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ー7ー闇の世界線「モノゴトリー」  作者: 醒疹御六時
第二章 空中大陸グロリアランドへ
48/83

48、究極と呼ばれる由縁

教育するのって大変なんだろうね、と思いました。

――フロンティ・グロリア『研究ラボ』にて


「結論から言おう。ビード君の能力は王とは言えん」


No39デイジーはこの研究ラボの助手でビードの母親である。そして最古の遺伝子を持つ

。だからワシは彼女を“最古の妻”と予測したのであって、優秀な人材だとも思っている。


「私に任せたいんじゃなかったんですか?ライズのデーターも欲しいのでは!?」


 そんな研究助手である彼女が各研究所のデーターをチェックし、このワシ、研究ラボ責任者ミイネンでさえ、“究極の生命体の素材”を見つけたと言われたら、断れなくなる。彼が素材になると言い切られると、ワシは興味を示す。だが彼にはナンバーネームがない。

 つまりモノゴトリー協会の規則上、試験適用が不可能だ。しかも、それが『王の器』に相当するかどうかを調べてほしいという要請があると、彼女が彼の母親であることを勘案し、私はまずビードを遺伝的に調査してみたくなるのだった。だがこれはテストなのだ。


「博士、そう言わずに調べてください。きっとお役に立てると思います!」

「では、今回はビード君を連れてきていないから、資料だけ拝借するよ“パラッ”」


 個人的な興味が湧き、ビードを精査していたが、この資料にはいくつか疑問が残る。

 それはなにゆえこの子供がまともに話せずに居られるのか、なぜモノゴトリー協会近くの郊外で生まれたのか、父が誰なのかも知らずに育ったのだろうか、デイジーは教えてくれない。

 それもまるで自ら人工的に受精させ産み落としたかのような素振りだった。助手とはいえど許されない行為だ。だが、それでも諦めないのも彼女の良点だ。

 研究所のデーターには他の被験者の比較対象として登録されていたなどと彼女は言うが下手をすればグロリア・ポリスへ連行されることだろう。だが彼女の執着はとてつもなくこびりつく。道理など通す訳がない。だが分からん。例えば・・・


「何も言わずにライズのデーターで確認してほしいので、どうかお願いします!」


 その彼女の集計データーを参照に新たなデーターをたたき出しても一切変わらなかった。なぜならビードは生年月日、名前、生年月日、年齢、家族関係、所持品の有無などを聞かれても答えられないからだ。 

 研究者としての経験では、参考書とライト・オブ・ホールから落ちた正体不明の細胞を他の被験者と比較するしかない。それは不完全な姿だった。


「それで、博士はビードとその細胞、被験者と比較してどの様にお考えですか?」


 このような混乱を満たすことも出来ず、かといって本当の意味でビードについて隠せず、ナスワイに一体何と協力を求められるのか、どうすればこの素体となるとされる言語知能を他のナンバーネームの様に改善できるのかと尋ねるのだが・・・


「既に№39とは比較対象にすら成らなかった。

こちらの観測機では測れないんだよ」

「じゃあ、ワシは№39のテスト問題を解くばかりではないか~

・・・聞いてもくれんのに、なぁ?」

「そうだなぁ・・・ブツブツ・・・

あ!いかん、新たなナンバーネームを君に回さなくては!

・・・なぁ、特に用がないなら私はこの通信を切るよ?

トーティング・チップは仕込んでいるからね~」

“ピッ、ツー、ツー・・・ガタッ―キュー、キュル・・・ギシ”

(はぁ、だめなのか)


 椅子はよい。鉄特有の支柱と防重が伴い皮さえ被せて居れば人を支えられるのだから。

 しかし肝心なのは支えではなく概念を壊せるような証言を得たい。だが、彼ナスワイの場合、脳内神経細胞のほうを疑う。また身体感覚のバランスをとるのに時間が掛からない事からワシの管轄内でデーター採取の出来ることが徐々に限られていく。

 彼女のデーターを再変換すると記憶力なんかは超級に高い筈なのだが・・・・?


「じゃあ、あの子は特別、身体記憶能力とか意識レベルは弱いとか?それなら、このデーターなんかどうでしょう?“ペラッ”・・・例えば№L509の場合は光体反応レベルが20でした。単純計算ですがこの子の場合、光体反応レベルが50を超えています!ね、博士、彼は王でしょう?素直に認めましょうよぉ~」


 デイジー、君の目的とは何なのか。例えば生活支援をアテにしているとか、子育て支援として助手の仕事をリモートワークへ変更してほしいとか、給与上昇を求めているとか、楽と金しか思い浮かばない。ビードを外へ出してあげたいと親心を以って言ってほしい。


「既にリモートワークはしていますよ。モノゴトリー協会の方だけですけど。外?いえライズと私と3人で出かけていましたよ?あの子はグロリアシティやフォレスト・グロリアなど散策するし人見知りはしない。彼は父親代わり、私は母親でビードは子供、成立するでしょう?ライズは逆だけど何かと“融合”したんでしょうか?時々独り言を示しました」


 融合ねぇ。例えばライズだが、ナスワイ率いる医療班、研究班によるデーターだと、当初毎月5万ルドの資金援助が支給されるだけで彼は清掃、料理、買物、洗濯は1週間でおおよそ覚えられていた。その反面で、工事区域での挨拶、合図、資材名称を覚えられるには時間が掛かっていた。

 その事から王とは遠く及ばないデーターしか拾えなかった。だが今や別の意味で王としての力に目覚めようとしているではないか。ビードにはそれがない。

 それは大人故の事情で会話が弾み自ら調べ目的地を設定し歩いて働いていたからこそ時には悩み時には自らと闘うのだ・・・それが検討というもの。分かるのか?デイジーよ。


「だけどビードは生後3ヶ月でパズルにピアノ、計算などができ、図表で言葉を示すことも出来ましたよ?確かに周囲との言論行為には気遣いますが自分の意志で道を示すんです。あなたの融合の視点は科学的・生体学的に生命の論理に反するのかも知れません。ですが博士、本題です。ほんとうにビードは王の器じゃないんですよね?」

――分からないのか?

「別の意味で№850ライズは音痴でね計算すら得意ではないのだ。図表通りできるのは合図あればこそであって、言葉も相当練習したそうだよ。君の言うそれらは覇王だろう?」

「覇おぅ・・・?それ、禁句・偏見ですよ。それは研究ではありません。つまらない」


 覇王とは独占的な思想と無理難題を克服させる道筋を立てる暗黙の了解が示される。だが、王は統治が全てなのだ。そこに光も闇も正義も悪にも傾くのが王というモノなのだ。

 それを二つかけ合わせられるならデイジーのこの行為とビードの能力は飛躍するだろう。だが使い分けることが出来るならデイジーの能率とビードの判断は時が解決するだろう。


「私のビードは子供じゃないんです。無理ならいいですよ、この嘘吐き博士!」

「うっ―“カタッ”・・・つ、次・・・いく、よ?“ペラ―”」


 次に身体記憶能力についてリカバリースタッフによる支援プログラム報告書をデーター解析し、僅か7日間で21%もの上昇値を示しているライズだが認知記憶も問題ない。

 だが、ビードの場合は研究班によるプログラム報告書でしかデーター解析できず、7日間で1%の上昇値で認知記憶に問題あると出ていた。問題は記憶力の高さ・・・?


「確かにライズは優秀です。でもビードは1歳から34%の上昇値を示したんです!」

「それでは一つ提案だが、禁忌だぞ?」

「禁忌。それは二つの人工生命体の方を融合させるとか?」

「ご名答。魂と肉体の質を求めると魂と意識に相乗効果が25倍に膨れ上がる」

「では、例えばですよ?個体と母体が必要だとか、素体と人工化が必要です?」

「・・・分かるねぇ、デイジー君、昇給だけはしてあげようかな・・・」


 ある被検体がかつて行った被検体の魂・意識・肉体の一部と人工生命体のプロトタイプの肉体・臓腑をかけ合わせれば完成形ライト・オブ・ホールの2/3+20%の上昇率が見込めた例がある。だが、それは遺伝子的に波があり、肉体同士が分離した例でもある。

 実用化には程遠いモノだ。例えばデイジーが王の魂を持ったとすればビードの肉体にライト・オブ・ホールに近い500%のエネルギー出力が見込めるだろう。あくまで計測上である。


「では博士、ライズは挨拶、合図、反応、総評価はビードがどの位で彼のベースになりそうでしょう?あくまで王と民の差的なことでいいので」

「彼の場合、挨拶は201%早くでき合図に195%反応できる。総評価199%と計測した」

「ビードの場合、現状総評価400%を示していました。あくまで知能指数だけですが。あ!ほら、博士ぇ見てください?ライズの記憶力が298quクアに対しビードは560quですよ?つまりぃ、身体機能の成長に従い11歳が25歳となれば21万1,790quを示すんですよ!つまり、最古の時代に土器で食事をしたならビードは土器に光体を介すことも出来て、鉱石だけで陸地を創ることも出来るという、素晴らしいデーターとなります!」


「・・・嘘だろう?」


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