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ー7ー闇の世界線「モノゴトリー」  作者: 醒疹御六時
第三章 遥かなる高みへ
72/82

―畏怖―命の灯

亞里亞は活きたネジ。

ALIRは壊れた人形をモチーフとしています。

――異歴???年3月、夜の孤島

“サァァ―――、ザザ―・・・ン、シュウウゥ――、ザアァ―ン”

「あれから721年経つね」

言葉を発するは、静かな海とひとつの眩い光、僅かな自然との向き合い、そしてひとつの機械生命体、そこには虹色の光が空に混じり赤い糸を連れて泳いでいたのだった。

「私の場合、体の衰えも感じられないよ」


数世紀と経つそれから、臣子家の血族はジパン大国の空、フィ―ン・ツヴァイ星雲へと向かった。孝弘の本書『予言書』には文明による“人類絶滅計画”が描かれていた。それは赤い糸で“魔核放射線”と呼ばれていたモノを示していたのである。数々の文明によって生身の人間に害を成すそれは人の手によって生み出されたのだった。


「これは始まり?それとも滅亡?」

「とても寂しくて生身の心臓と機械の体が震えてしまうの」

「誰も温めてはくれなくて、冷たさも感じられなくて・・・」

「光の束もどこかへ広がっていった。この預言書・・・ペラッ」

「著者の名前が載ってない・・・ソッ」

「孝弘大おじさんのお父さん、年齢的なスランプに差し掛かっていた頃ね」

“サアァァ――・・・スウゥィイ、ザッパァ――ッン”

身体記憶能力も35歳のまま止まっている。小島にただ独り住むその女性は亡き祖父のあの言葉を思い出す。だが人は文明を進めてしまい、魔核放射線という人体組織細胞を破裂させる“糸”を残して人類絶滅を逃れるために人工生命体の製造工程を速めていった。それがこの女性のように寂しくも辛く我慢を押し殺してきた反動、その永劫の時が故に彼女は唯々、涙したのだ。涙はその身に残った光体の分離液体であった。


「お爺ィ。あれはね呪い言葉なんかじゃない。人の切望と希望に願望なんだよ」

“玩具が壊れた・・・それは、辛く我慢の出来ない程の痛みなのかな?”

「そうなの。私は機械生命体でお爺ィの傑作と才能が詰まったオリジナル製品だった」


オリジナルとはプロトタイプと呼ばれし存在のこと。新しい生命体の開発と製造のための研究データーとなり、魂の母体ともなってきた。文明とは儚くも様々な望みを見出すもの。その望みは量産へと託されその性能向上も図られた。完成した量産型非核融合生命体はオリジナルの非核融合生命体よりも1,092%ものRD(リヴ―ンディスト=ROH・DOFの次世代エネルギーで再構成と再構築を促す)出力を示し、新たな宇宙移民計画へと踏込む礎となった。その数19万体。一体あたり5万人と95億人分の食料と資材を生産できる。だが出発当時の人口は102億人と足りていなかった。人的な補助には遠く及ばない。

宇宙移民計画の為の出発にも276年と掛かった。


「ほんとう、長かった。人は待ちきれないというけど・・・期待通りだった」


当時はライト・オブ・ホールのエネルギー供給率を上げるための工程も急速展開され、中にはプロトタイプの媒体を介して母船となるモノの開発をも進められていた。人工知能搭載型、超巨大輸送ロケット“ヒカリノカナタ”は年に36回のペースで発射されていた。

ではオリジナルでプロトタイプだった彼女は一体何者なのか?

答えてくれるのは“亡き祖父ただ一人”だけだった。


「お爺ィ、私の言葉は届いているの?お爺ィの魂よ。私は期待に応えて見せたのよ?」

「この手は爪の間をチューブが通っていた。この目は量産型の瞳孔反応速度の採取用」

「私の脳には超広域型センサーと異空間予測的チップに光体パイプが繋がれていた」

「この人工型心臓だって量産型生命体とライト・オブ・ホール発生器の媒介役で」

「で、これが文明の希望?それを宇宙へ求め移民したその生命達の輝きとは?」

「蒼き星よ。あまねく魂たちよ。その命は何処へと向かってゆくの?」

“スウゥゥ―――・・・・ザワワワワ――・・・・シュワ、ザァァ――”

答えは返って来なかった。虫の物音さえないこの蒼の星は、チラチラと映る輝きが彼女の義眼へと映される。そう、人で居られる事は羨ましいのだと。それ等が彼女にとっては永くも抱えてきた耐えがたい痛みだと強い記憶として残るにはあまりにも長すぎた。もう人類が移民を果たし随分時が流れたというのに。


「皆、この星から居なくなって429年」

「声とか音なら録音してあるけど・・・カチ、カチャ」

「あ、私もこの建物もライト・オブ・ホールの光源が切れていたね・・・」

「うぅ~~ん、誰も居ない、私は一つの個体・・・もう寿命だね~」

「光源率は、あと24%もある。個体の交換もできなくなった」

「私は壊れゆくモノ・・・新たな生命が到着しなくては」


知り得る両親も子供達も彼女には魂でしかなかった。そこに生活も温もりも友達さえも居なくて、唯々、祖父の研究と実験だけに向き合っていた。そんな彼女が人類の望みを灯すために1個体として使命を果たし生きてきた。そこには何故だか、祖父だけの魂が存在しない。どうして居ないのかは虫も土も草も木も風も空も海さえも教えてくれないのだ。

“ヒュウィィ―・・・、サア―――ァァ・・・”

「お爺ィを探したよ。でも私の前には見えない―ツ―」

「私だけは、皆に先だたれて―ヴン」

「それで我慢してきたの―ピ―ィ―ン」

「ねぇ、魂たちよ。今夜は何を話すの?―ジッ、シュ―」

“そう・・・ではね、この飛び言葉を言ってごらん?”


――『踊る人形と壊れた人形』


遥か昔のこと、小さな星の時計の針が止まっていた。


その星に住む大きな発明家のお爺さんと小さな子が壊れた“踊る人形”を見て困っていた。小さな子は“どうすれば人形が踊れるようになるの”とお爺さんに尋ねた。お爺さんは人形に“どこが壊れたのか・どうして踊れなくなったのかと聞いてごらん”と伝えてみせた。すると小さな子はその人形に“どこが壊れたの・どうしたら踊れるようになるの”と尋ねてみせた。すると人形は“背中のネジがどこかへ飛んだ・ネジはそこの穴のほうまで落ちた”と答えるのだった。するとお爺さんは自分の机にある“スプーンの持ち手”を人形の背中へ差し込んだのだ。


すると、どういう事だろう?

人形の背中にある“歯車”が回りだし煙を上げたではないか。


人形は小さな子の前で踊り始めて“こんにちはお嬢さん”と挨拶までし始めていた。お爺さんは驚いた。なぜ“壊れた人形が踊り挨拶をし始めるのか”と。そこで踊る人形はお爺さんのほうまで歩きお礼を伝え“この言葉を小さな子へ伝えてほしい”とお願いした。その人形のお願いとは“小さな子が壊れた時”に伝える“おまじない”だという。そのおまじないとは小さな子が旅立つための“たったの一言”だけ。人形は小さな子の傍まで歩き―――、

『――さあ、小さな子よ。その“おまじない”をキミへ伝える時がようやくやって来たのだ!キミの旅立ちの準備はすでに整っているかな――?』

―――と言い出した。小さな子は首を傾けてお爺さんに“外へ連れて行って”とお願した。でもお爺さんは“もう貧乏で歩けないから自分で歩きなさい”と教える。小さな子は恐る恐る扉を開けて外へと歩いていった。そして・・・その子は壊れた人形となって違う星の家族のもとへと渡っていった。


こうして止まっていた小さな星の時計の針がふたたび回り始めたとさ―――。


――おわり。


“ヒュウウゥ―――・・・パタパタ・・・”

「あら?私が、それを言ってもいいのね・・・?―ピュン」

“ああ構わないさ。よく生きてきたしそのご褒美をやろう”

「あなたは誰の魂?私の知らない魂よ、ご褒美とは何ぞ?―プツ、ピ―」

“それは、儂が合図をするから言ってごらん”

「おやおや~あなたは碑色の魂ね?ビビ、さぁ我等が“ともだち”よ、ブブ、ッツィ」

“我等が『いのち』よ。さあ――、言うぞ?ヨーイ―――”

その後、プロトタイプALIRはその長きにわたる生命活動を静かに終えた。

そして畏怖の世界線ジパン・バルラーと位置付けられた宇宙空間はライト・オブ・ホールを見送るようにその文明は様々な生命体を誕生させ、研究データーALIRの魂を再び受け継ぐ形で“光の世界線ジパン・メギド”へと変貌を遂げたのだった。そして、1万4,289光年もの時を経て次元間干渉にて惑星同盟を築き上げたのだった。


――えへっ!

プツン――ビビィ、パシュン―

プ―ッ―ツン!―ガタッ

――・・・パサ、ペラ・・・

『―p345項、彌汲治具流みくみ・じぐるより愛をこめて―』

“ザザー―ン、サアアァァ―――シュワワァ――ザッパァン”



本来の設定では人類も世界も滅亡しません。

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