比留間明夫47
今度は――ゴーレムが出てきた。
召喚魔法だ。
うわ、まじか。
心のどこかで「ついに来たな」って思ってしまう。
本当にここはファンタジーの世界なんだなと、感動すら覚えた。
その巨体は、戦車の倍はある。
岩を組み合わせたような体に、赤い光を宿した目。
そして、地を踏むたびに地鳴りが響く。
ゴーレムはゆっくりと戦車の前に立ちふさがり、伸ばした腕で砲身を掴んだ。
ぎし、ぎし、と金属が悲鳴をあげる。
そして、その怪力で砲を――ぐにゃりと曲げた。
「うわ、マジでやるのかよ……」
戦車の装甲は、鋼鉄の塊のはずだ。
それを拳で殴りつけ、あっさりと歪ませる。
しかも最後には、その巨腕で戦車を持ち上げ、地面に叩きつけた。
鉄塊が裏返り、地面にめり込む。
……なるほど。これ、弱点だ。
戦車って、ひっくり返ると自力で起き上がれないんだよな。
しかも底面――装甲が薄い部分を丸出しにしてる。
「あのゴーレム、やばくない?」
「問題ないにゃん」
キャットGPTさんは、どこまでも落ち着いている。
AI特有の自信と、猫特有の余裕を足して二で割ったような口調だ。
たぶん、もう対策を立ててくれているのだろう。
ぼくは無線を手に取り、砦の外で待機しているダオウルフさんに連絡した。
「砦の前に出て、敵を牽制してほしい」
「了解しました。私がやつらを全滅させます」
あいかわらず血気盛んだ。
でも、今はまだ待ってほしい。
真正面からやり合う時じゃない。
「いいや、まだだ。牽制だけ頼む」
ぼくも持ち場に向かう。
……そう、ゴーレムはぼくの"相手"だ。
ついに、あの機体の出番が来た。
ただ、一つ気になることがある。
あの大規模魔法――あれを防げるんだろうか?
不安はある。でもキャットGPTさんは「問題ない」と言った。
なら、信じるしかない。
ぼくはマシンに乗り込む。
キャットGPTさんが設計し、ぼくの趣味が全開で反映された"専用機"だ。
シートに腰を沈め、スイッチを入れると、低い駆動音が響く。
正直、これに乗り込むときはいつもワクワクする。
手にはコントローラ。
そう、普通のゲーム用コントローラだ。
操作感は完全にゲームそのもの。
左スティックで移動、右スティックで照準。
トリガーで砲撃。
ぼくが元の世界で好きだったシューティングや戦略ゲームみたいな感覚で動かせる。
もちろん、実際の操縦の九割はキャットGPTさんがやってくれる。
ぼくがやるのは、ほんの"指示"程度。
いわば、イージーモードの指揮官プレイだ。
「よし……出撃だ」
シートベルトを締め、深呼吸。
そして、親指でスタートボタンを押す。
「――明夫、いきま~す」
ちょっとテンションが上がっていた。
マシンの巨体が立ち上がり、エンジン音が高まる。
前方のハッチが開くと、冷たい風と砂塵が流れ込む。
方向キーを押すと、マシンは地を踏みしめながら戦場へ向かって進み出した。




