ニャール国副将軍ダオウルフ三世04
ブライの大剣が砕け散った瞬間、改めてキャルロッテ王の武器の異質さを思い知らされる。
これほどの力を授けられた以上、わたしも役目を果たさねばならない──あの大規模魔法を止める、それが最優先だ。
ブライは折れた剣を放り捨て、低く構えた。
拳士の構え。巨体に似合わぬ軽やかさで、つま先で弾むように跳ねている。
偃月刀は長い間合いを誇るが、一度飛び込まれてしまえば、逆に振りが大きいぶん弱点になる。
奴はそこを狙っている。剣先さえ外せば決められる──そう踏んでいるのだろう。
ブライが左右に跳ね、揺さぶりをかける。
わたしはタイミングを見計らって突きを放つが、影のようにかわされる。
こちらも深追いはしない。即座に刃を引く。
それにしても……あの巨体でこの速度か。
そして視線の鋭さ──常人では追えぬ反応。
これがオーガという種族の本気なのだろう。
まるで獣だ。
ならば、こちらも手加減はできない。
本気の連撃を叩き込むが、それすらもひらりと紙一重でかわされる。
そして、わずかな隙に踏み込まれた。
わたしは盾をかざして追撃を殺し、距離を取る。
……やるな。
本来なら、もっとこの戦いを楽しみたいところだ。
わたしほどになると、こういう好敵手は滅多に巡り合えない。
キャルロッテ王ほどの体術ではない。
しかし、武器を捨て、互いに拳だけで勝負したなら、きっと最高の時間になっただろう。
拳法なら、わたしも相当の自信がある。
あのオーガとは、きっと良い勝負ができる──だが。
今は楽しむ時間ではない。
魔法を止めるために、確実に仕留める必要がある。
わたしは偃月刀を構え直した。
その瞬間、ブライが矢のように突っ込んでくる。
速い──だが、もはや見切った。
偃月刀を横に一閃。
刃が空を裂いた瞬間、周囲に風がうねり、つむじ風が巻き起こる。
そう、この偃月刀は風の魔力を宿している。
キャルロッテ王の手による、ただの武器ではない。
オリハルコンという素材は硬いだけでなく魔法を込めることができるのだ。
その風の刃はオーガをとらえる。
オーガはそのまま飛ばされるのだった。




