ニャール国副将軍ダオウルフ三世05
突然、背後から凄まじい音が鳴り響いた。
それも、金属同士をこすり合わせたような、耳に刺さるほど不快な音だ。
思わず体がびくつき、集中が途切れる。
しまった――まだ戦いの最中だ。
急いで前を見ると、敵の獣人オニキスがその場で蹲っていた。
どういうことだ?
そういえば、狼や虎などの獣は、人間の何倍もの聴覚を持つと聞く。
ならば、獣人であるオニキスには、この音は耐えられないほどの大音量だったのだろう。
ふと後ろを振り返る。
そこにはキャルロッテ王のゴーレムが立っていた。
――そうか。
王は獣人の弱点を把握していたのだ。
そして、その弱点を突いて「隙」を作り出した。
逃す理由はない。
王が作ってくれた貴重な好機だ。
わたしは一気に前へ駆け出す。
もはや邪魔する者はいない。
走りながら偃月刀を振り抜くと、刃から竜巻が巻き起こり、一直線に魔導士へ襲いかかる。
狙い通り、魔導士の身体は空へ弾き飛ばされた。
振り返ると、ゴーレムの上で展開されていた魔法陣は完全に消えていた。
――作戦成功。
わたしはキャルロッテ王へ通信を送る。
この勢いのまま敵軍へ突っ込むのも悪くない。
この偃月刀があれば、一万ほどの軍勢でも捌ける――そう思えるほどだ。
王からの返信を待ちながら、周囲を見る。
敵の魔王軍はすでに撤退を始めていた。
そして通信が入る。
「――あー、ダオウルフさん、聞こえてますか?」
「はい、キャルロッテ王。魔法の発動は阻止しました」
「ありがとうございます」
「ではこれより追撃に移ります。敵将の首を――」
「え、それはやめてください!
すぐに撤退を!
こちらで大規模魔法を発動しているところです。
そのままでは巻き込まれてしまいます。
至急、引き上げてください!
できるだけ早く!」
王の切迫した声が響く。
――次は、一体何をするつもりなのか。
わたしは空を仰ぐ。
そこには島のように巨大な魔法陣が広がっていた。




