迎えに来たよ、もう還ろうよ
本来、ブレトルの魂が再び呼び覚まされるシーンを廃案。
前のエピソード含め、描写制限=R指定の壁に一週間は悩まされました。
「待ちなさい!」
閃光の中心からその何者かが現れた。細く長身でけたたましい男の声?その声により空間が強く横へと流れてゆくのを感じた。それは懐かしい何か?ダーク・オブ・ホールの気流が今度は俺を支配しようとする。だがその声を俺は微かに覚えているのだ。
―――誰です、私の脳領域に入って来られるモノなど存在しないはず。
「“待ちなさいと言っている。丁度私は彼と再び会ってみたくてね、ライト・オブ・ホールを彷徨っていたらこんな所へ抜け出せたのだ。微かな波動を追ってきたのだよ”」
―――これが波動?いいえ小さな存在よこれは私の愛、貴方も私の胸の中で眠りに着きに来たのですね。いいですよ、これを食べて貴方も私と共に行きましょうね。
「“これでも小さいというのか。あんたは私よりも『大きな意志』だと説き続けているようではないか。天使とはその様な『小さき存在』には目に付けない筈だよ?ドレスミー君、あんた本当は子供なのだろう?天使マーサ・キャルクは『ザモース・エンプスティ』で起きたビッグバンによって抹消されている筈だ、『魅惑の民アマテス』よ・・・我が意志を受け継ぎし生命のひとつよ、天使に闇はいかんだろう?私が振り払って差し上げようかね“」
(こ・・・この声は?)
―――何を言う。闇はエネルギーを生んだのです。それは光と違う声を示しているのです。文明を造れたのは何も人だけではありません。人以外の生命でさえ文明を築き歴史に名を刻んできた。それも闇の力が加わるからこそ光が保てた何よりの証!最古の世界線にも降臨した貴方が今頃になって闇の世界線で人の指導者としてナンバーネームを導いてきた。しかも彼がグロリアランドへ向かう前に貴方は姿を晦ました。あの時の様に何故彷徨ってきたのです?彼は人工生命体を造るための媒体となるのです!そしてその身に宿る魂をも捧げるのですよ!それが光のみが映し出した結果だァァ―――!!
(・・・み・・見えない、ダーク・オブ・ホールの闇では・・・)
「“ふむ、称賛しよう。ところでライズよ、我が娘の抱く『闇』を垣間見たようだな。そしてアマテスよ№39デイジーをどの様に仕向けて居たいのだ。まさか最古の世界線の頃のように操るというのかねぇ?このままアマテスの中を見るのもいいがデイジーはどうだね?この『遊びと手加減』は君の好きにしろと告げてはおらんのだよ。さて・・・”」
『さて』の一言が放たれるとダーク・オブ・ホールの闇がかき消えるのを感じた。
―――な・・・闇が消えた・・・?
「“だから言ったろう?君の好きにしろと告げてはおらんと”」
―――はぁ・・・天使というのも万能ではないのですよ。ライズはまだ記憶の奥底で彼女と2度別れてきたのです。彼の“友人”に眠る闇によって図られまた彼を愛そうという魂の繋がりは魅惑の力を以ってしても奪う事はできない。だからライズを誘い教えてきた。なのに私の闇はまったく晴れていなかったのです!
「“当然だ。ここは闇だ。モノゴトリー協会という闇なのだ。それにね、あんたはやり過ぎたんだよォ~?それに無理が来てこの世界線で洋服屋を営んでいた。そこで出逢ったのがライズだった。彼に眠る『王の力の中の大いなる意志』によって導かれたのだよ。我が魂によってな。それが何故デイジーに拘るのだ。怒らんから応えろ”」
―――私は彼女の魂である“フォダネス”と交信したのです。魅惑の民に連れられた私にとって理解者が必要だった。私は民の教えとして踊りを習い神の意志によって魅惑の神と崇められてきた。そこにフォダネスが蛇の民に混じり共に遊びに来ていたのです。
(・・・モノゴトリー協会の闇・・・そしてデイジーがフォダネス・・・?)
「“ふふふ、それも彼女の過去に触れるように苦しいのだ。闇と言っているがその『糞』が、あんたを変えたのだなぁ~アマテスよぉ。いいだろう!私が聞いてあげよう”」
―――私は彼女に約束しました。親として彼女を見守りたいと言って魅惑の民の中へ誘いました。彼女は私と共に踊りました。まるで金の翼が栄えているかのような光に包まれて。そして私が男に抱かれると幼い彼女も男に抱かれました。私が糞にまみれるとあの子も糞にまみれたの。だから私はこの子を守ると誓ったのです!するとどうでしょう?二人が血に混じり食事が錆びると金が闇に代わる瞬間を感じられたのですよ~。私は彼女へ蛇の民の元へ戻り“闇の女王”として君臨するよう告げましたからねぇぇ―――。
(・・・抱かれた?デイジーが闇の女王・・・?)
「“アマテス目を覚ますのだ。あんたのそれは“スペイディ・メンション(途方)”に過ぎないよ。その身に宿す闇のなか、自分の拠所を求めそこで出逢ったのが金色を放つ少女、フォダネスだ。彼女は幼き頃より蛇の民の神として信託を授かろうとしていた。そこで彼女と出逢い自らの受けた傷を彼女へ差し向けている。その子をあんたと同じように女にしたのち、彼と契りを誓わせたのも実はアマテス、あんたなのだよ?“」
―――私は貴方のように愛すことなど知らずあの闇の中で売られ慰み者となってきたの!この様になった私が男を抱く事ばかり覚えてきた!私は常に死と隣り合わせだったァ!!
(以前の俺は知っている・・・彼女がどれほど罪成るモノ達を愛し赦してきたのかも!それは決して哀れみなんかじゃない!むしろ光そのものだった・・・ッ!)
「“哀れなる子よ、天使とは我等、創星の者達を見守り常に儚き愚かな物事をも希望へと導く存在だろう?それが見守ると告げ彼を抱いてみた。ところが彼の愛は全く揺らぐことも無くあの”王の器“を持っていた彼をもあんたの闇で閉じ込めているのだ。さあ彼を解放して私の元へと来るのだ”」
――魅惑の世界から解き放ち天使の衣を脱ぎ娘へと戻るのだ――
(彼女はすべてを赦しすべてに教えを与えた・・・ダーク・オブ・ホールはその教えをも変容させてしまうというのか・・・)
―――ああ創星主、父よ!私は・・・一体どうしたらよいの?私の翼を喜ぶ者達が現れてようやく魅惑の民から抜けられ彼とあの子を育ててきたというのに!その翼は私の痛みで作られてきたモノ!それで“ああ、来てよかった、またあの店に来よう”って言ってくれたのよ・・・私の闇を利用した彼の友人がダーク・オブ・ホールへ導いた!その翼がァ、翼がもがれたぁぁあアアァ――――ッ!うぅ、痛い、痛いよぉううぅぅゥ―――ッ!!
「“何を言う、哀れなアマテスよ。私と共に世界線を築こうぞ!ライズを愛したお前は弱い子ではなかった。だからこそお前は天使になれたのだろう?”」
(ドレスミーの動きが止まった?それに彼女の体がどんどん縮まる・・・風が吹く!)
ヒュウゥゥウゥゥウウゥゥゥウウゥ―――――――
――最古の世界線――闇の時代――
―――フォダネス、どこへ?私は新しい力を手にしたのですよ、おいで。
―――あのねぇ~天使がね、わたしをグーンと遠くへ飛べるようにしてあげるって!
―――天使?遠くへ?では、私はその力で天使となるの?ようやく遠くへ飛べると?
―――うん、そうだよぉ~~。アマテスは抱かれて壊れて踊らなくてもいいの~。
―――それならば早く成長なさい。貴女はこれから王となる私の分身なのです。
――時は過ぎてゆく。少女は大人へと変わっていった――
―――アマテスぅ~私、女王に選ばれたわ!この金に輝く体であの王に挑むのォ!
―――よく頑張りましたね。貴女はこれから闇の女王ですよ。眩き王にも負けない頭脳を持ち合わせるのです。あの貧しい生活、男に抱かれてきたその汚れた身を今こそ――!
――光の時代。星は待ってはくれないの。大人となれば産むのでしょう?――
―――申し訳ありません。私は王と契りを交わし身籠ったのです。天使マーサ、私は彼に導かれたのですよ。貴女とは、これで最後です・・・アマテス・・・さようなら!
―――フォダネぇぇぇ―――――スッ!!帰ってきてよォォ―独りは嫌ァァだ――ッ!!
うわぁァァァ――――ああああ―――ッ!!!
――――――ううううゥゥウウゥ――――――ッ
父と名乗る彼はそんな彼女の叫びを受入れる様に手を差し伸べ抱きしめるのだった。
「“もう、いいのだ――我が子よ、苦しむな――”」
“魅惑の民アマテス”と呼ばれし女の苦悩、空虚、孤独、苦痛をも抱きそれ等全てを赦した。やがてそれ等は解放され光の欠片となりダーク・オブ・ホールを浄化してゆく。
「“よしよし――アマテスよ――”」
―――うぁぁあああ――――トス、トス!――ああああ―――ゥアアあうあ―ッ
「“いま、迎えに来たよ――”」
―――あぁぁあん、あぁ――ポン、ポン!――ああぁぁ~~ん、あぁ―――!!
「“とても怖かったのだな――、父を『許せ』よ――もう、大丈夫だからな?”」
―――うぅ・・・えぐ、ひぐ・・・ひっ、ひっく・・・うん・・・“許す”!ぎゅッ
アマテスと呼ばれたドレスミーは、体に纏っていた赤い天使の衣をつかんで脱いでゆく。その体型は1メートル20センチの子供へと変わっていった。彼女は父親である彼にもたれかかり大声で泣いている。目の前の親子を見つめると不思議と解放されたようだった。それは黒と赤を兼ね備えた脅威的だったこの空間さえも緩めてゆくのだった。父親はそれら全てを“赦す”いつまでも――。もう長く滞在しない方がいいのだろう―――。
「ライズよ――どうしたのだ、私たち親子がそれほど珍しいのかな――?」
(いえ、№10あなたに――・・・、会えた!やっと会えた―――・・・ッ!!)
「“そう、ようやく会えたのだよ。ところでなァ――、あんたはアマテスを”抱いた“男だよ。本当は父として幸せにしてほしい。だからそれこそだ!こういう時は焦ってくれぇぇ。ぜひ誰かと相談するために焦ってくれよォォ?」
相変わらず彼は鋭い眼光でジッとこちらを見つめにじり寄る。彼は酒も飲まないのにこの調子。対して俺は媚びるような眼差しを与えていた。すると彼は表情を変えるのだ。王国を治めていた頃のようにかつてない程の声。俺へ約束という“願い”を届ける―――!
「でも焦っていてはダメなんでしょう?――それに去るなんて、折角会えたのに・・・」
「“それはもう、いいのだ。あんたは長く闘い己の記憶を取り戻すために既にこの子の教えを受け強く生きてきている。だからこそ決めてくれ、今度こそ守ると!”」
「でも、俺はあなたを知らないままだ。それにお礼もしていなかった・・・それなのに何故―・・・、なぜ急に居なくなったんですかァ――・・・今も・・・」
「“お礼――お礼かァ!ふむ、我が意志を充分堪能したのだからお礼はそれでよい。私はこの闇に追われていたのだがアマテスの真意によって導かれたのだ。人間のままでは生命の限度があるため、あんたや娘を守る事さえできなかったのだ。そして私もだが、今度はあんたから愛するのだろう?思い出せよ、あの約束を―――スタヴァ―を―――”」
“君はスタヴァ―を”娘として“愛していたのだろう?”
“ええ、愛しています。俺はきっと約束を果たします”
俺にそのような名前の記憶は無くどのように応えればいいのだろう。
俺には分からなかったがドレスミーには分かっていた。あの約束は以前どこかの世界線で誰かと交わした筈だと。するとの傍で泣いていたドレスミーが俺を見上げる様に何かを試すように問うのだった。
―――ライズぅ・・・わたしの事すきだった?
俺はこの問いに正直に答えた。素直で彼女の店へ洋服を買いに行ったあの頃のように。
「ええ、好きでした。あなたの洋服がとても気品に満ちていて俺の記憶にある痛みをほんのひと時だけ救ってくれたんです。お陰様でお客様にいい仕事を魅せられる事も出来たし、他の仕事場でもあなたの声が俺の言いたい声を一つ一つ与えてくれていたんですよ?覚えていますか、俺と初めて会った日を・・・」
――うん、覚えているよォ。でもライズはとても苦しくて辛くて恐れていたのォ~?
「いいえ、あなたの声、教え、感動・・・全てが俺の痛みを癒してくれていました。まだ雇用されて間もない俺の苦しみを“抱いてくれていました”。でもアレはもう食べたくありません・・・。そりゃ記憶が残り続ける苦しさは計り知れない。けれど推定年齢で決め付けられるとお客様も性別や年齢で決めてはいけない。それは記憶とは違う。俺はもう以前の記憶がない事に苦しみましたが、でも今の記憶はそれを忘れさせてくれました。そんなドレスミーさんへ、俺は感謝していたんです!」
――アレは“再生用のうんち”だしきっと大丈夫だよぉ~それに記憶もねぇ大事だし大切な約束を守るためにひつようだよぉ~だからずっと感謝しててね!ずっと愛してるよぉ!
「“ふふふ・・・まったく、君達は血の繋がった『親子』の様だなァ”」
「俺に親ですか・・・居たのかなァ・・・」
「ライズよ、もう一人の娘、スタヴァ―への愛を約束してくれよ。君が覚えていなくても私は忘れない。思い出せたその時には迎えに来るからな”マジェス“として――!”」
―――ライズもう、戻っていいよォ、だけどあの時と違う地平線をもういっかい見てみてね!特に虹なんて見えたらもうステキだよぉ~~?
「殿下・・・ドレスミー店長いや、アマテスさんありがとうございます!」
――――――
―――ドレスミーって名前は天使から貰ったのよ?かつての名前だと言っていたわ。
“でも、お父さん私の翼、もう無くなっちゃったわ。だから彼もきっと大丈夫よね?”
“大丈夫だよ。きっと自身の記憶を掴んで見せるだろう。それに成長の早いお前のことだ。翼も私が繕ってやろう。もう一度空を飛べるように誰かに喜んでもらえる様にしよう!”
“ええ、赤い絨毯は決意の証だって覚えてくれるといいわね。記憶は続くけど”
―――もう、充分この世界線を漂ってきた。
もう、彼等も大丈夫だ―――
なァ――“還ろう”よなぁ!
そして―――、再び迎えに来るからな―――
―――我が意志、―――我が息子よ――――――ッ!
「ええ、ようやく地平線の虹を見られましたよ」
それに知っていましたか?
油と雨と眩しい太陽と重なりそれが七色を形成するということを!
「もう、名前も存在さえも知らない。でも教えは―――」
―――――
「ボクは思うんです・・・。あの脅威が怖くて、どうすれば?」
「その服、古くて着られませんよね?破れていて・・・何か深い絆でも?」
「これは・・・“死に別れた妻”との思い出・・・4歳の子供を残して・・・」
「時に思い出とは罪深きもの。もう囚われないで灰にしてしまいましょう」
そして――、ようこそ!ダーク・オブ・ホールへ――
そして――、来るのです!
――私の闇“モノゴトリー協会”へ―――
――フェンリー商会の、ある敷地にて。
「ん?あれ?・・・ここはただの敷地?・・・俺は」
俺は敷地に裸で居たのだが通りすがりの女性に通報された。
勿論、精器露出狂容疑としてグロリア・ポリスへ連行され事情徴収もされた。
その14日後、ミイネン博士によって保護され無事釈放されたのだった。
“ああ、来てよかった”・・・のかな?・・・うぅ。




