ガルバン帝国 ベリアード大帝14
ゴーレムは倒された。
だが、あの鉄の巨人を残しては意味がない。
戦車だけでなく、あれも潰さねばならん。
問題はどうやって、だ。正面からやり合えば潰される。
だが、速度があっても巨体だ。
人海戦術で取り囲めば、すり抜けることはできまい。
多少の犠牲は覚悟のうえで、押し潰すまでだ。
そこへ、例のローブの魔術師──メフィアスが前に出た。
杖を掲げ、再び詠唱を始める。
空に赤黒い魔法陣が現れ、うねるように広がっていく。
なるほど、それがあったな。極大魔法。
戦車を消し飛ばしたあの一撃なら、鉄の巨人とて耐えられまい。
ゴーレムの頭上に、まず小さな魔法陣が浮かぶ。
それが時間とともに大きくなり、層を重ねていく。
まるで空を食い破るように、幾重にも重なる紅の円環。
あれは見たこともない規模だ──メフィアス、全力を出している。
だが、一つ懸念がある。
極大魔法は「避けられる」。
発動まで時間がかかるうえ、あのゴーレムは止まっていない。
ただ戦車はなぜか動こうとしなかったが、逃げることができるだろう。
そうなれば魔法は空を切るだけだ。
「奴隷兵を前へ出せ。囲め」
わたしは副官に命じる。
踏みつぶされようが構わん。捨て石だ。
奴らの命で巨人の足を止めろ。
そうすれば、魔法は確実に命中する。
それにしても妙だ。
あの鉄のゴーレム、こちらのゴーレムを倒してから攻撃してこない。
まるで、不要な殺戮を避けているようだ。
向こうの将は、犠牲を減らして戦争を終わらせたいのか?
笑わせる。そんな理想で戦が終わるなら、誰も苦しまない。
戦争は「殺すか殺されるか」しかないのだ。
あの鉄のゴーレムは、おそらく兵を踏み潰すこともしない。
ならば好都合だ。動きを止めてくれる。
奴隷兵ごと、極大魔法を浴びてもらおう。
そのとき、遠くの砦から騎馬の群れが飛び出した。
あの旗印──ギオルグ族。
副将軍ダオウルフか。
狙いは明白、詠唱中のメフィアスだ。
術者を斬れば魔法は潰える。単純な戦略だ。
だが、メフィアスの前にはオニキスとオーガの巨躯が立ちはだかる。
容易に突破できる相手ではない。
詠唱完了まで、あと五分ほどか。
それまで耐えられれば勝利は確実。
問題は、鉄の巨人が逃げるかどうか──。
だが、それも杞憂だった。
ゴーレムが後退すると同時に、魔法陣もゆっくりと動く。
まるで追尾しているかのように、狙いを外さない。
「ロックオン……か」
わたしは息を呑み、笑みを浮かべた。
あれなら逃げられん。勝負はついた。
空に積み重なる魔法陣の輪。
赤く輝き、まるで天を焦がす太陽のよう。
勝利の瞬間が近づく。
わたしは軍配を握り、ゆっくりと呟いた。
「見せてもらおうか、古の力の真価を──」




