ガルバン帝国 ベリアード大帝09
やがて準備は整ったようだ。
櫓は組み上げられ、砲も投石機も所定の位置に据えられている。
私は中央の高櫓に昇る。
ここからなら戦場全体が一望できる。
ここから号令を下し、数万の歯車を一斉に回すのだ。
声を張り上げる必要はない。軍配一振りで命令は伝わる。
合図は全員に浸透している。
指揮がきちんと伝わって初めて、軍としての体裁が保たれるのだ。
戦場では情報伝達が大事なのだ。
わたしのところにすべての情報を集め、それを一兵卒にまで伝える。
帝国は訓練によってそれができるのだ。
見下ろせば整然と並ぶ行列が広がっていた。
圧倒的な訓練と規律??それは一目でわかる。
力とは見ただけで伝わるものだ。対する相手は、砦の中に籠もり、その背後にまとまらない群れがあるだけに見える。
侮りか諦観か、どちらにしても戦意が揺らいでいる。
はったりで切り抜けてきた者たちがいるのかもしれぬが、今回はそれが通じる局面ではない。
練兵ではこちらが圧倒的に上だ。
こうした緩みを残したまま、我が帝国と戦おうというのか。
嘲るように、私は軍配を高く掲げる。
これを下ろすとき、全軍は機を得た猛獣の如く動き出すだろう。
号砲を合図に、我が軍は一斉に前進を始めた。
投石機は巨大な石塊を投じ、砲身は轟音とともに火を吐く。
砦の外壁は土煙を上げて崩れ落ち、堅牢と思われた防御も徐々に体を開く。
時間の経過は我が軍の味方だ。
穴が開けば、突入は一瞬だ。
先導するは大盾を構えた重装歩兵、側面には疾走する騎馬隊が待ち受ける。
砦の壁がついに崩れ、私は軍配を振った。
合図を受けて部隊は整然と、しかし猛然と砦へなだれ込んでいく。
訓練された列は乱れることなく、我が国の意志そのものとなって敵陣を貫いた。
この戦いける。
わが軍の士気、闘気、すべてが相手に優っている。
どう考えても、向こうに打つ手はない。
わが軍は相手の砦になだれ込む。
相手の兵は逃げるだけだ。
もしかして、罠。
その可能性もあるが、ここは責める一択。
すこしくらいの抵抗はあっても、引くことはダメだ。
わたしは突撃の合図をやめない。
その指揮どおりに兵たちは突っ込んでいくのだった。




