63、闇の住人、そして友人よ
「俺達の望む場所は何だったのか、お前も覚えていた筈だろう・・・」
「もう済んだことだろう?それとも未だに僕を引き留めようとするの?」
「お前を引き留める者など、無理して・・・ダメだろう?」
「・・・ライズ、君を呼ぶ人を忘れてはいけないだろうに・・・」
俺は新天地パヘクワードの前である畏怖の世界線“ジパン・バルラー”で住んでいた。友人であった道彦は自らの体と引き換えに光を望んでいた。それがもとでジグルへ変容したことにより新天地パヘクワードで彼は貧困生活だった。
そんな闇を抱えながらも懸命に勉学へ勤しみ平和を望んだ。その結果が王国の陰謀だったわけで光のない変容の定めにより姿も住む世界も中身もすべて入れかわった。彼の名称は№721だったが、ここでの名前は聞いていなかったな。
ミヘルが居たらこの事態を悲しんでいただろう。
世界線が終わる前に決着を付けなければいけない。
―――その瞬間、
俺達は大きな力に包まれた―――
―――シュンッ――パツ――ンッ
「ライト・オブ・ホールが止まった?どういうことだ?さっきまで激しい電磁波が破裂しそうだったのに、何が起きた?」
「冷却装置が働いたようだね。もう変容が始まったんだ。その光の収束率はおよそ300%で消費される。ライト・オブ・ホールでさえも食事を摂り運動をし排出するのだからエネルギーは膨大。そしてキミと僕が取り残されるのも当然の事では?」
(違う。光の送信と共に受診する側の世界線で何かが起きた。それにイーターの言う、前世の世界線でエネルギーを大量消費したとも聞き取れた。闇の女神フォダネス、それは王の頭脳であり何らかの力が・・・?)
「ねぇライズ?返事がないなあ。気でも狂ったのかい?」
「ブツブツ・・・俺が何をしたんだ・・・?」
既に人工物で皮膚も骨格も造られているジグルが笑みを浮かべている。どうやら血色も赤でなく青に変わるらしい。これがライト・オブ・ホールの技術の一部なのかとも思った。だがその変容で分解するなら世界線同士でなくても宇宙間にも転送できる様だと感じる。
俺も変容するなら闇に落ちているかもしれない。そうなれば破壊を生むのだろうか。
「どこだ・・・ブツブツ・・・変容と破壊・・・?」
例えばジグルは何かと闇を抱えていたが、それは仲間を救うと偽った事をお前が教えてくれたし俺もそのように納得した。つまりこの宇宙の一部の光では偽りを正すことさえ相当のエネルギーを消費するという意味だ。
だが歴史は進むし繰返しもする。道彦の編み出したというジパンでの魔法技術は偽りの愛だった。今更戻すことも出来ないのだろう。
「僕はもう変容を超えたんだ。決してジグルへ戻る事はないよ」
ジグルは次こそは平和を望んでいたいものだと言って俺の眼をジロリと直視する。彼の妻は“今のところ”ミヘルだよ、と。その不妊である子供自身が彼のウィナートの名を授けられ、ミヘルの何かで造った“人工生物”だと表現してみせた。
しかし既に1万体以上の量産型人工生命体も微力ながらモノゴトリー協会で密かに暮らしている事を俺に確認する。するとジグル自身がその人工生物を用いて宇宙移民計画の実行のために命令する道具だとして、“こしらえた”と言って表明してみせた。だが“こんな表現はどうだ”と俺から放つ。
「お前は危険因子だ・・・ジグル・・・そして道彦会いたかった」
「愚かだなぁ、孝弘は・・・そして、ライズ・・・会いたかった」
二人で視線を合わす。俺が親友だとしていた道彦だったジグルも俺と同じように世界線を延々と辿り抜けていた事を放ち返した。そしてジパンから新天地パヘクワード、そしてモノゴトリー・・・幾度も変容を果たしてきた。
そのジグルが本当は何を計画していたのか、あのとき俺は彼の何かを見逃していたようだった。例えば主人と従者の関係だとする。
「ジグル、俺は大いなる意志から導かれた。お前も同じくライト・オブ・ホールから落ちてきた。生命誕生から人体実験は禁止されている。王ならその意志に従うのだ」
「ダメだライズ。僕はダーク・オブ・ホールから産まれた魔法生物だったんだよ?」
ジグルは自分が主人の従者ではない事を言い表す。それから畏怖の世界線ジパン・バルラーで19歳に株式会社ヒカリノキョウカイで俺と同期だった頃、闇の住人である“パダン”という魔導士と出逢ったという。
バダンは道彦であった彼に対し“ジパン大国ではただの凡人だった”と唱えていたと言う。それが密かに人工生物の研究所で働いていたに過ぎない等と放たれる事もあり、数十年もの苦悩を抱えていたという。だが、それはジグル自身の意志あっての事なのかは教えてくれず『なんと可哀そうな“俺”だろうか』と濁すのだった。
だがそれと同時に起きる俺の意識の奥底にある“魂”には悲しみしか浮かばなかった。
――そうか、意志よりも固いお前が可哀そうな程に脆くも崩れ去るというのか。
従者は主人に事の実を話すのでさえためらう事がある。それは凡人という傲慢さにある。だが少し残念だった。たとえ王だったとしても俺と道彦はそこでも幼馴染だった訳もある。
そのジパン大国の理会純学園で俺は数学で彼は理系を学んできた。その彼が16歳のときに親を失い私立研究大学への受験競争に勤しんでいたと俺の記憶に流れてきている。その体はどこか闇と異質な感覚があった。
彼がまだ光の欠片を宿しているのなら“どうか間に合ってくれ”と願うのだ。
「魔法生物だから無傷だった。それ自体は闇でなく寧ろ暖かでひとつの人間で光だよ」
彼は光の心を持った人物だった。それが19歳になって“株式会社、ヒカリノキョウカイ”で俺と同僚になり上司の相木先輩に誘われて生物学を学んだ。そこは営業利益もさることながら研究もあり大変だったがそれなりの報酬は得られた。
だが25歳で俺達10名の独立会社を設立するとその研究は実用化まで程遠く純利益は低迷していた。だから休日はよく公園で語り合い食事の誘いたも楽しめていたのだ。その俺達が“闇の災厄”によって俺達が離れ離れになるまでは―――。
「闇の災厄かぁ、懐かしいな。実はあれ、人工のダーク・オブ・ホールで僕の親にあたる“支配の魔王アスラゲージ”の欠片なんだよ。しかしそのあと“闇の一片”だった僕が光の王国エイドカントリーズで人工生物の研究施設があったことを見つけたんだ。そこで生命体の元素である魔核鉱石のことを調べていたんだよ。そこに光の一片すらなかったがね?」
「光を閉ざし闇を抱いていた。だから俺のいない間に本書を漁っていたんだな?」
「いや、キミが居ても居なくても僕は勝手に行動していたさ。あの後の内乱で僕はライト・オブ・ホールから落ち、モノゴトリーで記憶と意識を保ったまま街の道路で目覚めた。勿論、協会に連れていかれる予定だったが偶然ミヘルと会っていたんだよ」
「ああ、確かにそれで通信機を使えていなかった・・・」
「ところが彼女は記憶を失う前に誰かと通信していたようだった。僕がライト・オブ・ホールの電波を回収したけど、彼女は通信機も使えず街で心も彷徨っていた訳じゃない」
―――さっきと話が違う。イーターも確認した筈だったものが、違うと言っている。それではジグルとイーターが最初から手を組んでいたとでも言うのか―――。
ーーーー
“やぁ、ミヘルを手間取らせた僕のせいだ。計画に誤りがあったんだ”
“実は彼女の計画にとってそれは無駄で細心の敬意を払ったのに不都合だったらしい。”
“僕はまだそこへ向かうつもりは無いんだ。まだやっておく事もあって楽じゃないね”
“そして手間をかけたな。君達もはやく変容してくれよ。これも敬意なんだ”
ーーーー
―――待て、お前は計画をまた自分の闇で抱えるつもりなのか?
「知っているかな?自らの記憶をすり替える事は人の身には大きな代償がつくのだよ」
―――あなたは?俺に教えを説くあなたの名前は?
「そこで遊びと手加減を伝えておきたい。恐らく君が以前の記憶を取り戻したとしても到底辿り着けないであろう真実が起きるはずだ。そこを戸惑わせる場面もあるだろうが、どうか彼の話を最後まで聞いてあげてくれ。いいか?それも計画の内なのだと思い出せばそれは必ず君の味方になる。その身に覚えさせておいてくれ」
―――
――それを、壊したというよ。
「どうやら彼女、ミヘルがライト・オブ・ホールの中で壊してしまったようだ。さっき言っていたようにライト・オブ・ホールとダーク・オブ・ホールは兄弟みたいなものだよね。ブラックホールって名前・・・。あのとき偶然、イーターが見掛けたレド・カソルトの先にある山にあっただろう?あれがそう、ブラックホールだったんだよ」
レド・カソルト。それはイーターが俺達と新天地計画を各国へ認めさせる旅をしていたときに偶然発見したものだった。だが謎なのが2つのホールを掛け合わせると、全ての世界線を崩壊させるほどのエネルギーを発するソレがなぜか直立した形を保っていたのだろう?
――――それはエネルギーが変容しているからだ。
「“ブラックホール”って渦を巻いている楕円形のものもあれば、長方形のものも在るようだね。でもその2つのホールが同時に発生していた。それに実はミヘルは未完成のライト・オブ・ホールで発見されていたみたいなんだ。それが裏・・・いや、“闇の世界線”であるモノゴトリー協会へ繋がる柱と知ってしまった。先に僕とイーターにそんなことがバレると不味いだろう?だってイーターは“元・闇の女神”だったし、その魔力の繋がる闇の住人にまで知らされてしまうと、全ての世界線からモンスターが呼び寄せられる。そのことを知ってのことだろう。別の空間の施設にでも通信を送っていたのかも知れないね」
――あまり知らずともいずれ人は手を取るだろう。
イーターは元・女神でなく“闇の女王”とあまりに違う。“道彦ジグル”に話を続けて貰うか。それに、伝説のダークエネルギー、ブラックホールの中の世界線まで存在していたのか?
怖い事にブラックホールは既に2580京単位もの束の存在が認められているハズで、そんな超強力なエネルギーの中で生命は存在できるというのなら網模様のように伸び飴同様溶けてしまうだろう。
例え人工生命体でも機械生命体であっても無理ではないか?
――――3年間でブラックホールの束は形成可能だ。
「まぁ、いつまでも置いとく訳にいかないよね。ミヘルは。彼女はそのブラックホールの内側にある漆黒の障壁にぶつかってしまっていてね、それでパヘクワードでのことや僕達の記憶を失ったようなんだけど・・・」
どうもジグルは焦りを隠せずに何かを探している様だった。ミヘルは何も調査が出来ずに道彦ジグルの陰謀に戸惑いダス・ダ―ネスの地で偽りの夫婦となったらしい。それで通信を終えたあとにその相手との関係が途絶えたのなら事は重大とも感じている様だった。
その通信先がもし宇宙の外だとするといつでも全世界線の存在を明かされる事態へと発展し、それ等の争奪戦となる事を示していた。そこは分かっている。
その話がほんとうならばミヘル自体の魂は元々何かの魂であり別次元から現れたのだという事を示している。
「そのままミヘルをナイフで刺してその血を一つ残らず“魔核鉱石”へ移したのさ」
ジグルは反抗的な答え方を示した。ジグル自身がミヘルは妻でなく人形にしたと言い始めた。次に以前の記憶に在る新天地パヘクワードの世界線で俺と出会う前に、ジグルには意識があったのだという構成を表し始める。
その意識を保ったまま記憶も落ちることなくモノゴトリーで再び俺にも出会い、不自由だったのも実はライト・オブ・ホールの恩恵だといい放ち、それは事故だったとそれとなく俺の出方を窺う様子で示している。
「だけどねぇ――」
――モノゴトリー協会の総主、実は僕だったんだよ。名前は“テュディス・カウ”だ。破棄を意味する。キミは知らないけどさァ、前の総主は闇から消されたんだよ。
「ジグル・・・、新天地でイーターを抱き・・・ココで実験したのだろう?」
「ああ、ビードという少年だねぇ?それは――」
ジグルは自らの体液を虹の鉱石の粉末と合成させてそれをイーターの子宮へ移し、変容を遂げて彼女は妊娠していたという。それがビードであり人工生命体よりも上の身体記憶能力、脳領域、意識反応速度、認知機能をたたき出し、究極データーで産み出せたと自画自賛する。
そこまで称賛を得たいなら彼はなぜ、王国エイドカントリーズで新天地計画に参加したのに、パヘクワードではその“闇”をも扱えていなかったのだろう、と俺は考えた。
「これが王の力、博士号を得た威力ゥ、闇の魔法ォォ~ゥ、つまり魔道生物さぁあ!!」
俺が考えるその即座にビードが魔道生物とも言うが『“あんな女”を僕が抱く訳ないだろう』といった個人的な意見を覗かせる。だが俺にとってイーターもミヘルも仲間だった。
二人ともこのような実験に付き合ったことを思うと“畜生・外道”と表現したくもなった。俺は怒った。ジグル自身がインシュビ―となって尚、総主としての立場が以前より強く求めた『究極の答え』なのかと。
――お前というヤツは・・・
ジグル・ウィナート、推定年齢55歳・・・またの名を光の王インシュビ―。
力を失い闇の住人に拾われダーク・オブ・ホールでその魂の再生を果たした。母体は闇の女王フォダネス。民の称えにより王として君臨するが力を失いライト・オブ・ホールで変容。また闇の住人に拾われる。
――そこが0で輪廻転生と・・・。
次に臣子道彦・・・俺の幼馴染で友人。生体学を専攻、人工生命体の核細胞の生体移植、核融合生命体、人工生命体への移植術、そしてライト・オブ・バースト、闇の災厄をも生み出した。そして――インシュビ―との交信を果たしていた―――!
――何という意志――執着――・・・
新天地パヘクワードの壊滅・・・闇を抱えたお前が王国エイドカントリーズへ潜伏、闇との共鳴、母だったイーターを実験し、魔道をも導いた・・・それがジグルとイーターの息子ビード。あの子も実験し“究極とは違う方向の”魔道生物へとしたというのか。
そしてサンシャイン現象・・・世界線を蹂躙したお前自身の魂が生み出した超自然界ダス・ダ―ネス。ミヘルをも実験し子を宿させ、被検体を並べて俺をも宇宙移民計画のための実験素材としようとする―――
――そう1だ・・・
ジグルこそ――モノゴトリーのすべて―――
ジパンでは人体実験、パヘクワードでは政治的陰謀による暗殺を―――
マジェス殿下とスタヴァ―だけでなくイーターにミヘルまでも犯した―――
ビードにディズ・ウィナート。能力も年齢も変化する生命体―――
その他、犠牲者は計り知れない数となるのだろう―――
――お前の思想は――闇=1だよ――
「それで、俺の行動一部始終を見張っていたのか」
それにデイジーだったイーターのことも一応裏切らない様にと監視していた。お前はあの王国で書物を漁っていたが結局、闇である議員を操り人工生物となる鉱石は7つの騎士にも埋め込まれていた。
道理で俺とミヘルを如何にも仲間に仕立てたようにライト・オブ・ホールへ送りこめた訳だ。では、俺はここでコイツに消されるという終わりを感じた。
“ドン―ドン―ドン――ドクッドクッドク!”
眩暈がする。畏怖とも呼べるその経緯、臓腑を揉みあげられ下がる様な痛み、心臓の脈が音を立てるのを感じ、生ぬるくも冷えた汗が垂れ落ちてゆく・・・。
「あはは、どうしたんだぁ~ライズゥゥ!私がこれほどの力を身に付けた人工生命体だと知れば“王の力”などもう必要はないィ!頭脳は“究極”生命体との干渉が原因だよォ!だからねぇ~キミの子、インシュビ―の魂は受け継いだんだよぉ~父ぉさぁぁん―――!!」
“ドグン、ドグン――ドン、ドン、ドン――ドッドッドッ―――!”
ヤツの力が増すのを感じ俺の心臓が躍る。ヤツの体の骨格が突き出し肉を膨らませる。
(う、あ・・・こ、この野郎・・・急に力が膨らんできた・・・)
俺は恐怖する。だがブラックホールが発動したのなら?
(うぅ・・・俺の役目もコレで変わるの・・・かなぁ~?・・・ハハ・・・)
しかしライト・オブ・ホールは起動していない!目に見えるその光景『もう終わりか』と目が訴えるのを感じ取れ俺は慌てた。全高3メートルまで膨らむヤツを見上げ怯えているだけだ。それではいけない。まだ俺は人工生命体と呼ぶに値せず眩き王の力を引き出せないままで居たのでは・・・!。
(う・・・うぅ・・・っ!こ・・・殺される・・・ッ!)
記憶は訴える。魂の変容とはそう安易にいかないのだと。それは『殺される』という恐怖、不安、危険、脅迫、人の身であるのなら目の前のその岸壁に痺れ神経が感じられなくなるような感覚に陥る。誰かを思い起こす『助けて』と。これこそ絶望なのだと訴える。
あぁ、スタヴァ―様・・・
あの時はごめんなさい・・・。
俺が貴女の傍を離れてまでその道を選んだばかりにこのような事態になった・・・
――イズ・・ライ・・―ズ・・・!
“ライズ、そこを離れなさい”
ライト・オブ・ホールの向こうから声が聞こえた。絶望を感じていたときに察したように表れるそれは“彼の約束”なのか?俺は以前の記憶から覚えのある声と認識した。
“姫様・・・貴女ですか?”
“えぇ、そうです。あなたの、魂はあのとき二つに分けられていたのです”
“どういう事・・・?”
その声、スタヴァ―は答えた。どういう事かというと、その魂の一つは俺ではないライズで現世界次元を通過している事、もう一つの魂がミヘルだった事を告げる。
しかしそれ自体が世界線転移に起きうる奇想天外な事故であり、その彼女の魂だけがパヘクワードよりも遥か別の次元を超えてこの闇の世界線まで漂ってきたのだと答える。
そして現にジグル自体がインシュビ―として“完了した”時点でミヘルは俺の魂と一体となっている“予兆”を示す事が起きている“5大要素”とも答えた。
“複雑だ。しかも俺は人工生命体で、その意識の奥底からは何ら感じられていないッ!”
“大丈夫。眩き光の王となって、ブレトル。覇王となったジグル、いいえ光の王インュビ―は、フォダネスを生贄にしようとしています。いずれ私は、あなたと共に世界線を――”
――ジジジ―ィィイッ――――イィップツンッ―――
(だから、道彦とフォダネスの世界線が並行していたのか。ライズとミヘルでなく・・・俺とミヘルだった・・・!―――“虹色の姫君よ”―――)
―――ジュオオオオォ―――ッ
(何?またライト・オブ・ホールが発動した。それもさっきより高濃度のエネルギーを発している・・・250%?これなら俺も変容が出来る・・・)
――離れなければ・・・っ!
“ドン――ッ!!!”
――ラウン・リジシー
「父さん、僕から“また”逃げたんだね。さあ彼をどうしようか?“道彦君”」
「そうだな、俺の創ったこの闇の世界線を壊滅させておこう。それにこの巨体だ。お前も次の世界線へ向かった時に総主とか人工生命体とか名乗るなよ?王とはいえ“服も無い”しな」
「任せて。それじゃまず、この“ビード”という人工生命体をこの肉体へ移そうかな?」
「その肉体は“デイジー”という者だったな。丁度魂が変容を遂げようとしている。それでどちらも意識を失っているのか?下手に動かすと我等をも飲み込みかねんよ」
「うん。まずは、彼女を解体してこの子へ移植しよう。これほど膨張したライト・オブ・ホールのエネルギーを移せば究極生命体として誕生するだろう。さあ“オペ”をしよう」
「待て、先程ライズへ究極生命体と説明していなかったか?ビードの事じゃなかったのか?デイジーはそう思い込んでいた様だが?」
「ふふ、あれは究極という名の人工生命体を意味するモノだ。確かミイネン博士もデイジーへ説明するのに苦悩していたようでナスワイ先生からそんな報告があった。だからこそさ敢えて説明しておかないと純粋な――」
”なぁ、お前ともし一緒に居られたなら、これを託すよ。万が一の事を考えて”
・・・じゅん、すい・・・
・・・な・・・?
”お前が居なくては、どうにかなりそうな時に、誰が守るんだ。お前自身だろうが”
「いいや、すまない」
どうもライト・オブ・ホールの磁場が反転したようで、言い直さなくてはね。
――――彼は真に受けやすいんだよ。あんなに声を合わせていた筈なのに・・・。
・・・こえ・・・を?
”はっきりしただろう。空気を吸えよ、汚い部屋に居ないでさ”
・・・はっきりと・・・だと。
”おい、覚えていないのか。仕方のない事だ、傷が癒えるのに時間が掛かるだろ”
そんな事は・・・
「もう、いい、今はどうでもいいだろ」
だが――、そうか――、覚えておこう―――。
”ノシ、ドシ、ノシ、ドス、”
この話はココで終える予定でした。
インシュビ―は次代の世界線にそのまま変容を迎えていました。
設定資料の関係上、ここからストーリーを大幅追加したのです。




