76、―嘶き―人形とカラクリ
――現在
――――そうだ。
ヤツはそうやって私の頭脳と意志を壊していったのだ。
一方、このバケモノはモノゴトリー協会の総主として活躍したと言われているが、実際には宇宙移民としての役割すら果たせなかった。目前に転げまわるソレは唯々ライト・オブ・ホールや別の次元空間から異なる命?
「いや、そうじゃない――っ!」
資源がやって来るのを待っていただけで、
すべてを手に入れていたに過ぎない!
「答えろ!所詮人形なのか、貴方はそんな奴じゃなかった筈だろうっ!」
―ドロ、ギュチュ・・・デロォ、
しかしROHランシードの威力はなんと凄いのだろう。
これがソレの目指した発明?
一刺しだけで20センチもの穴を開けてしまうのだ。これがソレの頂だというの?切り裂くとこの3メートルという個体の半身さえ溶かすのだから、ナスワイ!貴方の・・・その科学さえ私は怖い。でも、でも!
―グチョ、ブチュ・・グチョ・・ギュル、ムク、んん、マ、マァ~ごはん~
「喰らえ」―ズシュオォ――ドッ、ブッ、シュウウゥーァ、ぴくっ?ムクッ
え?なに?今度は“ごはん”というの?
「教えて。食事などと言う人を犯し続けたお前は、なんと呑気な奴なの?」
ーえへへぇ~ごはんだよぉ~~はやく作ってマんまあぁ~~ちゅゥゥ~
郊外に捨てられた廃墟に住む人々がこの協会に入らない理由は、彼らがナンバーネームとして扱われ、人工生命体を量産するための実験体にされるのを反対しているためだった。
(だけどもし、この地、ダス・ダ―ネスのエネルギーだけ供給すれば?)
もしかするとモノゴトリー協会だけ豊かになるはずなのでこれ以上の計画はその計画遂行は不要だという。しかもこの驚異的な再生能力は半身を失った。
そうだとしても1秒以内で元通りとなってしまうというの?
―え?だめ?じゃぁ~~
お母さん失格じゃん!むすぅぅ~~。
「その無駄口を叩くなら才を叩け、
恨みも言えぬ罪なき人をも侵したキサマを!」
―あぁん、えぇ~っとォ、そだ!お母さん、
ねぇ・・お、おっパイ!えへ、いイ?
「お前の授乳計画は済んだ。
私達はお前を滅する計画を決めた!」
―え!バキィイ、ゴッ―ガゴッ、ゴロ、ギュル、
わんワン、パタタ、キュゥン?
何を”フって”いる?それになんと脆いの。それを教えるの?
あの部屋で“わん”の次はお手だと教えたお前に感謝をしろと?
まず何を以って人工生命体を使い”宇宙移民計画”とするのかを聞く!
次にどうやって今の世界線を保っていけるのか?人は生き残ってゆけるのか?
それも3年も経たないうちに没落するのを、待つことができないのは彼等も同じ。つまり、この才をも凌いでいたバケモノひとつでさえ、何もできないというの!
―ボゴ、ドシュ、ズブボォ―ォッ・・・ケロ?ねぇお腹空いたんだぁ!
既に人格が崩壊し資料さえ捌けないのだろうが、やはり在り得ぬ再生力だ。
あの時のように見事に私の発言すらも退くその姿、なんとも凄まじい!
だが!その臭い裸のままその分厚くも固い皮膚をもつ姿では、貴方は・・・
好きだという”ママの乳”さえ吸う事すらままならない筈。
何故?ソレは息を落とすように120、90、60センチへと縮んでゆく?
私の意志が通じているのか、再生が追い付かなくなったのか?
「これでは・・・もう、」
もう、人の温かささえ感じられぬ4歳児の子供そのもの・・・
私の知るソレは計画を諦めた時のジグルの表情にそっくり。
『だからお前は“無計画”なんだよ?それなら次は“お回り”させてやろう』
『クルゥ~・・・きュ、ウ~・・・ン、こ・・・れ、で・・・いいの?』
まただ、畏怖の意味にさえ感じ取れた・・・私ならどうする!?
だれがコイツを救うというの!!
「・・・くっ、私達の様に血を流せジグル。いいえッ、インシュビ―よ!」
―ズリュ、チョ、え、えへ・・わぁ・・い、おっぱ!グッシァーギュ、ぐる?
「ハァ―よし―ヘァッ回った!ROHスーツも限界―ハッ、これでヤツ―?」
―クルル、パタパタ・・えへぇ!ねぇねぇ、ままぁ、もう一回しようよォ~っ
ソレの唾液で溶けてゆくROHスーツ。
でも、たかが素手だけでこれ程のダメージを与えてゆける。
ROHランシードは何かの保険としておこう。
ただ、気になるのは私が宣告、攻撃、守備、続行するのに対しインシュビ―であるソレは再構成、再構築、再生を繰返す。
私はただ仇を討ちたいのにソレは“玩具と遊ぶ”かのように執拗だった。
だから私はソレが再生する前に、向こう側の世界線にあるライト・オブ・ホールがより働く磁場斑点速の割合と座標を定める事にした。
ソレの絶え間なく続く遊戯により、強化された私でさえも苦しめられつつ、
「その、ハァ、ライト・オブ・ホールの、フゥッ、エネルギー出力はッ!」
450%から500%までの磁場斑点速なる割合を示していた。
その割合が重なるとようやくライズの座標を発見したのを確認する。
「・・・尚も1秒以内で再生してゆくが今度は30センチほど・・・禍々しい」
まるで『数式を足し算だけに落としてあげた』という様子は想像を絶する!
この私がまるでエサを与えられているような感覚だ。
素手では届かないし、力尽きる訳にもいかない。
まだだ――、まだ堪えるんだ―――ッ!
―ポテ、トテ、いいぞぉ今度はオレから?・・・ぅ、
―でもぉ~やっ!小さすぎて、ていっ!届かないぞおぅ~?
「――ぬッ?何て再生力、何としつこいの!」
―大丈夫かなぁ~でやっ、ピッー、あれ?ママに届かなかった・・・
「“ガチャッ”これで燃え尽きろォ―!!」
―あん!ジュワゥ――ッ、ブスブス・・ボウッ!ゴウォオ――・・・シュゥ―
「ハァ、ハァ―全て壊した・・?アンタが全てをッ闇に飲み込んだんだぁ!」
私は“しつけ”をさせられている。
だからソレの再生が追い付かない程までに炙る。
光体の粒子を放つ“火光照射砲”を用いソレを焼却する。
ジグルであったソレによる魔核鉱石で造られたワイン。
それを飲んだ妻の死によって私の息子も殆ど喋らなくなり、
その孫さえ児童施設へ預けられたのだとソレへ訴えた。
「アンタの息子で、私の子なのに・・・!育児放棄するなァァ―!!」
だが、燃え盛るソレの求めた人工生命体、機械生命体が製造され続ける事なのに、何も起きていない事だのにソレはあたかも所有していたかの様に振る舞っていた。私はソレを諭すようにこう言い放つ。“何という、つまらない思想だ”なのだと。
灰となったソレを見てこのように犠牲となるモノが多く存在していた事を再認識させられたのだった。既に“仕込まれていた”事に気付かぬまま・・・終わりたくはない!
―プスプスプス・・・
ソレは何も話さない。
だが、私の記憶には『灰になってもお前を抱いてやる』と濁す。
私は叫んだ。灰であるソレの目的が拉致、実験、処分だった事と、その罪が万死に通ずるものと判断し、弄ばれた生きとし生ける命をも、私並びに全てソレの創った規則思想で犠牲となった人々が、確かに、助けてくれと叫ぶその人々の”魂”が確かに居たのだ!
「そう、それではいけないの・・・」―プスプス・・・・
「限られた幸せを闇へ落とした者をココで赦すには・・・」―ピクッ!?
“赦す”という言葉へ反応する。省みず謝らず。
それは灰になっても変わってはくれない。
更にソレ自体を仲間へ迎え、大臣昇格までさせる様な状況、モノゴトリーの総主と認めてしまった協会側にも決して在ってはならず誓わせるよう訴えた。だが、過ちは過ちなのだろうか。
そこで私はこれも慈愛なのだと念じてあげてみせた。
だが私は間違っている。
『 ~そうさ、お前はそういう人形だよ。すぐ赦そうとする。
天使でもないお前が貴族?在ってはならない事とは?
誓いとは何のために在る?人の為で何かの為!違うんだよぉ~ 』
同感だ。コイツが私に振り向いてくれた事など無かったことを思い出せ、
ミヘルよ!
「灰よ。“ママごはん、おっぱい頂戴”と言ってみせろ。その才を示すの!」
―ムニュ~まま、ジュクぉ・・ご飯、グジュぉ・・ぱいぉ・・ョぅだぁい、
何という生命力だ。灰という歪みモノだ。
この為にROHランシードを置いていたのだ。
その、歪み込んだ間違いを正すために!
「これで、ランシードで溶けてゆけ・・・!」
―ドッ、シュウウウウゥ――――ジュオオォ――――ドロォォ
灰自身が罪を犯したせめてもの報復として私は“永劫回帰”を与え、
再び蘇らぬよう焼却する。そして私は火光照射砲の出力を上げ
そのトリガーを握った。幾度も滅するために―――いいよね?
『いけないよミヘル。貴族じゃ駄目なんだって聞いたろう?
在ってはならない事実に自らの怒りを生きる為に答えるんだ。
怒りは誓いの血肉と同じでそこに剣も魔道も通用しなかった。
思い出せ!天使よりも近いその答えは貧しい人を救うんだ!
キミもそう、あの時の怒りを作法にして思い出せ!』
『でもォそれでは貴方のこれまでの行為がすべて灰になる!
もう、休めばいいの・・・ジグルゥ!』
教えただろう。キミは、僕を踏んで生きるんだって!
―キュィィ――ピカッ!ドッ、ゴワアァァ――
・・・じゅる、キュインッ!ボウオォ――
――魂の走馬灯
“あなた達ィ、もうマジェス殿下に呼ばれているわよォ~”
“なあ、俺達みんなで新天地計画を進めてゆこうぜッ!”
“姫様の教育係は皆で分担するわ?私は剣術を教えるの”
“僕はイーターと料理した・・・えっ、美味しい?よかった~”
『ジグル、貴方の答えは何処なの?皆で頑張ってきたの・・・』
――ワー、ワー、魔女イデアを処刑したァァ!!
民よ聞いてくれ。マジェスも始末したしスタヴァ―も消し炭にしたよ。
民よ見てくれ。これでイデアの呪いは消えたし皆で仲良くなれるんだ。
民よ覚えて。パヘクワードがとてもすっきりしたよね・・・―えへッ!
『何故、分からないの?貴方はとても輝いていたのに再び闇になるの?』
――ライズを先に落とし、イーターはその次で、僕はまだ研究するんだ。
『私の事を忘れてしまったの?その研究の先に何を見つめていくの?』
―魔核鉱石を沢山造ったよ!
――1万2306人位の犠牲じゃ僕は収まらないのさ!
―――もっと僕の為に犠牲になっておくれよ!
――――魂で僕を王の器に戻してくれぇ!!
ねぇ、お前は
なぜ救いの手を、拒むの?
私は涙を流していたの。
私は自らの行いを諭すの。
でも彼を、貴方を、お前を愛してきた私は何もない。
あるとすればお前に対する憎悪と懺悔を下す以外何もない。
何も残らずに終わる。
それが愛?いや、貴方は他の人と違う道を選んだ!
確かな私の直観。このインシュビ―となったモノが人を必ず、
”突き落とすだけで終わりを済ます筈もない”のだ、と物語るのよ!
“ねぇねえ、ミヘル?”「―え?―」“どうか――と――いで”
「どうかしたの?( お前と私で )何を願っているの??」
“だから、《 どうかボクに二度と近寄らないで 》って言ってるのォ!”
「ッ・・あぅ?、がっ!ぐぅ・・(貴方は再び私を見捨て行くんだ)」
“ねえ、ママ聞いて~みんなみんな壊すよ~おっぱいちょうだい、えへ?”
「そうか、そうよね(ごめん、なさい、もう貴方の事など遂に忘れるの)」
“泣かないで。だってボクはみんなの血を飲むんだよ?宇宙移民計画の為に!”
――才・慈悲・間違い――――引継ぐ意志――――闇・知・頭脳・天才――
何故に血=知を飲むの?眩き器質と眩き闇 “オレは知を飲みお前は血を飲め”
何処で人工生命体を? 相木未辺流と臣子道彦 “俺が畏怖の世界で発明したのだ”
それは私への愛情? ミヘルとジグル “愛も情けも野望も理屈も同じさ”
私を試した訳は? 少女と研究者 “君が僕に頼るミヘル=試用人形”
計画を教えて? 人工生物と臣子道彦の意志 “新天地計画は宇宙移民計画だよ”
貴方は何者? 貴族と元・貴族 “貴族で貧しく泥水の似合う者さ”
愛って何? 28歳の剣士と43歳の大臣 “愛とは追いかけて砕けるモノさ”
私を見て 15歳の少女と32歳の学者 “君は本当に世話の焼ける子だよ”
答えて 救世主と危険生物№721 “よし!お陰でピースが揃ったぁ”
ねぇ 大人と少年 “わぁ、きゃ!お父さん抱っこ~”
愛 救世主と幼児 “えへ!ママご飯、ママおっぱい”
「――ねぇ愛ってそんなちっぽけなの?」 魂“愛が小さい?面倒臭い女だね”
―――――ジグルは私の何処に愛があるのか答えるのも面倒なのね―――――
“正解。愛は僕を嫌うんだ。破滅だけが僕を生かすんだ”
「――そう、私が間違っていた」
“もっと間違ってね。間違いから正しい事を選ぶだけでいいんだよ”
「―なら、これが―」
―――――だからね、ボクに依存しないでくれる?吐きそうだから―――――
「これがーー“お前と私の意志”だぁーーぁッ!」
私は怒りを表す。その灰は焼き切れて研究ラボの床ごと溶けてゆく。
それ程まで焼かなければ再生し、他の世界線さえも更なる不幸を生みだし闇へと誘うのだと案じて焼き尽くす。ソレは既に10センチどころか3ミリ未満の端切れとなっていた。
怒りに身を任せたこの行為によって“研究ラボ”には灰の血が散開し、臓腑の焼き焦げた匂いまで充満する。
何とおぞましいことか。
生体ロボの残骸もラボ中へ飛び散っている。
このような才を無駄に活かす“無知能生物”が居ようと、生命をも潤す科学者だろうと、ダメなの。無限に広がる宇宙には叶わない。
だから――、
「燃えカスとなってッ居なくなってぇしまえぇぇ―ッ!!“ジャキッ”」
(燃える位なら私と一緒に暮らしてくれれば・・・それ以上は望まなかった)
―ジュウゥ――・・・ドロ、キュアッ!ボォオオオオ――ゴッゴオオ―
“ははは・・そう、それが君だ。よく頑張って思い出したね”・・プスプス、
「 蒸発したか危険生物め・・・私はミヘル・アントレア!
お前に飼われたミヘル・ウィナートなんて名前は
もう要らないッ! 」
(本当は貴方が必要だったの。私に名前をくれてありがとう。
蒸発しても愛している。私とライズの魂ならきっと、
貴方と共に居られる事を願うわ・・・)
―・・・シュ―――ゥ・・・パチ・・・、バチ・・・
“それでいい。もう二度と振り返ってはいけないよ。
君はブレトルの半身なのだから”
「 そしてライズ待っていて!貴方へこの魂を託すっ!・・・
そしてインシュビ―ッ、キサマは全ての因、皆のカタキだ!
二度と、・・・その汚れた姿を見せるな・・・ッ!! 」
(また会いましょう。貴方は本当のジグルは
何度でも人を救っていたのだから)
出力500%、ライト・オブ・ホール収束率OK、変容する!
ー「 OK! 」
――ピシュンーーー
――――・・・ボシュッ――・・・フッ――ヒュウウゥ―――・・・
――ジグル・インシュビ―の魂
“行ったか・・・無事に変容と融合ができるといいねぇ”
“でも・・・何だか、違和感あるなぁ”
”僕の魂は97%も減っている。誰だっけ?”
“確かに僕は宇宙移民計画を究極生命体へ託した”
”それに体もおかしい・・”
“体が千切れる度に再生しては小さくなると・・・”
”遠くから呼ばれているような違和感も?”
“だけどいいや。今はもう休むかな・・・疲れたしぃ・・・”
”スー、スー”
―――――ジグルだったインシュビ―によって
モノゴトリー協会は闇の中の存在となっていた。
彼は各世界線でライト・オブ・ホールとダーク・オブ・ホールによって
自らの才能を研究や成果に焦り、すべてに破滅をもたらしていた。
親にも捨てられては先立たれ、期待に応じようにも裏切られ、創生時から
もたらされた虹色の鉱石により人工生命体を造り上げたのだった。
ああ、新しい時代がやってくる。
―――その期待と裏腹にその実験の母体として
人を殺めるような行為で、仲間を裏切り、実験を繰り返してきた。
その研究データーから宇宙移民計画を編み出すも失敗と判断されたが、その裏には謎も残る。ジグル自らを改造し王だったことを誇るものの、ライズとのかつての記憶によってそれは偽りのモノだと思われた。
勿論、かつてのようには行かないさ。
―――そんな偽りを以ってしても
インシュビ―は王で父でもある彼を知り、母だったフォダネスと自身の子ビードを融合させるもモノゴトリー協会内では失敗と評価された。
仲間だったミヘルも魔核鉱石とし自身の子ディズを造るも失敗したと協会本部で報告が挙がった。
やがてそれはジグルに対する逆鱗となり曖昧な形で自ら破局を迎えたと一部残った幹部だけがそのように答えたのである。
みんな壊れた。再生した。次より明日だ。
―――あとは新型ライト・オブ・ホールの製造についてもミイネンの変容によって終局を迎えるがフォダヴィードと、その他、犠牲者遺族たちによりジグルは総主としての立場をも失う
、判決が下るに留まる。
だが彼はそのライト・オブ・ホールを利用したにも関わらず、自らの才に溺れるもののライズ、イーター、ミヘルの計3名は変容を遂げられ世界線へと旅立ったのだった。
沢山減ったんだ、お腹も空くよ。
―――インシュビ―は思った。彼等は燃え尽きようともまだ立ち上がると。そして、気付かぬ内に計画が終わり自らの罪が軽くなっていたのだった。
「監視カメラには偽りのない攻防が繰返されていた」
「公開されたら不味かった」
「新たな役割が必要だね。次に君が選ばれたよ」
「この事態の収拾及び回収を頼む」
イーターはフォダネスの魂となって、ミヘルの魂はライズの元へ届くように、光の王インシュビ―はそんな彼等によって「いななき」を挙げる。その血は青から赤へと変わっていた。それはまるでモノが罪を認め滅んだようにも見える。誰かがここへ来るまでは――。
『私はねモノゴトリー協会の次期創設者総主インシュビ―と言うのだよ?』
――夜9時、モノゴトリー協会、総括施設執務室にて。
―ピッ・・・総主、テュディス・カウを破棄したよ。
彼は総主インシュビ―等と言っていたがね。
ある意味であのような体裁で記録抹消とされたという形が取られたのかな、
“総括医学者・検察官ナスワイ”よ―――。
“判決!ジグルの名を抹消し、インシュビ―は
危険生物・グロリア・ポリスの観察下とする”
“検察官N、貴方はナスワイと言いましたね。ジリ、
計画は完結済です。それが何を指すのかは言いません。
それから私が暫く助力する当面の期間、ジリ、
彼の支援先を探して下さい。最後に私が去る頃には、
研究ラボの惨状だけに留めて置いてほしいのです。
頼みましたよ?ジリジリ”
―――――ふぅ・・・
「それは既に終わったのだ№721ジグル、いやインシュビ―の場合はな」
「そう、反応はまだある。雷も止んだ。直ちに私の方でも動くとしよう」
「ああ、頼むよ。君も“裁判官”などやっていると動き辛いだろう」
「そこはお互い様だろう?勿論、気を付けるよ」
「目立たぬうちに行動を開始してくれ。しかし、私にもよく分からない」
「何か問題でも?」
―――実は、このダス・ダ―ネスの総人口である、
計28億人がナンバーネームごと謎の失踪を遂げている。
約7日間でだ。いくら調査しても探せず一体どういう訳だろう、
とな・・・
「総人口が28億人も??・・・だが幹部は残っているのではないのかね」
「約千名ほどだ。トーティング・チップに反応するが」
「で、探せたと?」
「残念だが、失踪した者達に反応が無い」
「また人工生命体に頼るしかないな」
「居ないのだ」
「はぁっ!?・・・では生体ロボは?」
「反応がない。君はその件について何か知らないだろうか?ヒントでいい」
「その失踪事件なら知らないよ。ナスワイ、君もあまり目立たぬようにな」
“プツン”
何だか色々訳ありだな。
そうか、アレは消し炭になって尚も足掻き『親』を求めるのだな・・・。
アレには『愛情』を、君と異なる『意志』を、与えてあげなくてはな・・・。
そして彼女にも『疼』を分け与えてあげよう・・・。
では“友”よ、それでいいかな?
―――頼むぞ“友”よ。
“―――チュンーチュン―、ピチュ―、ピ、パタタタタ・・・”
友か・・・
久しいな。
ミヘルとジグルの掛け合い、私―意志―お前 の表現はWordの空白で編集しました。
最後二人のセリフと本心の表現の枠のせいで見えにくく、むしろ小説の表現というより漫画ぽくなりました。それはフォダヴィードとインシュビ―の話にも同様の表現を用いています。




