ガルバン帝国 ベリアード大帝13
――なんだ、あれは。
砦の崩れた壁の奥から、巨大な影がゆっくりと姿を現した。
最初は光の加減かと思った。だが違う。
それは鉄でできた巨大な――まるで金属のゴーレムのような存在だった。
白く光沢のある外殻、複雑な継ぎ目、そして動くたびに響く重金属の音。
まるで、生きた鎧だ。
「おもしろいね」
横で幼女――あの魔族の召喚師が、目を輝かせた。
「ゴーレム対決ってわけだ!」
そう言って、彼女は自分のゴーレムを前へと進ませた。
確かに、サイズはほぼ同じ。
並び立てば、神話の巨人同士の戦いのようだ。
「いけーっ、ゴーレムくん!」
幼女の声とともに、岩のゴーレムが動き出す。
その巨腕が振り上がり、鉄のゴーレムに叩きつけられる――
が、敵のゴーレムはそれを軽々とかわした。
あの大きさで、あの速さ?
岩の塊の動きとはまるで違う。
重力を無視したような、滑らかな挙動だ。
「……ほう」
わたしは思わず息を漏らした。
鉄のゴーレムが反撃に転じる。
鈍重な岩のゴーレムの胸を、正面から殴りつけた。
その一撃をまともに受けても、岩のゴーレムは平然としている。
強度だけなら、こちらが上か。
殴り合いが続く。
衝突のたびに大地が揺れ、土煙が舞い上がる。
だが、攻撃の精度は段違いだ。
岩の拳は空を切り、鉄の拳は確実に命中していく。
時間が経つほど、岩の表面が削られていくのがわかる。
しかし、決定打がない。
――このままでは、膠着だ。
その時、敵のゴーレムが一歩下がった。
何をするつもりだ?
次の瞬間、背中から何かを抜き取った。
筒のようなもの――。
それを構えると、眩い青い光が走り、棒状に伸びていく。
まるで、光の剣だ。
「……剣を使うのか?」
そんなゴーレム、聞いたことがない。
だが岩のゴーレムは怯まない。
岩には刃は通らぬ――それが常識だ。
敵の鉄のゴーレムが剣を上段に構える。
青い光が空を裂き――振り下ろされた。
岩のゴーレムは防御の姿勢を取る。
しかし、次の瞬間。
その腕が、切り落とされた。
「なっ……!」
岩が砕けたのではない。
"斬られた"のだ。
そして返す一閃――胴を袈裟に斬り裂く。
音もなく、岩の体がずれる。
上半身が崩れ落ち、地面に沈んだ。
――まるで、バターを切るように。
沈黙。
ゴーレムはもう動かない。
「……一撃、か」
あまりの光景に、言葉を失う。
あの幼女の顔からも、笑みが消えているのだった。




