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ー7ー闇の世界線「モノゴトリー」  作者: 醒疹御六時
第二章 空中大陸グロリアランドへ
31/82

大いなる意志との対話


「博士・・・彼等は本当に被検体にする必要があったのでしょうか?」


まるで生きてそのまま実験されたかの様な気がしたが

・・・研究に向かうプロセスは?


「いや、正確には必要ない」


―――ミイネン博士は続けてこのように言う。

モノゴトリーのやり方はあくまでライト・オブ・ホールの

座標からやってきていて、どこから来たのか説明できる仮説を

立てるプロセスが作られている。

それは彼等の体に付着していた光の結晶をいかに

ライト・オブ・ホールへ定義付けるのかというものだった。


「まず実験でのやり方だ。君も受けてきただろうが、」


度重なる薬での拷問、尋問、記憶の書き換え、更には記憶を消され

何事も無かったかのように生活させられている。

それは意識体に眠る潜在的意識の覚醒が目的だ。

だからリハビリテーションやカウンセリングと柔らかな表現を使うが、

実際その実験のあと生活するには無理がある。

だから如何に記憶を保たせるかが課題となる。


「それが体の平衡感覚というものだ」――と。


なるほど、

それで現場では遊びと手加減をしながら

ゆっくり脳から指先まで神経系を傷つけずに

体の記憶を保たせていたのか。

それで医療班は実験に伴う痛みを薬で軽減していると?


「 それが

サンシャイン現象と呼ばれる被検体の

実験に至るプロセスなんですね? 」


「正確には“モノゴトリー現象”と呼ばれている」


彼は言う。それから次のプロセスだと。

支給する資源がとても限られている事は2年3ヶ月経った今なら

覚えているだろうか、と。2ヵ月で最低6万から10万ルド程度とされている。


「年に72万から120万ルドの収入―――、差があるよな?」


なるほど、確かに日用品も割安だった。

それも支給された資源に対して被検体が

どの程度動けているかを調べるプロセスを

表すためなのだ、そうだ。


現在、協会モノゴトリーによって衣食住を与えられている。

それに生活自体もさほど苦労はしないが、それにしても実感が沸かない。

動けている実感、味わいが薄かったなら、もっと俺に必要なものは?

ナスワイ医師のいうように自分で見つけなければ分からないのだろう。


「一応、ナスワイ先生から言われていたように

今日は仕事を探しまして、その合格待ちです。

つまり俺にも探せると何か起きるプロセスがあると

いうのでしょうか?」


「まぁ、そこはモノゴトリー現象とはグレーゾーンだな」


そして問題の記憶。それから実験室とは別に研究設備のある部屋があって、彼等もここへ来る前にその光が体に付着していたモノだそうで、モノゴトリーの研究班はそれを見つけ次第採取する事が目的だったという。そのためには彼等の意識でない前提を造る必要があった。


「それが医療班でいう“死亡”や“植物人間”といった理由や説明だ」


モノゴトリーは現在微弱にもライト・オブ・ホールを作り、別の世界線で新たな宗派を造る予定で居る。だから彼等の光の周囲を中心に大幅な検体採取で執り行い、それを人工生命体へ移植する必要があった。


「それだと俺が被検体になるには?」


その光が付着していないと成れないし、そもそも体から洗い落とされている。しかも俺は死亡にも植物人間にもなっていないのだから検体精査も出来なくなる。これじゃモノゴトリーの工事現場へ帰れず協会の外にも出る事も出来ないのではないか?と心配した。俺には帰るところがないから。


「あの、ミイネン博士は俺に一体何を?」


俺の体の検体精査を紹介された。

だけどその体には、何にも付着していなかった。

では、俺は一体ここで何を研究されるのだろうか、

尋ねることにした。


「分からんかな?君を“ここ”のライト・オブ・ホールへ近付けるんだよ」

「え?どういう意味なんです?」

「そこで光を付着させて検体を採取する。もし意識に反応すれば記憶があり、反応しなければ記憶がない。つまりねぇ、ナスワイ医師が欲しいのは人工生命体の素材なのだよ?」

「・・・俺が・・・そんな事に?」


12分ほど止まった。


(素材だと・・・?俺が、俺達が?)

俺が素材になるという事に関して気持ちの良くない印象を受けたからだ。ミイネン博士は“これくらい普通だ”と言わんばかりの勢いで説明してくるが、そんな大穴あけてしまったら俺、動けないじゃないかという恐怖感まで刺さるような印象をも与えられた。


(“人工生命体”はあの世界線でも研究されていた・・・?ん?頭が・・・)


「ハハハ!やめときたまえ。無理に頭でこんがらせるモノではないよォ!」


彼は更に説明を続ける。

ただワシの言うままに精査すればいいだけの事だ、とか、

なに、風穴を開けるわけではない、とか、“光の欠片”を採取するまでの事だと。

俺の眼前に近付きつつそのように説明を繰返すのだ。楽しそうに。


「仮に発光したらその細胞を生体移植して人工生命体へ貢献するぞ?」

「発光するんですか?この俺が・・・?」


瞬間、俺の意識の奥底から青白く焼ける炎を感じている。

貢献とは生体移植に関するデーターで、モノゴトリー協会で採用された唯一の“永久”生命体への決定打とされている。彼はそのデーターはただの細胞採取だと言っているがライト・オブ・ホールから変容してきた光の破片とは“魂”の一部のことを示す。それは俺にとって、被検体にとってとてつもなく、かけがえのない大切な記憶にあたる。

「君は王の器たる資格を持つ。それはサンシャインによって導かれた器なのだ。あらゆる生命体、化学、そしてこの鉱石・・・それらを超越し、神の意志によって地平線を照らしてきた。『永久』と呼ぶ所以はそういう意味なのだ」

「それは俺の意識の奥底にあるものだとでも?王たる器が照らす?それが研究課程?俺は―――、眩き時代を・・・奴を?・・・変容させたというのでしょうか?」

“茶番はそれまでだ”という視線で彼は次の予定を立てていた。だが、俺の炎は彼の予定などよりも先に意識を突き抜ける様にメラメラと燃えている。とても懐かしい・・・。

「君自身が選んだのだ。その地平線の眩き光を見ているなら記憶などに留まる筈がないのだ。この先にある何かを追って取り戻すと―――ッ!」

「・・・留まる筈もない。この世界線で俺の記憶は“穴だらけ”だと医療班から聞いていたのです。しかし・・・、それがどうしたのだというのかっ?あの美しい地平線は俺を見捨てなかった・・・それは変容を遂げても―――変わらなかったのだ―――ッ!」

俺は感動に満ちたように部屋の天井を見つめ、両手を広げていた。

ミイネン博士は“なに、穴なら塞がるよ”と言って何かを打ち俺の炎を鎮めてしまった。

“ワシも神の力を見たのだ”と言って、今から一か月後に俺の検体採取が執り行われる手筈となった。


――俺を神の意志に導かれたとお前は言うが、

その意志には覚えがある・・・一体、何者だ?


―――ひとことで言うなら、オレは神の意志たる子孫―――

記憶などという小さな器に留まるだと?

そのような王など“民”は望んではおらんよ―――ッ


―――最古の世界線

ブレトルよ――、砂漠化した文明を見て

どのようにして復活させようかな―――?


―――ガヴリールか。

これは我が息子の力でなく俺と妻の力だ。

この星が復活するには多くの民とその指標が大事となる。

我が妻を媒体とし、神の信託を造る必要があろう。


では――、オレたち神々の末裔と文明を共にしてみてはどうだ――?

―――文明。星の中に眠る鉱石さえ光を放てば”虹色の鉱石”となり

変容を遂げよう!


光か――、穴を開けるという事ならば

あの星座に向かう地平線の鉱脈へ放つとよい―ッ!


―――俺の中に眠る虹色の鉱石は、

あの星“フォライズ”で融合を果たしたのだ。

大いなる意志によってなッ!



1ルド=1円

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