比留間明夫17
「族長がご案内するようにとおっしゃっています」
門番の男が戻ってきた。
どうやら、ぼくのハッタリは成功したらしい。
案内されてギオルグ族のテントへ向かう。
歩きながら考える――ビリジアンテ連邦って、本当にエグい。
ギオルグ族は本来、誇り高い遊牧民。馬も家畜も扱いに長けて、草原の王者みたいな存在だった。
その昔、ダオウルフ一世ってカリスマが現れて、周りの国々を征服しまくった。
つまり、ビリジアンテ連邦の土台を作ったのは彼らだったわけだ。
歴史の教科書に出てきそうなチンギス・ハーン枠だよね。
……なのに、今では農奴扱い。
中央の連中にとっては「強すぎて怖いから、力を与えたら面倒だ」ってことなんだろう。
だから、徹底的に押さえ込まれ、畑を耕す日々。
戦闘力が高いのに、まるで宝の持ち腐れ。
で、今回突然の「ギオルグ族も戦場に出せ」って話だ。
もちろん意図は丸わかり。彼らを前線に並べて、肉の壁にするつもりだ。
やり口が汚い。ブラック企業の「とりあえず新人を営業に放り込め。使い潰しても替えはきく」レベルで雑だ。
本当なら敵として切り捨ててもいいのかもしれない。
でも……救いたいと思った。
だって、このままじゃ、もしニャールが負けたら、明日はわが身だ。
その未来はごめんだ。
テントに入ると、中央にドーンと構えている筋肉質の大男。
彼がダオウルフ三世か。
うん、見ただけでわかる。強そう。しかもオーラがある。
マルス将軍と同じくらい強いと思う。
ぼくは丁寧に礼をして挨拶した。
最初は怪訝そうな顔をされたけど、意外にも信用してくれたらしい。
席を勧め、茶まで出してもてなしてくれる。
――この人、正直者だ。
駆け引きばかりのビリジアンテとは正反対。
人事部で培った「人を見る目」が告げている。
この人とは手を結んで大丈夫だ。
やっぱりビジネススキル最強じゃん、俺。
「それで、手を結ぶとは?」
ダオウルフさんが切り出した。
声の調子からして、悪くない反応。乗り気と見ていい。
ぼくはギオルグ族に仲間になってほしいことを伝える。
もちろん、ぼくの交渉術を駆使してだ。
なんとかわかってくれたみたいだ。
そして、ぼくは武器や馬を供与することを約束する。
「それで、俺たちは何をすればいい」
ダオウルフさんがぼくに問う。
話は核心に入ってきている。
もう、大丈夫だ。ギオルグ族は協力してくれる。
「ええ、ビリジアンテ軍を後ろから攻めてほしいのです」
「それは難しい。やつらは我らに監視をつけるはずだ。」
「ギオルグ族は馬に乗れば最強でしょう?監視なんてどうにでもなりますよね」
「ふむ……そうだ。我らは騎馬民族だからな。監視ぐらい簡単に斬り捨ててやる」
――よし、だいぶ空気はいい感じ。
「……もうひとつ問題がある」
声をひそめたダオウルフさんが、さらに深刻そうな顔で話を切り出した。




