比留間明夫44
ベリアード大帝の合図で、一斉に戦がはじまった。
投石器が「どーん」、大砲が「どごーん」。
砦の石壁に雨あられの石と鉄の雨が降り注ぐ。
砦の壁、つい先日キャットGPTさんの指示で強化したばかりだ。
設計図は完璧、強度も数値でバッチリ確認済み。
つまり、普通の砲撃くらいで崩れるはずはない……はずだった。
それなのに一か所が崩れるとほころびが出てくる。
当然、敵はそこを狙ってきた。
集中攻撃を受けたその箇所はみるみる内に崩れていき、ついに穴が開く。
そこを突破口に、敵軍が波のように押し寄せてくる。
まるで巨大な生き物が「よっしゃ行くぞ!」と一気に動いたみたいだ。
壁はコヨミの言う通りの強度で作ったはずなのに。
事前に指示しておいた通り、砦の中の兵たちはとっくに避難済み。
あぶなくなったら逃げろの指示はうまく機能しているみたいだ。
無駄に犠牲は出さん。砦は敵に任せておいて、こちらは別の手を打つ。
俺はトランシーバーを取り出し、淡々と合図を送る。
「戦車隊、前進。破られた箇所へ向かえ。」
敵が集中しているのは砦の穴だ。
そこを広げにかかっているがまだ狭い入り口にすぎない。
戦車が地を蹴って進むと、敵の動きがぴたりと止まる。
戦車、やっぱり持ってるインパクトが違うらしい。
相当やばい噂があるのだろう。
彼らは戦車を怖がってすこし下がる。
結果、砦に入っニャール軍がいる、後ろへ戻っても戦車がいる。
投石器や大砲を持たない騎馬や歩兵には、まず破れない。
ただし、パニックで押し寄せられたら話は別だ。敵兵たちが奥へ殺到し始める。
そこには二の門がある。
「扉を開けろ!」
俺の声に合わせて、砦の扉がギギッと開かれる。
期待通り、敵兵がなだれ込む??そこに待ち受けていたのはダオウルフ副将軍と彼の親衛隊だった。
巨漢が刀を振るうと、空気が切れて、敵がざくざくと倒れていく。
あの親衛隊、文字どおり"最強の壁"だ。
動きに無駄がない。敵はたちまち数を削られ、前進の勢いを失っていった。
だが、油断は禁物。後ろからはまだ押し寄せる兵の群れがある。
敵は退路を断たれて泣きそうな顔で鉄扉の方向を見ている。
ダオウルフたちは次々と相手を倒していく。砦の中の敵の数がどんどん減っていくのが、目に見えてわかる。
――よし、想定通りだ。キャットGPTさん、ナイス設計。
破られるのも計算のうちだったんだな。
ただ、開けてあるよりも、苦労して打ち破ったほうが、罠と考えにくい。
それとダオウルフさん、ナイス斬撃。
俺は胸ポケットのトランシーバーを撫でながら、次の一手をコヨミに聞くのだった。




