魔王軍獣人オニキス02
ブライが吹き飛ばされる。
ダオウルフの武器には風の魔法が宿っているらしい。
偃月刀を一振りするだけで、小さな竜巻が生じる。
あんな武器、魔界では見たことがない。
人間はもうそんな域にまで達しているのか。
俺まで風圧でよろめかされそうになる。
メフィアスにあいつを近づけるわけにはいかない。
あと三分ほどか。
魔法の錬成状況を確認する。
魔法陣は五重まで積み上がっている。
もし集中が途切れれば最初からやり直しだ。
そこまでに費やした魔力もすべて無駄になる。
失敗すれば、今日はもう発動はできないだろう。
だが、俺も魔界でも指折りの戦士だ。
その程度の時間、ここで食い止めてみせる。
「次は俺だ。
この隊の隊長、オニキス。狼の獣人だ」
「私はダオウルフだ。悪いが、お前とゆっくりやり合っている暇はない。一瞬で終わらせる」
「魔法の発動を阻むつもりだろう。ならば全力で止めさせてもらう」
俺は剣を抜き放ち、一気に駆ける。
ダオウルフが偃月刀を大きく振り回すよりも速く、剣戟を浴びせる。
そう、これで奴は防御に徹するしかない。
さっきから見ていたが、風を起こすには偃月刀を振り切る必要がある。
その隙さえ与えなければいい。五分程度なら耐えきれるはずだ。
狙い通り、ダオウルフは俺の剣を受けるしかない。
俺は間髪入れず連撃を重ねる。
ダオウルフは防ぐので手一杯だ。――よし、時間は稼げる。
その時だった。轟音が俺たちを貫く。
何だ――!?
音のする方には、あのゴーレム。
耳の奥がキーンと痺れるような圧倒的な音だ。
そうだ。俺たち獣人は人間より感覚が鋭い。
とくに聴覚と嗅覚。
人間には耐えられる音でも、俺たちにとっては凶器になりうる。
それも、まるでガラスを引っかくような不快な金切り音――。
動きが止まる。体が強張って言うことを聞かない。
その隙を見逃すダオウルフではなかった。
偃月刀が大きく振り抜かれ、そこから生じた竜巻が一直線にメフィアスへと迫っていくのだった。




