、盾の列が一瞬で消し飛んだ。

 次の砲が回転して照準を合わせ、また火を吹く。

 連射だ。あの小さな筒とは次元が違う連続破壊力。


 兵士たちの表情が変わる。誇り高く叫ぶ者の声が、次々に途切れていく。

 補充も追いつかない。私の胸に冷たい汗が落ちる音がした。

 わたしは恐怖を感じているのか。戦術は一瞬で組み替えられねばならない。だが、時間はない。


 これまでの計算が崩れた。火力と機動、そして抑止の常識が覆された。

 数で押せるという自信が、目の前で瓦解していく。

 私の頭の中で、作戦の選択肢が一つずつ赤く点滅する。

 重装甲部隊の投入、弓と魔術師の集中砲火――どれも今は使えない。

 砲弾は容赦なく盾を排し続け、鉄の車両は私の目の前で次々と防衛線を吹き飛ばしていた。

 驚愕と焦燥が交互に胸を突く。これが、技術の差というものか。数字の上の優位が、こんなにもはかなく崩れるとは思わなかった。


「全軍、緊急後退! 陣形を立て直せ!」

 命令は震えていたかもしれない。だが、震えは部下に伝播する。

 統率が乱れるのを私は耐えきれなかった。戦場は静かな恐怖に満ちている。

 眼前の鉄の馬車が、私の"当然"を打ち砕いていく――そして、その音だけが、低く、長く残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ