ビリジアンテ連邦国 アンドレアス大将01
俺はアンドレアス。ビリジアンテ連邦の大将だ。
我が国の正規軍は十の師団を擁する。師団ごとに将軍がおり、その統率を一つに束ねるのが俺の務めだ。
今回は議長アバドンの命で、国境へ向かっている。
作戦は至って単純明快――一気に潰す。
迷いは不要だ。戦とは速度と意思の勝負であり、ためらいは敵に隙を与える。
だから三個師団を正面に投入する。正面突破で決める。それだけが任務だ。
人海戦略はわたしの得意とするところだ。
議長からは、あの「銃」なる兵器の情報を受けている。小型で致命的、熟練者と同等の効果を持つという。
もしそれが本当なら、戦争のやり方は根底から変わる。
だが兵器一つで我が国の総力を覆すほど甘くはない。対策は練った。
だから出発は半年伸びたのだ――準備には時間が必要だ。
今回の核心は「鉄の壁」だ。いや、正確には『鉄の盾』を連結して進む陣形だ。
超大型の盾を並べ、鉄の壁で前進する。
盾がある間に後方から強力な魔術陣を展開し、弓矢と魔法で対峙する敵を遠距離で削る。
敵の射撃兵や奇襲を盾で防ぎ、接近を許さない。
近接戦は我らが制する。盾で進み、砲火で削る。これが基本戦術だ。
話によると銃というのは小型の兵器だ。
小型の兵器というのは威力に欠ける。
たぶん、盾を吹き飛ばす威力はないだろうという見立てだ。
そして、奴隷軍。冷酷だが現実的な兵力運用だ。
相手の隙が生じた瞬間、奴隷どもを突っ込ませる。
人の壁を作り、砦の損壊部に押し込む。
消耗品という言葉は残酷だが、戦場は残酷だ。補充は戦果で賄う。効率は命だ。
砦を落とせば、ニャール王国の前線は崩れる。
補給線が切れ、内外からの圧力で国家としての形は変わる。
帝国や共和国が反応して横やりを入れてくる前に、決める。
初手で形勢を決する――それが俺の狙いだ。速度こそ勝利の鍵だ。
あの「銃」だが、王国の工房で作れるのなら、我らに渡れば量産は可能だ。技術の流用は軍事史の常道だ。
手に入れた武器は我らのものとなる。
そうなればビリジアンテは戦場での主導権を一層握ることができる。故に少しくらいの犠牲を出してもこの戦に勝つことは価値がある。
重要なのは「やつらが崩れたあとの処理」だ。
王都を先に落とす――これが次のミッションだ。
都市の崩壊と指導層の失墜は、国家システムの崩壊を意味する。
正規軍が無傷で残れば、その後は圧倒的だ。
我が軍に敗北の要素は少ない。訓練、士気、補給、そして指揮系統。どれも整っている。だが慢心は禁物だ。
副官たちを集め、詳細を詰める。部隊配置、突入時刻、補給路の確保、偵察のタイミング、拘束対象――すべてを詰める。
戦線の隙を突かれぬよう、交互に列を整え、各師団に明確な任務を与える。旗を合わせる音が、行動の合図となる。
軍の宿営地で夜、帳が下りると静寂が訪れる。兵士たちは装備の手入れをし、明日の行軍のために眠る。
俺は月明かりの下で地図を広げ、指で進路をなぞる。心情など殊更に語る趣味はない。
だが一つ、忘れてはならない事がある。戦は単なる数字の勝負ではない
――指揮官の決断と兵の意思が合致した時、初めて意図した結果が出る。俺はその合致を作るのが仕事だ。
指揮所で、俺は部下に言い渡す。
「我が進軍は三か月後だ。だが怠るな。準備は細部に宿る。迅速に、正確に。士気は我らの剣だ」
兵の背中に灯る疲労と覚悟を見て、俺は短く頷いた。
進むべき道は一本だ。速度で潰し、冷静に処理する。
それがアンドレアスの戦い方だ。明日の太陽の下、戦場で我々が動き出す。




