ガルバン帝国 ベリアード大帝07
侵攻の準備は整った。
だが、魔族――あの種族はやはり扱い難い。
礼節を欠き、思考様式も我らとは相いれぬ。
教育という枠組みに馴染まぬ者たちを、文明の座に据えることは容易ではない。
野性が強すぎるのだ。だからこそ、将来的には排すべき存在であるという考えは揺るがぬ。
今は使わせてもらうがな。
「それでは我らが叩き潰せばよいのだな」
オニキス、狼人の大将が静かに応じる。彼の瞳には狩りの冷徹が宿る。
「ゴーレムで一撃だな」
耳が尖った少女、リザベル。
幼き容貌に反して、その言辞は老練を帯びている。
幹部としての冷徹さを隠さない。
「我らにかかれば、人間など敵ではない」
巨躯に角を戴くブライ。オーガと言われる鬼族だ。
獰猛な力を体現する者。彼の声は重く、戦場の地鳴りを思わせる。
「古の魔術で粉砕しよう」
ローブの老魔術師メフィアスは慎重に、しかし確かな自信を込めて告げる。
瞳だけが異様に輝き、言葉に深淵を伴わせる。
悪魔族の老人だ。
彼らは私の下にある。私が期待を向ければ、彼らは力を以て応えるだろう。
かつて彼らと対峙し、敗北を喫したあの記憶は今も残る。
だが今回は違う。彼らの戦いぶりを見定め、王国の欠点を突き、勝利への布石を打つ。
いずれ彼らを凌駕し、完全なる支配を取り戻すつもりだ。
この世界は本来、人間の秩序によって統べられるべきものだ。
今は一時的に魔族と手を結ぶが、それは戦略に過ぎぬ。
やがて我が帝国の規律と理性が再びこの大陸を塗り替える。
あのキャルロッテ――矮小で無様な男が私を嘗めた辱めは忘れぬ。
今回は私自身がその前に立ち、決着を付ける。彼の首を以て新時代の序幕を告げるのだ。
断頭台に示されるのは、ただ一つの秩序。私の帝政である。
さあ、遠征の時は来た。
今回は正面突破、正々堂々、完膚なきまでに叩き潰す。
横綱の如き一撃で事を収めるのだ。
私は将軍たちの待つ陣所に足を運ぶ。
行く先にあるのは勝利のみ。
その確信が、私の歩みに重みを与えていた。




