比留間明夫49
ぼくが乗っているロボットの胸には、なぜか場違いなくらい巨大なスピーカーが付いている。
コンサート会場か? いや、戦場だ。間違えるな俺。
キャットGPTさんの指示どおり、例のボタンを押す。
もちろん耳栓は装備済み。これを忘れたら終わりだ。
次の瞬間、スピーカーから地獄みたいな騒音が大放出された。
ガラスを爪で引っかく音、腹にドスンとくる重低音、
そして時々入る「無音」。
……いや、無音じゃなくて、きっと"人間には聞こえない音"なんだろう。
若者だけに聞こえる高周波とか、そういうやつ。
戦場で若者判定するな。
とにかく、あらゆる周波数の騒音を浴びせかけているらしい。
キャットGPTさん曰く、獣人は人間の数倍の聴覚を持つとのこと。
つまり、人間ですらストレスマックスのこの音をぶつけられたら……
獣人は悶絶する。
なるほど、科学って残酷だ。
ちなみにキャットGPTさん自身もこの音は苦手らしいので、
猫専用の耳栓をつけている。
なんというか……かわいい。
獣人が動けなくなれば、ダオウルフさんの武器が活きる。
あの偃月刀には風の魔法が仕込まれていて、
大きく振れば竜巻、小さく振ればかまいたち。
チート武器のフルコースだ。
案の定、ダオウルフさんはぼくらの狙い通りに魔導士へ突っ込んでくれた。
頭上の魔法陣はパリンと消えた。
――よし、これでひと安心。
「それじゃあ、戦争を終わらせるにゃん」
キャットGPTさんが、さらっと恐ろしいことを言い出した。
「どういうこと?」
「いまので、大規模魔法のディープラーニングが完了したにゃん」
「ちょっと待って。今の魔法、再現できちゃうわけ?」
「簡単にゃん。同じ魔法も使えるにゃん。
それどころか、もっと大きい魔法も使えるにゃん。
別の魔法に置き換えることもできるにゃん」
「え、それってつまり……相手を全滅させるレベルも?」
「そうにゃん。
戦争どころじゃなくなる威力にゃん」
はい出ました、世界滅亡コース。
たぶんキャットGPTさんの言ってる"もっと大きい魔法"って、
原爆級とかそういうやつだ。
確かに戦争は即終了するけど……
国ごと歴史に悪名残るのは確実だ。
「だめだ、コヨミ」
ぼくは初めてキャットGPTさんにハッキリ反対した。
だって、そんな終わらせ方……
ぼくのやり方じゃない。




