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ー7ー闇の世界線「モノゴトリー」  作者: 醒疹御六時
第一章 リハビリテーション
15/82

名前、それは記憶のピース「3」

――あんた、知っていたか――?

――え?何がですか・・・?

当初、これ等の心理操作はたいへん貴重な研究材料とも実験効果として認められていたという話だよ―――。


この日は現場工事がたったの3時間で終わったので、その時間に合わせた医療班によるカウンセリングと呼ばれた“実験テスト”がある事を現場スタッフから聞いた。そして俺が記憶の中に置いてきた“彼等”など今やどこにも居なかった。その代わり同様の悩みを持つ仲間と出逢い同じ生活を共にしてきた。それ自体が不幸やミスというものなのか俺にはまったく理解できなかった。

誰かと同じ場所で同じ食器を使うことにも、それほど不便や誤って食べていたことなど全くなかった。

モノゴトリー協会に拾われ、それでどうして証明できる材料すら持ち合わせていなかった俺に仕事や生活の場を与えてくれていた―――。

俺はそこへ違和感がある――。

だから――、評価に値することなど期待していなかったんだよ・・・。

あの時のように―――ッ!


――栄誉を称える!我が前へ跪けッ!

“ご苦労だった。君は立派に役目を果たしたのだ。よくぞ使命を果たしてくれたな”

“なるほど・・・これで晴れて計画が整ったのだな。まずは、お礼を言わせほしい”

“そうか、ならば――、私が君の願いを受け止めてあげよう。望みは何かね?”


―――そう、俺の望み。

その望みを一心に体の抵抗を感じ始めたときに瞼や網膜が熱を持つのを理解した。

とうとう俺は“絶対に間違っていない”という憤りが強まる。だがこの日も薬を注入されていた。薬が効いてしまうと表面的にそれが“憤り”として表れず内面的な“抵抗”と呼ぶ。

「不幸とかぁ~ミスというかぁ~、そういうことはぁ、どうでもいいぃ~。ちょっとぉ、ご飯の~味が薄いぃ~とかぁ、それもよく噛めていないぃ~とかぁ、そうだなぁ~意識が働かなくておいしく感じられていないぃ~こともぉ、俺は俺らしくぅ生きて居られているぅ~」

「抵抗値41%、軽微」

―――バチッ、バチチッ

“そう、あなたはあなたらしく前よりも評価されたのよ”

“そうよ、あなたは立派に役目を果たしていたじゃない?”

“僕はそんなキミを誇りに思っていたよ”


「それは俺に記憶が無くぅ~友と呼べる人がいないからぁ~だからぁ一人で食べる事よりぃもぉ~明日のことで一杯だぁ~~それ以外は分からないぃ~心だけはァ誰にも邪魔をぉ~させたりはしないぃ~ッ」

「抵抗値66%、安定」

―――ビビッビ、ビビッ―――バチッ

“だから、もう無理しないでいい”

“キミはもう、戻っていいんだ”

“私たちが味方だよ”


―――ピイイイイィ―――ッ

「アラーム、抵抗値78%、警告あり」

「そぉうぅぅ~~今後こそはぁ~クレーン車に慣れるためのぉ~レバーにも工夫が必要ぅ~~それもぉ~腕の筋の向き方がぁ~違っている感じがしていてもぉ~俺と仲間の魂はぁ~誰にもぉ・・・」


―――ビュウゥウウゥ――ッ

“追っ手が来るわ!急いで飛び込むの。この光と闇の束の中へ・・・!”

“さぁ、いくぞ皆で次の世界線へ・・・せぇの!”


―――ズズズズズゥゥウ――ンッ

「レバーが揺れるみたいなぁ~不幸が起きないようにぃ~俺はァ必ず前進していくぅ~~誰もォ俺達の心はぁ乱すことを許さない―――ィッ」


―――ジジジ、ジィイリリイイイ―――ッ

“あああああぁぁあ―――ッ狭間に、闇に、光に潰される―――ッ”

“もう少しだ、きっと助けてやるから絶対にィ離れるなッ!”

“我々は――ッ抜けて見せるッ!”


―――リリィイ――キィイイイイイイィィィ―――ンッパンッパンッ

「洗濯物だろうがぁ~なかなか畳めていないぃだとかァきっとぉ“記憶の一片”を少しずつ揃えて見せるぅ~それはァ絶対にッ俺のミスでも不幸でもォ~なんでもォないぃ~ッ」

「抵抗値152%、重大、注意よし」

―――シュンッ


「ここまでだ」

「了解、ここまで。リハビリテーション済ませ」

「リハビリテーション済ませ、よし。№850体温、血圧、脳幹ともに正常」

「№850ひとまず、お疲れ様です」

体に投与された各薬剤が次第に薄れてゆき、それから30分間眠り込む。

何かが起きていたのかさえ分からなかったが、俺の意識は次第に覚めていっている。

医療補助員の質問に対し色々と話していたと言う。

だが、その詳しい内容を尋ねても彼等医療班からは教えることはしなかった。

その理由を教えてくれずまた、記憶の手がかりをまた失ったのだ。


「君はまた失ったのかねぇ?今ここに居る記憶さえもォ?」

「・・・いえ、でも俺の気持ちはこう言います――」

「ショックなんだろ?言えよ遠慮なく―ッ」

「では、遠慮なく――」


――とてもショックだよ!



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