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ー7ー闇の世界線「モノゴトリー」  作者: 醒疹御六時
第二章 空中大陸グロリアランドへ
49/83

49、究極と仮説の融合

子供って賢いんですね。


・・・嘘、だろう?


 これはモノゴトリーでなくワシの研究ラボの初期段階でのテストに過ぎない。今はもっと上昇しているだろうが、大して変わらないというのが現状だ。こんな事をしていても研究課題は山積みなのだ。とても究極生命体という言葉が彼女を苦しめている様にも見取れる。

――ミイネン博士ぇー、ハイッハーイ!

「・・・何かねぇ?」

「ライズは初期段階で薬物使用により脳領域35%正常。脳のダメージも鑑み神経経路が遅延。本を読ませること僅か14日で言語取得39%、平衡干渉における身体感覚56%を計測。課題を設ける」

「はぅ・・・でもねぇ~今はその脳領域は302%、言語取得は219%、身体感覚は901%と異常なデーター・・・なぁ、彼はもはや倍以上であるよ?」

「じゃあ!見てくださいよコレをッ―“カタカタカタカタ・・・ダンッ!”コレですよ?」

「“チラッ―”いいだろう、ん?・・・んん~~っ??なになに・・・」


 デイジーはそのデーターをワシに見せ、ニヤついている。どうしてもあの子を究極生命体にしたいようだ。だが単体では脳領域が5,039%、言語取得は8,905%、身体感覚が10万2,309%を越えなければ宇宙空間で姿勢制御すらできないというのに、彼女はモノゴトリー協会での計画を、助手でありながら全く理解していないというのか。

 その息子ビードの数値は順に121%で脳領域の対象すら成らず、59%では現状の様に言葉が回らないままだし、21%では・・・頭が痛い。例えば父親の遺伝子さえ手に入れればいいのだ。それで終えられる。


「ハッキリ言う。王の素質もないし、素体になるための上昇率も見込めない」

「でもね、ライズはビードの認識速度・身体反応率・脳内記憶レベルいずれもドン引きでしたよ?あのゲームですよ、私と博士が研究テーマに出したあのゲーム」

「・・・覚えていません。なぁ頼む、ワシは別の実験をしたいのだよ?なぁ、許してくれないかね?」

「―ミイネン博士、何言ってるんです?みて下さいよ。その眼でその頭脳で―」


 段々、ストレス感じてきた。ジワジワとワシの感覚がズレてしまう。それに何だかむず痒くて研究どころでなくなってきていた。彼女は究極生命体の意味を理解しているのだろうか。

 単に人工生命体が不完全な状態で認識しあい行動を起こしてしまうから、その上位生命体を造ろうとすると、いち研究者として“究極”という課題を設けその言葉を用いなければならないだろう?たとえばAがCへ向かうのにBで留まりAへ還ると頭が歪むのだ。


――では聞くが、

「ある症例の件だよ。モノゴトリー現象と呼ばれ僅か一ヶ月間で言語取得99%、身体感覚65%以上を計測できれば医師から生活可能というデーターが存在するのだが、デイジー君はこの症例をどのように捉えているのだ?(よぅし、これで研究に移れる筈だ・・・)」

――お答えします!

「はい、“サッ―”この症例だとサンシャイン現象の視点であれば僅か2日間で言語取得率355%、身体感覚計測では340%、つまりこの研究所に光体を介したスポーツジムを作れば更なる上昇率を示せるわけですね~。ところで・・・博士ぇ~ビードはどうなんです?」

「・・・将来を見越そうか?・・・言語機能が正しく在れば・・・だけどぉ」


 『究極と呼ばれる由縁』。それは人工生命体が人類の記憶と意識を頼りにデーターを変換することもでき、宇宙外生命体に対し1万4,521キロメートルの高電圧回線を送れそうにないからそれで究極的な人工生命体を作ればもっと量産タイプを評価できるのではないかという“目録”にしただけの卓上議論から生れた“考案”なのだ。これ等を本当に理解した上で究極生命体と省略してしまうと何かと語弊が生まれるからデイジーにはお勧めしたくはないのだ。


「“№850は初日から僅か21日で言語取得100%、身体感覚95%を達成。究極的速度だ”とか記録されていましたよ?対してビードはこの562倍をたたき出してるんですよ?」

「・・・ねぇ、親馬鹿なの?研究ばかりでボケちゃった?デイジーくん、君は老けて居るけど、まだ若いんだし無理してるなら・・・長期休暇で優遇してあげてもいいんだよ・・・?それとも無償買物カードを発行させようか?大丈夫?困ってる?言ってね?」

――では

「私のこだわり、ぶれ、身体変化、欲しい事、困りごとに言いたい事をあなたに聞かせてあげますよ」


 デイジー自身の拘りとは人工的手段を用いて生命を飛躍させずに自らの意志を保ちつつも有望を持つこともでき、食べたいときには周囲を頼り自らを確立させられる“究極”さだという。

 そこで他者の意見に振り回されて次第に老化すると表現性が損なわれる。それを単純に融合などで納めるには無理がありライト・オブ・ホールの恩恵すら受けられないと。


「・・・ミイネン博士、究極生命体と言う名前はどこかの馬鹿が取り付けたんでしょう?卓上の議論とか?では、実施データー作ってきましょうか?駄目ですか?目録だって作りますよ?ですがこれ等は“偽造工程”での話となりますが。実際には移民すらできていないでしょうに」―いや、待ってくれ。そこまで言われてもワシが決めた訳じゃないんだ―

「ほんっとうにつまらないです。誰の入れ知恵なんですか?まるで被検体のようでモノゴトリーの規則を作った総主のような態度ね・・・まったく博士らしくもありません・・・」


 もう、後がない。壁際に追い込まれる“弱肉”そのものだ。ワシはこんなにもデイジーに尽くす必要があったのかとも悩んだ。だがその悩みも次の日になるとナンバーネームの彼女の記憶から消えていた。薬じゃない“何らかの方法”だ。

 例えば魔法とか、アムヴァークの鉱石からエネルギーを抽出できたとか、父親がたとえば王だった魂で変容を迎えたとか、まさにそれこそ究極なのではないかと覚えてしまうのだ。

 彼女から“説明不足”と言われるだろうが、そろそろ時間来たしデイジーに帰ってもらいたいのだが・・・・ダメかな?


“ダン、カチカチカチ・・・タタタタン、ピ―・・・ピシュン、ピ、ポ、パ、ヴィ―ン”

「でね、博士ぇコレを見てください!きっとビードは究極を上回りますよォ!!」

「ねぇ、博士えぇ~~コレなんかどうです?超級の能力値を示し出しています!」

「ほぉコレ、何と素晴らしいの!博士の理論に沿ったスコアが出ましたよッ?」

「それからですねぇ、ココにある数式と図面を重ねるとォ、コレが・・・」

「それで究極の回答は?博士の語学論文だと・・・で・・・」

「博士ぇ、只今ライズの実験をしましたよ?ビードは、」

「ねぇ、末尾のデーター流石です、感動しま・・・」

「そ・・もコ―は、ふ―ふむ、な―ほど!」

「・・・で、―すねぇ、38Chb―*2」

「・・・が、・・・で―3gb>19」

「―の、09mU-が、」

「・・・せ?」


ねぇ!ミイネン博士ぇえッ~~~~!!

コレ、これですよォォォ――

見て下さいよォぉ~~!

ねぇッ!!

究・極・と・は・?コ・レ・で・合・っ・て・い・ま・す・よ・ね・?

―ひッ!ひぃ~~・・・

――も・・・もう、嫌だ・・・ッ

――――もう、“究極”なんて言葉、

―――――ヤぁだぁアアァ――アアッ!

―――まったくだ。彼女から煮え油を飲まされている様だ―――

――その一方で、

 俺とビードはデイジーから用立てられグロリアシティの“植物育成設備”まで見学することとなった。その設備で働いているオーナーからは『体験もどうぞ』と許可が下りている。


「ほら、ビードも植物の植え付けをやってごらん?」

“グッ、サッサッ、スウゥ―、ザッ、ザッ”

「へぇ、ビードは覚えるのが速いなァ。道具と環境とを与え分けているのかぁ」


 そこで育てられている植物はライト・オブ・ホールの中の超強力な線状エネルギーで分解された遺伝子要素を含む物体の欠片だ。それをエタノウェー・ポットと同様の液体にて培養させて光源を使用して34時間置いておき、遺伝子から根を張らせるというもの。


「これが・・・植物、なんだ・・・?」

「ええ、これもねある意味“究極”の形なんですよ。そちらのお子さんもよく分かってらっしゃるようですね?」

「あ!ほんとうだ・・・何で根を揉むんですか?」


 根を揉むとその刺激でこの茎が刺激され伸びてゆく。すると葉が広がり分厚く成長するという。葉が育つということはそこから光と栄養素が溶けあい“融合”を果たすという。その葉と茎の間からまた茎が成長を始めるとやがて実が付くという。


「それでね、光体が葉の表面へ充てられるとこのように、ほら?」


 ビードと一緒に人工動物の糞で出来る土を見せてくれた。それは光体を掛け合わせて柔らかくも温められ育てられてゆくのだそうだ。そこには水は存在しないのが特徴である。

 水はライト・オブ・ホールから流れてくる、虫の遺伝子から産まれることをオーナーは話していた。成虫になる前の段階は粘液が土を浸していること、そもそも土は粘りのある液体の方が定着しやすいこと。

オーナー曰く「それは“再生を示す”のですよ」と表現する。

(光体と遺伝子さえ在れば、根も腐らずそのまま枝から葉を、実りを象ると?)

するとビードが突然反応を示してくるのだった。

―――あれ?例えば水が分解されると電気を産む筈だよ。

「だから電解物質って呼ばれるんだね」

―――え、ビード・・・

「そんな筈はない。でも誰だろう、何か話したのかな?ねぇ、オーナーさん?」

「いえ、私は一言も“電解物質”なんて話していませんよ?」

―――ボクだよ。それにしても、

「ボクの事誰か噂しているのかな?それにお母さん今日も残業なんじゃないの?」

「ビード、君は言葉が話せていたんだね?それだと俺のほうが父親らしい・・・か」

「“コソコソ”ライズ、ボクは子供の素体を与えられた大人の都合で造られた人工物だよ」


 ビードが俺の耳へソッと話し出す。つまり俺が眼にしている植物と土は単なる仮説で造られた卓上の計画だったという。でもデイジーのように光をあまり与え過ぎると栄養も追いつけなくなる事が起きるから実の成る時期が延びるという。

 それなら与え続けるよりも葉へ光と栄養素が集まるように更なる甘さへと辿り着かせられればよいのだと。そうなるとその甘さを求められる育成時期と光体角度を16度だけ見直し再変換すればいいのだ、と彼は解きほぐしてみせた。これは“水が泥になる関係と執着心が見出した答え”とも言っていた。

「え・・・そ、そんな実験、私は―、したことないよ・・・」


 君は本当に子供なのかと植物育成設備のオーナーは驚き聞き入っていた様だ。これは子供の学習テストの解答案さえも説けない科学の関係だと話していた。


「えへ!子供なんて関係ないよ。余りにも大人の方が喋る側だからそれを再変換しただけなんだよ。喋ると喉が詰まるでしょう?それはね、唾液線を刺激するためだよ?」

「えへ・・・か。ねぇ君はビードじゃなかったの?」

「秘密だよ。あなたは記憶上昇率が底抜けているんだ。自ずと危険視されるでしょう」


 彼なりの忠告、かつてこのように忠告する者も居たと記憶が疼いている。頼まれ事には難なく答えを与える癖に、与えられた事だとそこへ落書きするのだ。その落書きはモノに例えて設計図を表し、そこへ自らの式で解くという手法。それは一体何者だったのだろう。

 ナスワイ医師あるいはミイネン博士か、それともデイジーはどうだろう。寿司が好きだった人物像がそこで浮かぶ。知れば知るほど消えてしまい覚えられなくなるあの人物だ。


「では、俺は何者から危険視されているんだ?」

「直接その本人と対面するだろうから今は只、黙って自分の事だけに注力していれば?」


 彼は言う。今の俺はなんら訓練すら与えられずに2箇所どころか3箇所で働いていると。そこで給与を使い分け必ず自分だけに留まらない行為をしているのだと。

 その様はまるで王様で、統治する形を象っているため人の意見にも振り回されやすくデイジーなどの頭脳が必要になるのだと。その振り回す人物は自ずとやってくるし、どこへ向かおうと俺に引き寄せられるので、現にビード自身が俺自体を慕うようにも象れてしまうのだ・・・と。


えっと・・・すみません。

――――俺はここで何をしているんでしたっけ?

「アパートで園芸したいと仰っていましたね」

「はぁ・・・ご教示有難うございました!」


何か困った事になったなァ・・・。

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