ニャール国副将軍ダオウルフ三世01
ついにガルバン帝国が動くと知らせが届いた。
良い知らせだ。待っていた。
これこそ、我らギオルグが王に恩を返す機会――そう心の中で繰り返す。
キャルロッテ王は、我が一族にとって救いそのものだった。
ビリジアンテの鞭の下で蹂躙されてきた我々を、王は手を差し伸べてくれた。
部族ごと解放し、名もなき農奴たちに誇りを取り戻してくれた。
その恩は一生分だ。だからこそ、わたしは王に仕える道を選んだのだ。
初めて王を見たとき、見た目は弱々しい小男だと思った。
猫を膝に抱き、柔らかな笑みを浮かべるだけの老将――
あれがなぜ人を惹きつけるのか、当初は理解できなかった。
だが、彼の言葉の奥にある深さ、冷静に世界を見据える視線を知ってからは、迷いは消えた。
あの人のためなら、我が命など惜しくない。そう確信している。
今回、王はわがギオルグに特別な役割を与えてくれた。
副将軍――王直属の親衛隊を率いる立場だ。
名誉と責務、どちらも重い。王を守り、王の意志を現場で貫く。
それが我が誇りであり、我が義務である。
賜った武具はただの道具ではない。
偃月刀の刃はオリハルコンで作られ、振るうだけで鉄を弾く。
盾はアダマンタイトの堅牢さを誇り、どんな刃も跳ね返すだろう。
こうした武具を王より賜るということは、王が我を信じ、我が部族を信じてくれている証だ。
刃に手を触れるたび、血の誓いが深くなる。
敵は強い。ガルバンの数は膨大で、今回は魔族を引き入れてくるという。
魔族は一匹狼のような存在だ。集団行動は不得手でも、個々の力は尋常ではない。
魔法、巨体、古の力。それらが混じれば戦は一筋縄ではいかぬ。
だが、恐れはしない。恐れていては戦士の名が廃る。
わたしは幾度も戦場を見てきた。血と泥にまみれ、勝利と敗北を繰り返してきた。
だが、今回は違う。王のため、民のため、我が一族のために戦う。
守るべきものがはっきりしているとき、怒りも恐怖も鋭い刃に変わる。それがわたしの戦い方だ。
作戦は王の下で練られている。
私が指揮する隊は、王の側近として最も危険な局面に投入されるだろう。
だが、それを望んでいる。我らギオルグは前に出てこそ価値がある。
突き進み、盾となり、斬り裂く――それが我らの道だ。
もし魔族が来ようとも、我が偃月刀は彼らの肉を裂き、我が盾は彼らの術を斥ける。
だがそれだけではない。戦は力だけでなく、心で勝つものだ。
王の思いを胸に、部下たちの命を預かる重さを胸に、私は冷静に、そして激しく戦う。
戦場でのわたしの誓いは簡単だ。王を守り、敵を押し返す。
勝利を得て、部族に平穏を取り戻す。
もし我が身が倒れることがあっても、それは恥ではない。むしろ栄誉である。
なぜなら、我が死は王と民の未来の礎となるからだ。
槍を取り、馬に乗り、旗を高く掲げよう。
キャルロッテ王のために、ギオルグのために、我が腕の限りを尽くすときが来たのだ。
命を賭してでも、王の信頼に応えてみせる。
我が心は、もう決まっているのだ。




