比留間明夫11
「ぼくを強くすることはできるの?」
「できるにゃん」
「防御を強くすることはできるの?」
「簡単にゃん」
「動きのスピードを早くすることはできるの?」
「わけないにゃん」
昨日のキャットGPTとの会話だ。
ダメ元で頼んだら、コヨミはあっさりとぼくのアカシックレコードを書き換えてくれた。
世界のすべての存在はアカシックレコードに記録されている。
ぼくも例外ではない。
そこを書き換えれば、能力が上がる。
まるでゲームのセーブデータを改造するみたいなものだ。
――反則だよな、普通に考えて。
でも今回は仕方ない。
だって、改造しなきゃ断頭台一直線なんだから。
(ゲームでは絶対にやっちゃダメだぞ)
その結果、ぼくは怪力と身体硬化、そして超絶スピードを手に入れた。
大理石のテーブルを拳で割るくらい、もう朝飯前だ。
黒服の一人が斬りかかってきた。
剣を腕で受け止める。
本来なら腕が宙を舞っているはずだが、硬化のおかげでびくともしない。
逆に剣がバキリと折れ、切っ先が回転しながらベリアード大帝のほうへ飛んでいく。
護衛の一人が慌ててそれをはたき落とした。
その隙に首脳たちが出口に走る。
「やばっ」
ぼくは跳んだ。
足元が爆ぜるような勢いで加速し、次の瞬間には出口の前。
首脳たちの行く手をふさぐ。
「通してくれ。
今ならここでのことはなかったことにしてやる!」
ベリアード大帝が叫ぶ。
妥協案を持ちかけてきたが、そんなの信じられるわけがない。
だって、この状況そのものが、約束破りの結果なんだから。
「それは信じられないな」
ぼくは冷たく返す。
「大帝、わたしがやります」
ひとりの護衛が前に出る。
鋭い目つき、立ち姿の隙のなさ――これは只者じゃない。
「こいつの身のこなし、素人です。
ただ、力が強いだけ、速いだけなんでしょう」
ぐうの音も出ない正論。
たぶん、この人が本物の達人ってやつだ。
「まかせる。シオン親衛隊長。
できたら殺すな」
ベリアード大帝はわずかに安堵の色を浮かべて下がった。
緊張で空気が張り詰める。
そしてぼくの背中の猫が、のんきにゴロゴロと喉を鳴らすのだった。




