コンタクト―魂よ蘇れ―
――研究ラボ“リカネイション実験室”
俺はこの小さな空間へ運ばれたのだな。
なんと空虚で儚く叶わぬ文明よ。
このような場所で我が魂の媒体を作るというのか。
さて、魂の揺り籠クリド・オブ・ソールというのはどこへ置いてあるのだ。
「到着したね。さて、これが魂の揺り籠であるクリド・オブ・ソール。別名、虹色ブラックボックスというものだ!」
楕円形で作られしその個体は、今の俺の体が収まるには大き過ぎる。
窓の内側から見えるその光は、ライト・オブ・ホールよりも強力な虹色の光を放っているのだな。なるほど、鉱脈を掘り当てる様に文明が発展していったのだな。
その個体の辺りには複数の線が繋がれているのか。
虹色の鉱石よりも足り得ぬ力に過ぎぬが人間よ、果たして如何なる文明を遂げてきたのか楽しみだ。僅かな時間だ。俺を退屈させないでくれ、人間達よ!
「デイジー君はそこにあるミリュナー・ユニットを起動してくれ。そこの下にシンパスコードが在るだろう?そいつを右のコンピューター・ソールへ入力してくれ」
「ミイネン博士、入力終えました!」
「次に、そこの小さな君ィデイジー君の隣にあるコンピューターの動力源からクリド・オブ・ソールのスイッチを起動できるかな?」
「このパイプみたいなモノでしょうか?これを魂の揺り籠へ移すのですね?」
「ほう、分かるのか!君は恐らく希望をも灯す天才なのだな?よし、じゃァ次にそこの君、ライズ君をその姿のままクリド・オブ・ソールへ運んでくれないか?」
「はい、ライズ君を運んだよォ。それでミイネン博士さん、この中のコイルに彼を接続して窓のスイッチ押すんでしょう?」
「ハハ、君は行動が速いのだなァ!その“コイル”を彼の頭上へ差し込んでくれ。極細だから傷は付かないよ。それからスイッチ触る時には必ずワシへ合図をしてくれよォ」
ふむ。
微弱であるが虹色の鉱石に似たエネルギーを感じる。
俺の頭上へと長細くもしなるコイルというモノが差し込まれたのだな。
ミランナから渡された動力源も流れてくるぞ。
人間よ愉快なものだな・・・よくもこのような文明を作ってきたものだ。
「博士ぇ、スイッチ押してもいいんですね?」
「構わん、デイジー君スイッチを押してくれぇ」
“ビビビ・・・グゥゥン――ッ!バチバチ・・・パチンッ!”
俺の頭上からビッグバンを彷彿させる程のエネルギーが吸収されてゆくぞ。
そしてダーク・オブ・ホールにも似た圧縮体の数々が俺とクリド・オブ・ソールの間にへと入り込んでゆくのだな。
小さくも膨張するその力は我が妻にも在った力だ。
そのエネルギーが我が前に世界線で得た記憶を呼び覚ますのだ。
人間よ、“マーズ神の力”はお前達にも宿っていたのだな。
「デイジー君、左のコンピュータへBno>FoguR22―5ud<Dep・・・と打込んでくれ」
“カタカタカタカタカタカタ・・・・”
「Bno>FoguR22―5ud<Dep・・・博士、打込みました!」
「じゃあ博士、私はスイッチの合図でいいのでしょう?」
「そうダリング君、窓のスイッチの1番目と3番目、それから赤のボタンを同時に押してくれ」
―“ピッ・ポッ・パッ”―
“グゥゥゥ―――ン!キュルルイイイイィィ――――ッン!”
「なるほど!いい稼働だァ!急ごしらえだったが、何とかなる!次、ミランナァ―ッ!」
「はァ――い!動力横、配線を“魂の揺り籠”の後ろ!接続をォ――!?」
「そう―ッ!次にデイジー!プロトディフェンス・コマンド“結着”Kop≪ooPxej4098*qllc・・・kobbcv*PoronTRF>1>309#ddKYOL+と入力!そしてダリングはライズの表情がどの様に動くのか――、そこの用紙へ記録を頼むよォ――ッ!!」
俺の体が光を放ちだす。そして、この僅かな時間は終わるのだな。
同時に青くも清々しい空間へ向かっているようにも感じられているぞ。
なるほど、この様にして体から光が発せられるのか。遥かに力強くしかも快適だ。
これは純粋な光の波動と似ている。それに妻の波動にも似た力強さが実に心地よい。
あの星の地平線の眩き閃光、それは青く澄んだ向こうの星まで俺の意識を映していく様が見えるようだ――!
ああァ――、惑星“フォライズ”よ―――ォオッ!
“キュウルルルルルルルルッルゥゥウ――――ッキュイン、キュイ―ンッ!”
「よし、いい音だな。この生命の鼓動がワシにも感じられたぞ・・・!ライズ君、今すぐ助けてやるぞ。そして我等の過ちを君に伝えなければな・・・」
――なるほど、彼は協会側の人間じゃなかったのだね。さあて、ライズ君が起きなければ彼の居場所は無くなるわけだが・・・、それも仕方のない事だね。どのみち彼を実りの世界線に連れていく以外方法が見つからないからね。
――そういう事か・・・、ライズさんが起きなければ誰も止められないこの世界線の宙間移動が始まる。ルシュファル様と共に私達でこの闇を止める事になるのよね。いずれにしても彼の覚醒は出来るのだけど。
「ライズ・・・ごめんね。“カチャカチャカチャ・・・”Nbv++BopRT990―jg²KMipfoog―Cdd<<CopWzxx-073Gollison“カチャカチャカチャ・・・”kder―304GG#起きたらもう一度、“カチャカチャカチャ・・・”お願い!起きて・・・ッ」
我が体の内側、意識体・・・こんなにも浅く・・・
小さな生命を・・・守るのか・・・?
うん?
それにここは・・・
我が星から遠く覗くインティ・シャ・イムの光・・・
土の民の古来の住処。
ザザ――ン・・・ザザ――ァァ・・―ァァ―・・・―ン――
風と共に海波がゆっくりと俺の足へ近付く。一人、また一人、俺に続いてここへやってくる。見上げると翼を広げる個体が声色を発するのだ。なんとも美しきも強い波動を感じるものなのか。一人一人と同じ方向を見上げているのか。そこには王も力も文明も争いも何もない。そう、お前達も俺と同じ民なのだな。そして俺の傍へ立つお前はどうして悲しいのだ。そうか、俺と同じく居場所を探していたのだな。お前は何というのだ。
――“ライズ”と言われてここへ立っているんだよ。
誰かへそう言われてきたのだな。俺もそうだ。像の民として産まれ民と共に文明を築き上げ、家族を持ちそして息子を失った。砂と化したあの星へフォライズという名を付けた・・・。名前はかつて光の力を持つ息子から取ったのだ。俺は誓った。広まる文明の礎として神の信託を神々の末裔である民へ託さんことを。目前にある地平線、どこを歩いても倒れていても太陽も月も数多の者を映してくれるのだからと・・・。
――じゃあ、君は俺と同じように生きていたんだね。
そうだ。俺の居所をお前に移したことで新しい空気を味わえた。だがそれももう、時間と共に無くなりつつあるよ・・・かつて民に崇められし王であったのにだ。そしてライズよ、この意識体に眠る純度の高き生命よ、約束を果たすために舞い降りし神の意志よ、俺と共に約束を果たす時が来たのだな・・・。
――ああ、今も眠るこの力はまだ俺には荷が重くてね。
そうか・・・、名残惜しいな。
僅かな時間、様々な感情が飛び交い俺へ向けられていた。
そしてこの力には、お前の魂の欠片が存在していないのだな。
あまりにも比較に成らずなのに楽しいものだったよ。
礼を言う。
――へぇ、王なのに楽しい気持ちを持っていたなんて羨ましい。
ライズよ、お前には記憶が無かったと言っていたな。その記憶を僅かずつ戻せるようにしておこう。他の力の及ばぬうちに、『有意義』な時間を戻せるようにだ。
「む?そろそろデイジーの打ったコードが彼の頭脳から全ての体の隅々、意識体を組み込んだようだぞ?流石だ、彼への贖罪が伝わるなァ。どうだねぇダリングにミランナァ!」
「私は記録したよ博士。こんな感じだが?」
「私は動力エネルギーの観測データーを全て読み込んでおきましたよォォ~!」
――もう、お別れだね。
俺は君の代わりに生きる事にするよ。
いつか――約束を果たすために―――!
「お願い!」
“カチカチカチ・・・”
「FOEENM―BIGUNIG*RIZ*2=EIT>ONッ!ライズ戻って!!」
それならば蘇るがよい・・・、蘇らせ崇めるのだ・・・人間よ、この者を!
放て!この“ライズ”という記憶を―――ッ!
―――――王よ、また会おう―――