ニャール国副将軍ダオウルフ三世03
わたしは一気に魔王軍へと馬を飛ばした。
その進路を塞ぐように、ひときわ巨大な影──オーガが立ちはだかる。
鉄塊のような大剣を肩に担ぎ、こちらを待ち構えている。
斬馬刀。馬ごと叩き落とすための凶器だ。人間の騎兵を相手に散々使われてきた戦法だろう。
周囲の魔族たちも距離を取っている。
つまり、わたしたちが落馬した瞬間、一気に群れが襲いかかる算段だ。
キャルロッテ王から賜った大事な騎馬を、こんな連中に好き勝手にはさせない。
わたしは直前で馬から飛び降りる。
斬馬刀は騎馬には強くとも、人間相手では振りが鈍すぎて掴まえられない。
あの重さでは、わたしの剣戟にはついてこれない。
部下たちには馬上で待機させる。
斬馬刀を扱えるのは、あのオーガひとりだけ。
ならばまずは、わたしがそいつを斬る。
それから騎馬隊で魔王軍を薙ぎ払い、奥の魔導士を討つだけ──ただそれだけだ。
わたしは偃月刀を構え、オーガへまっすぐ駆ける。
間合いに入った瞬間、振り下ろした偃月刀の一撃を、オーガはまるで木枝でも受け止めるかのように、大剣で受けた。
俺の一撃をこんなにも軽々と扱うとは……やはり人間とは比べものにならない怪力だ。
わたしも力には自信があるが、こいつには及ばない。
戦士として、素直に認めたくなるほどの強者だ。
次は手数で対抗する。
一撃は止められても、連撃は止められないだろう。
そう思ったが漸馬刀をわたしの攻撃に合わすことはできるみたいだ。
偃月刀と大剣が火花を散らす。
そして、最後の一撃を斬馬刀で止める。
そのまま押し込む。
武器の太さは向こうが上だ。
ただ岩程度なら問題なく断ち切れた偃月刀が、鉄を前にどうか。
わたしは刃に力を込める。普通の剣ならこの瞬間に砕け散って終わりだろう。
しかし、これはキャルロッテ王から授かった武器。信じている。
全力で押し込むと、偃月刀の刃は鉄の大剣にめり込み、そのまま裂いた。
硬い鉄が悲鳴を上げるように砕け散る。
「……なんだ、お前は?」
オーガの驚愕を真正面から受け、わたしは胸を張って名乗る。
「わたしはダオウルフ。
キャルロッテ王親衛隊隊長。
キャルロッテ王の剣だ。」
するとオーガも口角を吊り上げ、名乗り返した。
「俺はブライ。
オーガ最強の戦士だ。」
戦場のど真ん中で、互いの名を確かめ合う──ここからが本当の死合いだ。




