ガルバン帝国 ベリアード大帝10
砦を落とせ──私は躊躇なく軍配を振った。
砦の壁は簡単に崩れた。
相手が守りを固める前に制圧だ。
緒戦の勝利は戦全体の士気を左右する。
前方の部隊は勢いよく進撃し、砦内には千を超える敵兵が押し込まれている。
抵抗というよりも、どうやら彼らは撤退の道を探しているようにも見える。
敗色を悟っての腹づもりなのか、あるいは本当に諦めているのか。
いずれにせよ私の攻勢は緩めない。
あのキャルロッテめが私の前で命乞いをする──その光景を思うだけで、胸の奥に冷たい悦びが広がる。
ところが、戦局は予想外の形で変わった。
破られた石壁の裂け目に、突然、壁と同色をした巨大な塊がせり出してきたのだ。
箱状の外観を二つ積み上げたような、
それは縦横およそ五メートルに及ぶ物体。
上部からは二門の砲身が伸び、まるで獅子の頭部のようにこちらを睨み付けている。
これが噂に聞く「戦車」か──視認と同時に五輌が姿を現し、崩れた壁の前で整然と隊列を組んだ。
戦車が列をなして壁を塞ぐと、その周囲で起きることは凄まじかった。
突入した歩兵が踏みつぶされ、上部のハッチから現れた兵が投擲する何かが炸裂しては、押し寄せる者たちを次々と吹き飛ばす。
戦場における力学が一瞬で逆転した。
目の前で兵が四散し、戦列が乱れるのを見て、私は慎重を期すべきだと判断した。
軍配を裏に返し、足を止めよと命じる。無闇に突入して数の利に呑まれるわけにはいかない。
だが敵の作戦は明快だった。
砦内にガルバン軍を引き込み、分断する──それによって数の優位を覆す。
砦の中にいるのは速攻をかけた一番槍の兵たちだ。
彼らは容易には屈しないだろう。
もし彼らが砦を固持すれば、我々の作戦は続く。
相手の狙いは、あくまで我々の隙をつくことにあると見た。
ならば、戦車を排除する──それが最優先だ。私は弩級・投石機・大砲に対戦車射撃を命じる。
しかし、戦車は動き出すや否や砲をこちらに向け、精確に撃ち返してくる。
投石機や大砲は次々と破壊され、火花と破片が舞い散る。
彼らの砲撃精度は尋常ではない。
こちらの兵器は、火薬量や砲?の詰め方、角度、砲弾の重量にばらつきがあり、機械的に安定した命中率は望めない。
それに対して、彼らは発射の条件を一定に保ち、砲身自体が可動することで着弾点を修正しているらしい。
結果として、我が方の砲陣は次々と無効化されていった。
戦場は容赦なく変貌する。
計画は瞬時に書き換えられ、こちらは被動に追い立てられる。
だが、ここで慌てふためいてはならぬ。
力で徹底的に叩く、それが我が帝国のやり方である。
戦車という未知の脅威を前に、我らはただ手をこまねいているわけにはいかない。
新しい対策を講じ、兵器と兵の働き方を即座に適応させる──これが今この場で求められているのだ。




