魔王ロンギラス01
我が名はロンギラス、魔王と呼ばれる者だ。
海と岩と嵐が私の領分を形作る孤島――外界はそれを魔王の島と呼ぶ。
かつてガルバン帝国の剛毅なる軍勢がこの地に踏み込み、我が民はそれを粉砕した。
以来、彼らは一種の礼物を携えて我らのもとへ来る。便利な関係だ。互いに利がある。
今回、人間の大国から助力の要請が届いた。
相手は――キャルロッテ王の率いるニャール王国。
確かに彼らは大陸で勢力を広げつつあるという。
しかしある一国、キャルロッテなる小国が周辺を掻きまわし、やがては我が島にも牙を向けようというのだ。
人間の喧騒、領土欲、覇権欲――彼らには勝手にやらせておけばよい。
だが、状況が我が国の生活基盤を脅かすならば、黙っておられるか。
我が王国は自給自足が原則だ。
だが気候は残酷で、食は年によって揺らぐ。
ガルバン帝国との交易は、我らの暮らしを安定させる一助である。
ゆえに、彼らが滅べば我らにも困窮が及ぶ。
だからこの戦争に派兵する。
ニャール王国――奴らは亜人を蔑み、下等な存在と言っているらしい。
このロンギラスへの貢物も反対の姿勢をとっているという。
彼らの王は傲慢だと聞くが、実はそれ以上の何かを抱えているらしい。
新しき火器、鉄の巨獣、潜行する破壊具――人間が産んだ未知の威力が、周囲の国を蹂躙しているという。
これを放置すれば、ガルバン帝国のみならず我らも脅かされるやもしれぬ。
人間ごときに我が軍が屈することはないと高を括ってはいるが、現実は数の狂気を伴う。
魔族は少数だ。個々の力は人間を凌駕せんとも、数に押されれば万が一ということもある。
我々にこそ古き力がある。古代の魔法、戦場を裂く一閃、操るゴーレム、山をも砕く巨人の腕。
よって、我は依頼を受けることにした。
百の精鋭を派遣しよう。
それも最強のものたちを。
百の影が戦場に落ちれば、鉄の獣も泥のように砕けるだろう。
我が目的は単純だ。圧倒的な力で示威し、秩序を再構築する。
人間どもを増長させない。
彼らは自分たちがこの世界の頂点だと勘違いしている。
見せつけよう。誰がこの世界の主かを。
魔族の上位性を、骨の髄まで思い知らせてやるのだ。
降伏せぬ者は灰となれ。跪く者には条約を与え、従うならば我らに奴属することをゆるしてやろう。
さあ、戦は始まる。この戦で魔族の力を見せてやろう。
ニャール王国のキャルロッテよ――覚悟せよ。
魔王の一念は山をも動かし、我が軍の行く先に道を切り開く。
人間たちに教えてやろう。
世界を統べるものが誰なのか。
恐怖の中で思い知らせてやる。
我は幹部たちに声をかけ、最強の戦力の準備をするのだった。




